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ブラックコメディ小説のネタバレなし読書感想『ようこそ、自◯用品専門店へ』ジャン・トゥーレ
まず、発想が面白い。
人口6817万人(2023年度)のフランスでは、毎年9000人の自◯者が出ているそうだが、今作はそんなお困りごとにネガティヴな助けをする、10代続く自◯用品専門店のお話だ。
普通に考えたら、自◯幇助罪に問われる違法なことだが、それをフィクション世界でユーモラスに、家庭というアットホームな舞台でコメディタッチに描いている。
そして愛らしい。
家族のどのキャラクターも憎めないのだ。
わたしは本書を読むまえに、パトリス・ルコント監督のアニメ映画「スーサイド・ショップ」を先に観たが、こちらも愉快で面白いお話である。
なんでこんなにも重くて暗いテーマなのに、愉快で面白い作品が出来上がるのだろう……それも不思議だ。
「スーサイド・ショップ」は印象深かった(特にエンディングの自◯に興じる人たちのブラックユーモアなアニメーション)のでいつかもう一度、観てみたいと思う。
本のお話に戻ろう。
今作が重いテーマにも関わらず、見事なブラックコメディを成しているのは、ひとえに(自◯用品専門店の)底抜けに明るい次男坊のアランくんのおかげかもしれない。
ただ、彼はすべてにおいてネガティブな一家のなかで、珍獣のような扱いを受ける異色の存在でもある。
今作における救いであり、希望なのだが、彩り豊かな竜巻のように一家を取り巻く暗い死の冬を、明るい春一色に変えてしまう……星のような、太陽のような子なのだ。
自◯者の名前を関した、父ミシマ、長男フィンセント、長女マリリンに次男のアラン(例外は母のルークリース)たちの暗く重いテーマを底抜けに明るくしたドタバタ劇をどうぞごろうじろ。