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 私は今日、仕事をサボった。責任のない仕事。責任のない立場。

派遣の仕事はもうじき契約が終わる。そろそろ正社員で探すか、と一つだけ「正社員募集」と書かれてあった求人に応募したものの、話を聞いてみれば、それは無期雇用派遣というやつらしく、少しググれば、変換予測に「無期雇用派遣 デメリットしかない」「無期雇用派遣 やめとけ」という文字が並んでいて、ああ、そういう類の雇い方なのねと落胆。

 それでも一応は正社員雇用という形式のせいか、明後日17時までに履歴書・職務経歴書を提出しなければならない。ということは、今日のこの時間と、明日の仕事終わりの時間内で作り上げるしか猶予はない。

 そもそも、私に仕事における特筆すべき長所というべきものはなにもなく、にも拘らず、自己PRをするために企業の求める人材像と、マッチするような長所を想像して書き起こすという作業は乗り気がしない。あるかないかもわからない、自身でも疑わしい能力を誇張して、嘘を捏造するだけでも骨が折れるというのに。第一、私が社会に出て積んできた13年間の経験で得たものは、「やり過ごすこと」だけだった。なぜ正社員になろうと思ったのか。金が欲しいからだ。今後一人で生きていくだけの金が。それ以外に理由なんてあるだろうか。

「選ばなければ仕事はある」なにを仰っているのか。選んできたからこそ、いままでなんとか仕事を続けられたのだが。(休みがちではあるものの)

 サボり癖を調査するため、今回勤めた派遣先で仕事をサボった日数をカレンダーに記録して調査してみたが、責任を伴わない派遣の仕事でさえ、月に一回は必ず休んでいた。それもすべて月曜日。13年前からまったくこのサボり癖は治っていない。正社員のときでさえ、たしかそのくらいの頻度で休んでいた。「毎日出勤できるほうが、おかしいんだよ」と坂口恭平さんの本で読んだことがあるが、そうは言っても、この世の中は多勢が正しく、「まとも」なのであって、才能も、同情の余地もないやつには殊更冷たい。

 昼過ぎまで寝て、腹が減ったのでリビングに食料を求めて起き出すと、三年ニートの姉が、パジャマ姿のまま韓国ドラマを見ていた。母はどうやら宗教施設に出掛けているらしい。

 この姉にして、この弟があるのかもしれない。せめて姉にはしっかりしていて欲しかったと思う。この家族はいったいどこへ向かっているのだろう。そう遠くない未来、母が死んで、一気に路頭に迷うことは想像に難くない。姉は知らないが、私はそのことについておぼろげながら考えないわけじゃない。それでもいまいち実感の伴わない想像、或いは楽観視しているのか。危機意識というものが薄い。

……なにか、昨日の夜半過ぎからずっとこの調子で気分が暗い。ただ職務経歴書を書くのが億劫なだけかもしれない。面接なんて大嫌いだ。憂鬱な木曜日まであと三日。嘘を用意して嘘を暗記して喋ることの不毛さ。

「私にはなんの能力もないんですがね、キャリアも、スキルも、やる気もありません。仕事に生きがいも求めていないし、働く時間以外はプライベート最優先で考えてます。仕事はあくまで生きていくためだけにします。それ以上でもそれ以下でもありません。それでも私が欲しいと思うなら雇ってください。」

 本音ベースで言えばこんなところ。誰が雇いたいですか? こんな人材を。わかってますって。だから不毛だと言ってるんでしょう。それでも捏造した建前で自分を売り込み、その嘘を信用して雇い入れる。こんな馬鹿馬鹿しいことがあるかよ。あーやっぱ一生非正規でいい気がしてきた。

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