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ゲームと乱数①良い運だめしとは何か?

 ダイス、ルーレット、山札や袋からのドロー等、ゲームには偶然によって何かが決まる仕組み(=ランダマイザ)が良く使われる。ではなぜこのようなランダマイザが採用されているのだろうか?

結論から言えば、ランダマイザの役割は以下の4つであると考えています。

出力としてのランダム
 ・①運試しによる一喜一憂
 ・②思考の打ち切り
 ・③実力差が覆る可能性を作る

入力としてのランダム
 ・④問題生成
(定石潰し、1試合内や試合間の状況の多様化によるリプレイ性確保=飽き防止)

今回は①運試しとしての乱数となります。

ゲームメカニクス大全との比較

 ゲームメカニクス大全において運の要素は 非公開情報 や 記憶要素等の他の不確かさや(ゲーム開始時であれば)不確かさではない④の問題生成(バリアブルセットアップ)と共に6章不確実性にまとめられています。個人的にはせめてどちらかとは別にするべきかと感じています

 ”不確かさ”という切り口での分類に関してはこちら

良い運試しに必要とされるものは何か?

 運試しが楽しくなるという状況はプレーヤーが幸運(あるいは不運の回避)を強く祈った時です。「(TCGで)デッキに1枚いれたあのカードが来たら勝てる」と思いながら引く瞬間は 内容のわかっていない山札からカードを引くタイミングとは何か違うものがあります。

 ではどうすれば、人は幸運を祈ってくれるのでしょうか?
私は 以下の2つの性質を持っている時だと考えています

条件1 即時性 =幸運(不運)が即座にわかるか

条件2:振れ幅 =幸運と不運の差が大きく感じられる

補足
厳密な確率の計算やカードの構成の把握はできていなくてもよい。極論、いい(嫌な)予感さえ感じさせれば数学的に100%や0%でも良い

また、マストではないですが
条件3: 衝突(相手の幸運が自分の不運であると感じる)

も盛り上げるうえで非常に効果的です。

どうやって”出たら幸運なもの”を伝えるか?

 もし、ダイスを振った後の処理や目指すべき目標が複雑で「出目を見ても何が得られたのかわからない」「何が幸運な状況がわかっていない」といった状態に陥っているとしたら、それは運試しとして破綻しています。
 ダイスを振っているとき(ドローをする瞬間)に「〇〇出ろ!!」と難しい事を考えずにわかる事、出た目が良い物かすぐにわかる即時性がこの手のゲームには必要です。

 大きくわけると ①知っている状態でゲームを開始する事を目指す か
同じカードを何度も使いまわすことになります

①知っている状態でゲームを始める

ダイスであれば、振って目が出た瞬間にそれが幸運なのか、不運なのか反射的に分かる事を目指すべきです。


1-1  シンプルな構成のものを使う
 
ランダムの結果(サイコロの目やカード)だけでなく、それによって目指す目標(どんな資源を手に入れる必要があるか等)もわかりやすくするべきです。

 1-2 自分でカスタマイズさせる
  TCGのような 構築済みデッキやゲーム中の デッキ構築がこれに当たります。TCGのカードはシンプルとは言えませんが、自分で作ったデッキならば「今何が来れば幸運か?」理解する事はさほど難しくありません。

②同じカードを何度も使う


 2-1 少ない枚数を使いまわす
普通の実装に関して特に説明すべきことは無いので、
特殊なものとしてパンデミック のエピデミックの処理を紹介します。

※パンデミックの”エピデミック”の動作

「どのような不運が起こるか」が書かれたカードの山札に対する処理。
時々、捨て札をシャッフルして”山札の上に置く”ので何度も同じカードが出る事になる。
カードの性質上、複数回目の出現時にプレーヤーがダメージを受けるようになっている

この処理により、 致命的な不運を引き起こす事となったドローに対して「1度見たカードなんだから対処できたんじゃないか?」という感情を引き起こし不運に説得力を持たせる事に成功していると思います。

どうやって幸運と不運の差を大きくするか?

 まず1番駄目なのは「どれでもいいや」と思われてしまう事。
例えば「6種類の資源が3個ずつ必要な状況でどれか1個が手に入るダイスを振る」といった状況はできる限り起こらないようにすべきです。

 また、大きい幸運は興奮を生みますが、たった一回の運がゲームを支配している(と感じる)状況はあまり褒められたものではありません。運の要素が少々多くてもそれが分散していてリカバリーが可能であれば”運ゲー”という印象は与えづらい 逆にサイコロを振る等の機会が少なくともその1回が順位を左右しているのであれば、

 これを最も典型的な実装にプレスユアラックと呼ばれるものがあります。
いくらでも挑戦して今回の点数(報酬)を大きく続けられるが、特定の条件を満たしてしまうとその回の点数が0(や最低保証)になってしまうというものです。
 「単に運が良かっただけじゃなく、リスクを取って冒険した」という事実が大きな幸運でも他プレーヤー目線で許せるものになりやすい実装です。

他人との衝突

 サイコロを振る⇒結果を反映するという1連の流れは 意外と時間がかかります。ダイスの結果を受けて判断(ダイスの振り直しや獲得した資源を活用してのアクション)をする場合はさらに時間を使います。
 この時間で熱が冷めないよう、また、一緒にゲームをしている空気を作り出すために他人の幸運に興味を持ってもらう必要があります。
 早取りやマジョリティーといった他人と比較する目標を使うのが一般的かと思います。


さいごに

 ランダムの役割として最も重要な要素「運試しによる一喜一憂」についてまとめました。
 最初は4つの理由をまとめて書いていたのですが長くなってしまったため分割しました。②思考の打ち切りや③実力差を覆すはあまり書くことがないので書くかわかりませんが、④に関してはそのうち書くと思います。

 何かご意見、ご感想等ありましたらコメントやTwitterでお願いいたします。

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