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「ホールを使いこなす」

12月の打ち合わせのため
久し振りに上野公園内にある
旧東京音楽学校奏楽堂に行った。

2009年に有志を集めて
最初の音楽会を行ってからこれまで
90回を超える公演を行ってきたが、
メインの会場として使ってきたのは
錦糸町のすみだトリフォニーと
この旧奏楽堂だった。

東日本大震災の影響で
ダメージを受けた旧奏楽堂の
改修工事が始まる以前は、
ジョイントコンサートの類を
主に旧奏楽堂で、
オペラセリアの公演は
オペラチックな照明演出が可能な
すみだトリフォニー小ホールでと、
うまく使い分けを行ってきた。

長らく改装工事中だった旧奏楽堂が
リニューアルオープンしたのが2018年末。

そして2019年の1月から
ここでのコンサートを再開したが、
以前と変わらぬところ、
また、大きく変更されたところなどがあり
それはそれで、なかなかに新鮮だった。

大きく変わったところは、
玄関内側にある自動扉。

これがあるとないとでは、
館内の気温、
特に1階部分の気温がまるで違う。

毎年1月2月の公演では、
玄関から入り込んでくる外気の寒さに
受付スタッフが震え上がっていたが、
この自動扉ができてからは、
堪えられぬ寒さではなくなった。

公演主催者としては
一番有難い変更箇所である。

そしてホールの客席。

以前より横幅が若干広く、
「クッションつき」になったことで
とても座り心地が良くなった。

・・・まあ、
昔の木製の椅子も
雰囲気はあったのだけどね・・・

舞台裏にある調光配電盤も変更され、
タッチボタン式になったのはいいが
小さなレバーを上下する旧式に比べ
明らかに反応が遅く、誤作動率が高い。

開演時や休憩前などで
速やかに舞台照明を変えたい時は
指一本で複数のスイッチを同時に操作できた
以前のレバー式の方が便利だった。

せっかくタッチボタンにしたのだから
いくつかの照明パターンを記憶しておき
その記憶用ボタンひとつで
切り替えができるようにしてくれれば
もっと良かったのだが・・・


このホールの一番の特徴は、
良い意味でも悪い意味でも
「残響があまり残らない」ということ。

風呂場みたいに響くホールが多い中、
この旧奏楽堂の響きは逆に新鮮。

ピアノと声とのバランスも良く、
ピアニッシモの音をクリアに聞き分けられる。

歌曲系、室内楽系には嬉しい設定だ。

残響が残らないということは
演奏者にとっては少々辛かったりするが、
そこは「慣れ」だろう。

楽器の演奏においては
「楽器を十分に鳴らす」
「共鳴体としてしっかり響かせる」
という奏法が求められるが、
ホールにおいても
「ホールを十分に響かせる」
ことが求められる。

小さなサロンでは
そのサロンにあった響きと
その響きを十分に活かした演奏が、
大きなホールでは、
その空間の大きさに見合った響きと
その響きを活かす演奏があって、
はじめて素晴らしい音楽を
その場に出現させることができる。

曲のテンポや間の取り方なども
小さな場所では小さな場所にふさわしく
大きな場所では大きな場所にふさわしく
演奏するシチュエーションによって
微妙に調整をかけていくことになる。

・・・それは
ライブの面白さでもあるしね・・・

「ホールを使いこなす」

これもまた演奏家のこだわりの部分。
うまく使いこなせるようにしたいものである。


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