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【拡大再生産研究②】「ボトルネックを解消できる奴は偉い」をどう作るか?【コンスタンティノープル】
前書き
自分の作りたい拡大再生産のコンセプトを言語化するためにプレイ済みのゲームから毎回1つ取り上げて整理していきます。
(ゲームの紹介が目的ではないためルールの紹介は省いていきます。)
前回はこちら
調べた限り、一番わかりやすいゲーム概要の説明はこちら。
コンスタンティノープルのコンセプト
前回取り上げた街コロを含め、多くのゲームは長所を選んで伸ばしていく事を是としている。範囲をデジタルゲームに広げ、RPG、SlayTheSpire系統やAutoChess系統のゲームを見ても基本的にその傾向は変わらない。
※SlayTheSpireの場合、「攻撃面だけだと危なっかしいので防御面も育てる」、AutoChessの場合「序盤は待ちを広く」程度はする。ただ、一度方向性が決まると器用貧乏にならぬように攻撃手段は限定していく感じになる。
全ての方向性を上げる行為は器用貧乏な弱いビルドとなる。
有名とは言い難い上に10年以上前のゲームであるコンスタンティノープルを取り上げたのは「短所を補う」、あるいは「状況に合わせた」拡大を要求してくる事。そしてそれが教科書的(よく言えば綺麗で標準的、悪く言えば個性が無い)からだ。
短所を補うゲームと長所を伸ばすゲーム
一旦、ここで短所を補うゲームと長所を伸ばすゲームの特徴をまとめる。この2つはほぼ正反対の性質を持つのでゲームの価値観や作る際に気を付ける事も異なる。(2つの折衷案のようなゲームやこの分類を適応しづらいゲームもある。)
「短所を補うゲーム」
■価値観
・ボトルネックを理解してそれを改善できる奴は偉い
・環境(ゲーム、対戦相手)を見て対応できる奴は偉い
■例
会社に例えるなら「営業は優秀で仕事を取ってこれるが、エンジニア不足で断らざるを得ない」といった問題点に直面する。(この場合、更に仕事を多く取れるよう強化しても何の意味もない。エンジニアの追加や1つの仕事で高い報酬を取れるようにすべき)
ゲームを面白くするには「毎ラウンドステータスを平均的にあげる」という単純な解を封じる必要がある。大抵は「環境の変化により最適なバランスが変わる」という手段を用いる(=環境への適応を問うことになる)
■良い所
・1ゲーム内の思考に多様性が出やすい。
・「戦略が被らなかった奴がそれだけで勝った」という事になりづらい。 (衝突が毎回同じ人間と起こらない)
■悪い所
・ぶん回る爽快感は無い。あるいは低い。
・ゲーム間の多様性が低い。
⇒全てあるいは多くの能力を上げるため、戦略レベルの多様性が低い。各ゲームが似通り、(「選ばなかった戦略を試したい」といったリプレイのきっかけになる感情が湧きづらい)
「長所を伸ばすゲーム」
■価値観
相乗効果を見つけられる奴は偉い。
ぶん回るのは気持ちいい
■良い所
・(別の戦略を選んだ時の)プレイ体験の幅を大きくしやすい。
=リプレイ性〇
・成長をわかりやすく感じ取れる。ぶん回る快感。
■悪い所
・一度戦略を選んだあとの選択が単調。毎回似たような選択をしがち
=1ゲーム内の選択に多様性が出にくい。
・相手や環境への対応が少ない。前者はソロプレイ感に、後者は(同じ戦略を選んだ時の)プレイ体験の幅の小ささに繋がりかねない。
・欲しいものがずっと同じのため、衝突がずっと同じ相手と起こる事になりかねない。「人と戦略が被らない事」が重要になりすぎる傾向にある
どう作られているか?
