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川柳で若い世代にエールを送りたい 23/5/14

1.川柳の一言コメント

「尖がらんと熱いコーヒー飲みなはれ」

 この川柳は関西弁のイントネーションで楽しんで下さい。私は和歌山県出身ですので、関西弁を使うと肩の力が抜けてリラックスできます。
 「とがる」「とんがる」どちらも読めますが、「とんがらんと・・・」でお願いします。

 「尖がる」という表現は年配者は使っても、今の若い人はあまり使わないと思います。「突っ張る」とか「粋がる」とかと似た感覚です。とげとげしくて虚勢を張るという感じにも似ています。

 例えば、自分自身にプライドを持ち全身全霊を注いで仕事に当たり、「俺ならこんな仕事、簡単にやれるはずだ」と確信していた人が、予想外にうまくいかなくてイライラしているとします。

 そのイライラのため、自分や周りの人に当たったり、声を荒げたりしているのを見て、近くに居た人が「まあまあ、そんなにイライラせずに。いつもいつも思い通りにはいかないよ。コーヒー淹れたから一休みしたら?」と、優しく声掛けしている状況です。

2.私の経験で思う事

 一流のスポーツ選手は、誰もが強気で自信に溢れています。競技の試合になると、「勝てる。絶対に勝つ。必ず勝つ」と、心に決めて臨むはずです。そうでないと、同じように思っている相手に気持ちで負けてしまいます。

 物事を自分のペースで強気に進めていける能力は必要です。しかし、世の中の全ての物事が自分の思い通りに出来る訳ではありません。私は仕事を通じての人生経験が多いので、仕事の例でお話します。

 私は一時期、建設業界でマンション建設時の建設計画を、近隣住民の方々に説明する仕事をしていました。近隣住民の方には、マンション建設により自分が損害を被ると、不満と怒りを感じている方もいましたが、そんな方にも説明させて頂く必要がありました。

 建物は適法に建築します。事業主が自分の土地に自分の資金で、法に則り自分の建物を建てる訳で、本来、近隣住民の皆様にとやかく言われる筋合いはありません。

 しかし、建設時の騒音や振動や埃が嫌だとか、適法とは言え今まで日当たりが良かった自宅が日陰になるのは嫌だとか、都市においては受け入れて頂かなくては仕方がないルールでも、その方にとっては嫌な事があります。

 そんなお宅に伺って、建設計画にご理解頂きスムーズにマンションが建てられるようにするのが私の仕事でした。しかし、お話したくても門前払いされたり、罵声を浴びせられたりする事がよくありました。嫌なものは嫌だという事です。

 会社に度々苦情が来ます。その都度丁寧に説明して解決策を講じます。苦情処理係の一面があり、強いストレスが掛かる仕事でした。当然、うまくいかない事があり、と言うより、すんなりいく事の方が少なく、どんな現場も必ず困難な問題が起きました。

 私はこの時、異業種から転職してきましたから、「こんな仕事があるのか。大変な仕事だな」と感じました。報告や書類作成等の事務処理も膨大だったのですが、イライラする事が多くて仕事が滞りました。

 神経をすり減らして仕事を辞めたくなりましたが、その時期は事情があって、収入が無くなると困りましたから、先輩や上司の援助やアドバイスを受けて、なんとか勤務を続けました。

 仕事で私が行き詰まったとき、「まあ、明日もあるから一休みしたら?」
と、声かけてくれる先輩や上司に助けられました。別に、私は尖がっていた訳ではありませんが、イライラして似た状況でした。

 自分の思いどおりに行かないと悪い考えが頭に浮かびます。
・あの住民は、何て自分勝手で傲慢なんだ。役所に訴えてやろうかな。
・俺は仕事の出来ないダメ人間だな。この仕事、向いてないな。
・前の職場をクビにならなかったら良かったのにな。
・もう、何もかも放り出して、どこか遠くへ行ってしまおうか。

 しかし、コーヒー飲んで一休みしたり、思い切って休暇を取ったりして気分転換すると、今まで気付かなかった解決策が思いつく事があります。

 また、人は同じ感情をずっと持ち続ける事が困難なようで、時間が経つと怒りがおさまり穏やかになったり、別の事を考えて笑顔が出たりします。それは自分だけでなく、不満と怒りに満ち溢れていた住民の方も同じでした。

 回数を重ねて根気よく説明に来る私に対して、住民の方も、いつまでも強いトーンで怒り続ける事は困難だったのです。そして、最後は納得して頂きました。実は、そうなるまでこちらが頑張り続けるのでした。 

3.瀬川さんの絵

 漫画家の瀬川 環さんが、この川柳からイメージした絵を描いてくれまし。

尖がらんと熱いコーヒー飲みなはれ

 これは、林業に従事する人達の絵ですね。ブスッとした表情で座っている若い男性は、まだこの仕事に慣れていない新人でしょう。もしかして、「俺は何故、こんな所に居るんだ。あんな事が起きなければ、今頃、東京のオフィスでバリバリ働いているはずだったのに・・・」等と、心の中で思っているのかもしれません。

 自分にプライドが無いと生きていくのが辛くなります。「俺は、どんなに悪くてもここまでは出来る筈だ」とか、「俺があんな奴に負ける訳がない」とか。しかし、現実にはプライドが傷つき、落ち込むことがあり得ます。

 仕事は人間が作り出した物で、必ず解決策があります。もしも最後まで解決出来なかった場合、「断念する」というのも解決策の一つと私は思います。

 また、仕事を困難に感じるのは、仕事の理解不足が大きいと思います。困難と感じながらも毎日仕事を続ける事で、その仕事への理解が深まり、どのように世の中の役に立っているかが分かり、自分の能力も積み重なって、やりがいを感じるようになってくるでしょう。

 会社勤めの場合は、先輩や上司、同僚に相談できるでしょう。一人で仕事をする場合でも、家族や友人、同業者で親しい方、行政等の相談窓口等、多方面に目を向ければ、問題解決の糸口になるきっかけがきっと見つかるでしょう。

 一人で悩んでいると視野が狭くなり、自分で自分を追い込んでしまう事になりかねません。そんな時、近くの誰かが「まあ、コーヒーでも一杯」と言ってくれればいいのですが、誰もいなかったら、意識して自分で休憩を取るのがいいと思います。

 


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