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65 歳の女性。頸部腫瘤を主訴に来院した。8 か月前から頸部腫瘤を自覚していたが、痛みがないためそのままにしていた。頸部腫瘤の大きさに変化はないが、家族が心配したため受診した。発熱、寝汗および体重減少はない。胸部と腹部に異常所見を認めない。両側頸部と両側鼠径部に径 2~3 cm で可動性良好な弾性硬のリンパ節を複数触知し、圧痛は認めない。血液所見:赤血球 415 万、Hb 12.5 g/dL、Ht 40%、白血球 5,600、血小板 28 万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、LD 200 U/L(基準 124~222)。免疫血清学所見:CRP 0.2 mg/dL、HTLV-1 抗体陰性。末梢血塗抹標本で異常細胞を認めない。骨髄生検で異常細胞を認めない。頸部~骨盤部造影 CT で両側頸部、両側鼠径部および腹部大動脈周囲に径 3 cm のリンパ節腫大を認める。右頸部リンパ節生検組織 H-E 染色標本(A)と CD20 免疫組織化学染色標本(B)を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
a  濾胞性リンパ腫
b  Burkitt リンパ腫
c  末梢性 T 細胞リンパ腫
d  成人 T 細胞白血病・リンパ腫
e  びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫

第118回医師国家試験

正解:a

解説

a. 濾胞性リンパ腫は、濾胞中心細胞由来の低悪性度B細胞リンパ腫である。比較的緩徐な経過をたどり、無症状で偶発的に発見されることが多い。リンパ節の病理組織像では、濾胞構造を形成する腫瘍細胞の増殖を認め、CD20陽性である。本症例の臨床像、検査所見、病理組織像は、濾胞性リンパ腫に合致する。
b. Burkittリンパ腫は、高悪性度B細胞リンパ腫であり、急速な経過をたどる。病理組織像では、starry sky appearanceを呈する。本症例の臨床像や病理組織像とは異なる。
c. 末梢性T細胞リンパ腫は、成熟T細胞由来のリンパ腫の総称である。T細胞マーカー陽性であり、CD20陰性である。本症例はCD20陽性であり、末梢性T細胞リンパ腫は否定的である。
d. 成人T細胞白血病・リンパ腫は、HTLV-1感染を背景として発症するT細胞腫瘍である。HTLV-1抗体が陽性であり、T細胞マーカー陽性、CD20陰性である。本症例はHTLV-1抗体陰性であり、成人T細胞白血病・リンパ腫は否定的である。
e. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、大型のB細胞のびまん性増殖を特徴とする高悪性度リンパ腫である。病理組織像では、大型異型リンパ球のびまん性増殖を認める。本症例の病理組織像とは異なる。

考察

本症例は、無症状で偶発的に発見された多発リンパ節腫大を呈する高齢女性である。リンパ節生検の病理組織像では、濾胞構造を形成するリンパ球の増殖を認め、CD20陽性である。これらの所見は、濾胞性リンパ腫に特徴的である。濾胞性リンパ腫は、濾胞中心細胞由来の低悪性度B細胞リンパ腫であり、緩徐な経過をたどることが多い。初発症状は無痛性リンパ節腫大であることが多く、本症例のように偶発的に発見されることも少なくない。診断には、リンパ節生検による病理組織学的検査が必須である。病期診断には、CT検査や骨髄検査などが行われる。治療は、病期や症状に応じて、経過観察、放射線療法、化学療法、抗CD20抗体療法などが選択される。限局期で無症状の場合は、経過観察が選択されることもある。進行期や有症状の場合は、化学療法と抗CD20抗体の併用療法が行われることが多い。予後は比較的良好であるが、進行が緩徐であるため、長期的な経過観察が必要である。再発や形質転換にも注意が必要である。本症例では、無症状の限局期濾胞性リンパ腫と考えられ、経過観察が選択肢の一つとなる。ただし、定期的な経過観察と再評価が必要であり、症状出現時や進行時には、適切な治療介入を検討する必要がある。

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