南海トラフ地震臨時情報の発表後に和歌山に行った話
8/8(木)に宮崎県の日向灘沖を震源地とする地震が起きて、その後、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された。
私は、8/10(土)~8/12(月)に郷里の和歌山県田辺市に行き、お盆の墓参りをする予定で、7/15にJRの切符を手配していた。南海トラフ地震臨時情報が発表されて、何にどのように影響が出るのか分からず、私は当初の予定通り8/10に郷里に向かった。
一応、巨大地震が起きるリスクが、0.1%から0.5%に高まったという事をテレビの報道で知っていたので、瓦礫の上を歩いても大丈夫な靴を履き、着替えを通常より余分に持って行った。
田辺市に住む兄夫婦宅に宿泊させてもらう予定だったので、地震が起きたら兄夫婦と一緒に逃げればいいと考えていた。但し、きっと大したことは起きないだろうと楽観していた。
しかし、東海道新幹線は「三島~三河安城」区間でスピードを落として運行していたし、在来線特急の「くろしお」は、新大阪駅から和歌山駅止まりになっていた。和歌山駅から南下するには各駅停車を乗り継いで行かなければならず、田辺到着は2時間余り遅れた。
社会全体で地震に注意して通常の経済活動をしているのかと思ったら、全然違った。特に観光地は打撃を受けていた。南紀白浜の海水浴場は遊泳禁止になっていたし、辺りのホテルや旅館はキャンセルが続出している状態だった。
私は2泊3日の滞在中に巨大地震が起きるとは思っていなかったが、南海トラフ地震臨時情報の発表後の世間の反応が大きくて不安になった。但し、地元の人達はジタバタしていなかった。生活の場は移せない。地震が起きても、津波が来ても、それに対応するしかないから覚悟していたのだろう。
今回、墓参りの他に、田辺市にある吉野熊野国立公園「ひき岩群国民休養地」に行こうと考えていた。この場所を題材にした物語を作ってみたくて、取材のつもりだった。
ひき岩群は子供の頃から何度か訪れているが、全域は歩いておらず、また、前回の訪問から10年以上経っているので現状を確認したかった。
8/11(日)午前9時、兄が車を運転して「ふるさと自然公園センター」に連れて行ってくれた。この施設は、ひき岩群の成り立ちを始め、近隣の自然、水生生物、昆虫、動植物等の説明や展示をしている。位置的には、ひき岩群の展望地に続く東入口になる。
中に入ると、施設の方が昆虫の標本等の説明を丁寧にしてくれた。その時の訪問者が私と兄の二人しかいなかったので、担当の方は時間の余裕があったのかもしれない。
私が、「これからひき岩群を歩く予定なんです」と話すと担当の方は、「以前、NHKの番組でここが紹介されたときは大勢の方がいらっしゃったのですが、今年は誰も来ないですね」と話された。
南海トラフ地震臨時情報や、近年の厳しい暑さが影響していると思われる。しかし私は予定通り歩くことにした。水分は2リットル用意していた。
兄はここで帰ったが、私はちょうど10時に東入口から歩き始めた。
東入口に次のような説明版がある。
写真の文字が小さめなので、以下に記します。
「ひき岩群」は、自然が造り上げた奇岩群が、ヒキガエルの群れを連想させることから名付けられたものです。
この岩峰を形成する地質は、新生代新第三紀に、堆積した岩石で朝来累層と白浜累層と呼ばれている粗粒砂岩群の地層が厚く重なりあった堆積岩層群で形成されています。
この岩石群の中でも稲成川に接する巨岩は、特にヒキガエルの頭部によく似ているので、県の天然記念物に指定されています。
この地方は、温暖で雨の多い気候のため、普通森林が見られますが、ひき岩群はその中で独特の景色を見せています。
それは、ここの地層が風化や侵食を受けやすい岩質によることや江戸時代以降繰り返された森林の伐採や山火事なども大きく影響していると考えられます。
まあ、観光で訪れる方は、地層の説明より景観に興味があると思う。
東入口から歩き始めて5分の場所に岩口池があった。
池の向こう側の山に畑が見える。ひき岩群は標高80m~150mの丘陵地にあり、農地や民家とも隣接している。岩口池から先は山道に入る。
山道の途中に東屋とベンチがあった。ふるさと自然公園センターの方が「今年は誰も来ない」と話したが、テーブルやベンチの落ち葉が、その事をよく表していた。
山道は整備されていている。案内表示もあって迷うことはない。東入口から歩行時間30分程度で第一展望地に着いた。
ひき岩群は丘陵地で頂上というのは無い。あえて言えば、第一展望地と第二展望地が標高が高いので頂上に当たる。山道から第一展望地に出ると急に展望が開けて気持ちが良かった。
この日の最高気温は34度程度だったが、まだ午前中でそれほど暑く感じなかった。写真を撮って第二展望地に向かう。岩場の自然観察路には鎖が付けられていて安全に歩ける。
第一展望地から山道に戻る。砂岩の層で出来た岩と山道の雰囲気が良かったので写真に撮った。よく見ると光を反射した蜘蛛の巣が映り込んでいた。
第二展望地に上がる直前の道から獅子岩が見えた。第一展望地から第二展望地までは歩いて10分程度だった。
第二展望地からは、「三匹のカエル」と名付けられた岩を眺めることができる。そう言われれば三匹のカエルが空に向かって口を開けているように見える。
この辺りの岩は、全ての岩がヒキガエルが空に向かって鳴いている(吠えている)ように見える。ここからは西入口に下ることにした。
安全に下りられるように、自然観察路に鎖が付けられている。第二展望地から西入口までは約650mだ。下山途中、植物か昆虫の観察目的らしき男性一人と出会ったが、東入口から登り始めて西入口に降りるまで、出会ったのはこの男性一人だけだった。
ひき岩群を歩くコースは幾つもあって、南入口、北入口からも展望地に行ける。また、少し離れた所に岩の間に作られた岩屋観音があって、新三十三番霊場を回りながらもう一つの展望地に行けるコースもある。この日の山歩きは休憩も含めて約2時間だった。
8/12(月)の最終日は、当初予定より4時間早く帰路に就いた。南海トラフ地震臨時情報が発表されてから、紀伊田辺駅から御坊駅までの各駅停車は通常より20分程度遅れているらしい。
私は各駅停車で和歌山駅まで行かなければならなので、40分程度の遅れを見込んでおく必要があった。また、和歌山駅で特急指定席券の払い戻し手続きもする予定だった。
各駅停車は一時間に一本しかないので、何が起きても大丈夫なように時間の余裕をもって帰ることにしたのだ。
きのくに線は、場所によって海岸線ぎりぎりの所を走っている。過去に津波や台風の被害を何度も受けているのだから、もっと山手の高い場所に線路を敷けば良いのにと思うが、トンネルを掘るコストや人々の利便性など総合的な判断なのだろう。
今回の郷里滞在中に巨大地震は起きなかった。しかし、今後30年程度で発生する確率は70%とか80%とかあるらしい。巨大地震が起きたら、私の郷里は地震と津波で大被害を受けるだろう。8/11に歩いたひき岩群の形も変わるかもしれない。
兄夫婦は非常持ち出し袋を準備しているし、避難経路や避難場所も把握している。しかし、安全に逃げられるかどうかは起きてみないと分からない。今回、南海トラフ地震臨時情報が発表された事で、改めて防災意識が高まった事だろう。
巨大地震は必ずいつか起きるそうなので、日本に住んでいる限り、私も防災意識を常に持って生活する事が大切だと感じた。
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