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ナイン・テイラーズは死者をおくる鐘のこと

ドロシー・L・セイヤーズの名作、というか代表作ですね。ピーター卿シリーズ。

これ、海外ミステリおすすめ30選とかそういう記事だとまず名前があがる作品で「重そうだなぁ〜嫌だなぁ〜」と思いながらも読みました。重い話苦手なんですよね。なんだって読書までしんどい思いをしなくちゃいけないんだよと思ってしまって。でも教養ですから。身につけるべき教養で身につけてないもの結構ありますけど、でもまぁミステリは読んでおこうというわけでとりあえず読まなくちゃならない。で、読んでみました。

出だしは最高だったんですよね。危惧していたような耐えられない暗さとか文章が勿体つけていて身体中が痒くなるとか全くありませんでした。牧師様と知り合いになる件や九点鐘をつくことになるくだりとか各キャラクターとかね。特に牧師さんは可愛かった。

犯人もなるほど!という感じでしたし、ちゃんとヒント出ていたのに完全に盲点だったし重みもあって良かった。重苦しい雰囲気と明るい雰囲気の差も良かったですね。暗号解くのも難解過ぎて途中で理解は放棄してぼうっと読んでましたけど面白かったと思います。

ただですねぇ、とにかく無駄な会話が多いんですよ。というかピーター卿がめちゃくちゃ無駄な引用をしてくる。文庫本の1ページの半分を引用で占めたりするんですよ!これ、私がピーター卿の親しい人ならちょっと黙ってくれって言いたくなりますよ。引用男子とかあだ名をつけてしまう。現代日本において一般的な引用でないので注釈の量がものすごくて、注釈に分断されまくるのでピーター卿の発言の要旨が汲み取れないくらいなんですよ。物語の円滑な進行のためにも引用はほどほどにしてほしい。

あとエメラルドの首飾り盗難事件、そんなに魅力的な事件じゃなかったんで、結構このくだり読んでる時面倒でしたね。そんなにこの事件面白くないんだけど?って思いながら読んでました。メインとなる事件、二つ作るなら両方それなりに魅力的にしてくれないとこんな長編飽きるぜ、という思い。高価な宝石が盗まれる事件ってめちゃくちゃあるんで、なんか細部にテンションが上がるものがないと飽きてしまって。

当時ドロシー・セイヤーズもクリスティも人気作家だったらしいんですけど、時が経った今どちらがより評価されているかっていうと、これはもう明らかにクリティに軍配が上がると思うんですが、原因の一つはこの無駄な引用だと思うんですよね。クリスティにも引用はありますし、それいる?と思うような謎の恋愛とかありますが、しかしそれでも引用で半ページ使ったりはしませんよ。

「ピーター卿の事件簿」も読みましたが、あとあれですよね、大したことないトリックの割合もちょっと多い。たくさん書いていれば全てが全てクオリティの高いトリックってわけにもいかないと思うんですけどそれにしてもクオリティの低いトリックが多いかなと思います。「不和の種、小さな村のメロドラマ」とかよくこんな話でこの長さ引っ張ったなっていう雰囲気が…。彼女苦労の多い人だったっぽいので大変だったのかな?という気もしますが。とりあえず私はドロシー・L・セイヤーズを端から全部読むみたいなことはしないと思います…。