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邪魔な妻を殺すことにした医者

フランシス・アイルズ、っていうのはアントニー・バークリーの別のペンネームですけど、この人の作品で「殺意」っていうのがあるんですよ。世界3大倒叙ミステリの一つかな。あとの二つはクロフツの「クロイドン発12時30分」とリチャード・ハルの「伯母殺人事件」。
殺意は主人公がイギリスの田舎町に住む医者なんですね。ピグリー博士。この人は貧乏貴族の妻ジュリアと結婚するんですが二人の間に愛はなくて、ピグリーは妻に顎で使われ、小さな町のいろんな女性と浮気を繰り返して生きてきたんです。ところがここへマドレインっていう若いお金持ちの女性が越してきます。ピグリー博士は彼女に恋して、彼女も彼の気持ちに応えてくれるんですが、「ジュリアが可哀想だから別れなくちゃ」というんですね。ピグリーが「ジュリアに話て離婚してもらうよ」というと「ジュリアに話しちゃダメ。ジュリアは罪もないのに苦しむことになる。それに私は離婚した人とは絶対に結婚しない」というんです。それでピグリーは妻と離婚するのではダメだ、殺そうと思い立つわけです。仮に噂になってもマドレインは金持ちだし、二人で他のところで出直したっていいわけですからね。幸いピグリーは医者。彼は見破られない殺し方を考えて長期的な妻の殺害計画を進めて行きます。

これ、最後のオチが面白いんですけど、まぁ昔の話だしオチまで書いてしまいましょう。
自分で読みたい方はこれ以降読まないでください。

結局ピグリーは妻殺しに成功するんですが、マドレインは他のいずれ貴族になる若い男デニスと結婚してしまいます。ピグリーはマドレインを憎みながらもそのまま暮らしているんですが、妻を殺してしばらくしてからピグリーが怪しい、本当にジュリアは自然死だったのか?って話になるんですね。この騒ぎを起こしたのが昔の愛人アイヴィの現夫、弁護士のチャトフォード。やめとけばいいのにピグリーは、一人殺して成功しちゃったから歯止め効かなくなっちゃったのかな、マドレインとチャトフォードも殺すことにしたんです。ところがこれでやりすぎたこともあって訴えられ、裁判に。ヒヤヒヤするんですがなんとかジュリアの殺害とマドレインとチャトフォードの殺害未遂では無罪になるも、本当に何もしていないマドレインの夫デニスの殺害で有罪になります。

私多分デニスを殺したのはマドレインだと思うんですよね。というのは何回もそれまでにマドレインは金持ちなのに家の下水設備を治していない、というのが出てくるんで。それにマドレインとデニスは離婚寸前なんですよ。結婚してちょっとでもう別居してますし。

犯した罪では裁かれないが他の罪で裁かれるというオチで、このラスト数行でびっくりするオチをつけるのは他の作品でもやってるなぁ。この皮肉さがいいのかもしれません。本人的には周到に準備した犯罪でも準備の甘かったところを裁判で詰められるのもありそうで面白かったですね。ただ心理描写がだいぶくどくて、そこが面白いと思えるタイプなら最高だろうし、もっと話を進めてくれと思うタイプだとぐずぐずするなと思うかもしれません。

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