1.揮発性の資源や権利をうまく使う
資源が無限に保存し続けられる場合、「まぁ、後で使い方考えよう」という思考に陥り、ボトルネックを解消する動機が弱くなる。
コンスタンティノープルは前回紹介した街コロと違い、多くの資源が存在する。また、その多くが高い揮発性を持つ。
※揮発性
ラウンド終了時に消える。あるいはごく少数しか残せないという性質。
宝石の煌めき(=合計10個まで)のように多い場合はこれに含めない。
例)MTGのマナは揮発性。RPGのMPは非揮発性
揮発性の高い資源はゲームにおいて以下のような役割を持っている
・ボトルネックとなる(使えなければ生み出しても意味がない)
・思考をラウンドで区切り、過度に長期的な考えを要求しないようにする
以下で各資源や要素を一個ずつ見ていく。
お金(非揮発性)
資産となる資源。建物や商品の購入、役職(=そのターンのボーナス)の競りに必要。
揮発性の資源である商品をこれや勝利点に変換していく。
勝利点以外の非揮発性の資源として短期的な目標(次のラウンドでこの建物が欲しい)として機能している。
商品(揮発性)
勝ちに差のある5種類。貴重なものほど高い勝利点やお金に変換される。お金で建物(生産施設)を建てると次のラウンドから手に入れる事ができる。また、自分が生産できない商品に限り、購入する事ができる(事がある)
次ラウンドに持ち越せる数は5種合計で1つと極めて少ない。
例外として「5つまで持ち越せるようにできる」という効果の建物を建てこの点を改善するという手段も用意している。
契約書(やや揮発性)
メインとなる勝利点やお金を稼ぐ手段の一つ。
契約書、それに書かれている商品(乗客の場合はいらない)、船(正確には商品を置ける積載量)の3つが揃って初めて得点化できる。つまりこの3つのどれもがボトルネックになる可能性を秘めている。
得点効率はいいが、内容はランダムであり、自分に合っている物が来るとは限らない。(価値の低い商品を要求する報酬の低めの契約書ほど多く、価値の高い商品を要求するが報酬が大きい契約書ほど少ない。)
商品を生み出す生産施設が一定以上保有すると、毎ラウンド得られる契約書の数や持ち越せる量が増える。ある程度は次へ持ち越せるため、次のラウンドでのお題として毎ラウンド考えるべきことを変える役割にも多少役立っている。
商業施設(非揮発性 +揮発性の権利)
毎ターン1回まで「資源を支払いお金や勝利点を得る」事ができる。
効率は悪いが自分の生産に合わせたものを用意できるので、いくつか持っていると安定する。
船(特殊 権利・揮発性)
小型、中型、大型の3種(それぞれ積載量2,4,8 乗客0,1,3)。 船自体は購入するとゲーム終了時まで所持している。それぞれメリットとデメリットがある。
小型程メリットがある:
安い
毎ラウンドには使う事ができる。
⇒大型船は長期航海(2ラウンド先まで戻ってこない)の可能性あり
大型程メリットがある:
積載量が大きい。
荷物一個当たりのコスパがいい
達成できる契約書が多い。
小型だと商品数3以上や乗客(=商品のいらない契約書)が達成できない
長期航海(2ラウンド先まで帰ってこない)の時、追加で勝利点
2.毎ラウンド違う環境の作り方
このゲームでは環境を以下の3つの要素で毎ターン違うものにしている。
自分でコントロールできるもの、他人と
役職(他人とのインタラクション)
毎ラウンド、ところてん競り
各ラウンドのボーナス。他人に競り負ける事で計画が狂うタイミングを作っている。買えるものがあってもお金を残す理由になり得る。
船(自分でコントロール可能)
長期航海に出した船(の積載量)は次のターンには使えない。
市場(ゲームから与えられる課題)
・商品5種類のうち毎回4つは売り買い可能
・3種類は3つセットで得点化可能
今回のターンだけでなく、次回の市場までは公開されているので理不尽さは無い。
3.多様な回答
ボトルネックに対し、解答が1種類しかなければプレイ体験は非常に単調なものになってしまう。
例)資源があまりがち どうする?
方法1 得点化を狙う
1-1契約カードを多く引く
1-1-1生産レベルを上げる
1-1-2役職で「契約書+3枚」を取る
1-2 商業施設(恒久的な変換手段)を用意しておく
1-3 逆に3つ余るようにして市場で得点化
方法2 お金に換える
市場で売却してお金にする
⇒高く売れるようにする建物もある
方法3 保存する
5つまで保存できるようにする(特殊な建物を買う)
正直な感想+自分はどうするか?
プレイすると十分面白いし、結構好き。だが、ベスト10を選べと言われたらまず入らない。正直、長所を伸ばしていくゲームの方が好きなんだと思う。
しかし、長所を伸ばすゲームの中盤以降に実質的な選択肢の無さを感じる事は多々ある。SlayTheSpire系列のゲームでデッキの方向性が固まるとそれ以降の選択が似たようなものに感じる。(毒デッキにしたからナイフたくさんできるカードはいらんな的な)
「長所を伸ばす拡大再生産」と「短所を補う拡大再生産」この2つの良い所をうまく両立する事はできないだろうか?
疑問点(今後考えたい事)
twitterのハッシュタグ(#ゲームデザインに関する問)にて考え中です。何かご意見等ありましたらリプライ等していただけるとありがたいです。
<拡大再生産 お題6>
爽快感を失わないまま「各ラウンドで考える事の違い」をどう手に入れるか?
おそらく、どう構成要素を”除去”するか?になると思う
#ゲームデザインに関する問 59
— 古瀬和人 (@Biblio_Games) January 19, 2023
”長所を伸ばす”タイプの拡大再生産において 「各ラウンドで考える事の違い」をどう手に入れるか?
デジタルゲームでいえばSlayTheSpire系列のゲームもこのタイプ。中盤以降「もう追加カードいらないな」と感じることがあるがこれは解消できるか?
<拡大再生産 お題7>
逆に「ボトルネックを探して解消する」ゲームの爽快感を高める方法は無いか
#ゲームデザインに関する問 60
— 古瀬和人 (@Biblio_Games) January 19, 2023
逆に”短所を補う”タイプの拡大再生産において
ゲームの爽快感 や 毎ゲームの違いを大きくする 方法は無いか https://t.co/Lz7fWLl759
<拡大再生産 お題8>
相手に合わせた調整といえばサイドボードだが、デッキ構築(やSlayTheSpire)にこれを入れる事はできるか?また、楽しくなるか?
#ゲームデザインに関する問 61
— 古瀬和人 (@Biblio_Games) January 19, 2023
相手に合わせた調整として思いつく単語=>サイドボード。デッキ構築(やSlayTheSpire)にこれを入れる事はできるか?また、楽しくなるか?
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