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サスペンス作家が人をうまく殺すには

軽いものを読みたい時ってありません?
私にはあります。人間について、人生について、愛について、カルマについて考えたくないというだけでなく、独創的なトリックや焼き直しでない殺害方法、現在の社会状況を反映した人物設定かどうか、動機に無理がないか、について考えたくないけど何か読みたいなーっていう時。
そういう時読める本をいくつか持っているのもいいことだと私は思っていて、この本はそういう本です。めちゃくちゃ軽くて読む前にも何も期待しないし読み終わっても何も得ず何も失わず、という本。だからといってそういう本が悪いわけではないのです。無駄を徹底的に省いたり、役に立つこと、意味のあることだけを追い求めると人生は薄くなります。

作者はエル・コシマノ。

主人公のフィンレイは最近離婚したばかりのシングルマザーでサスペンス作家。とはいえ本格的な推理小説を書く作家ではなくてわりと軽いものを書く人で、しかも売れていません。小さな子供二人の世話をして、元旦那からお金をもらいつつカツカツの生活をしています。書かねばならないけれど忙しいし集中できないしでなかなか書けない。担当とレストランで打ち合わせをしていると、見知らぬ女性からメモを渡されます。それには殺人の依頼が。興味を惹かれたフィンレイは殺すつもりはなかったものの、殺害を依頼されたターゲットについて調べ、後をつけます。ターゲットがバーで女性の飲み物に薬を入れたのを妨害したことからフィンレイはなし崩し的に殺し屋になってしまいます。ところがよくよく考えるとどうも殺した人は別にいるらしい。本当の殺人者は誰なのか。

ドタバタコメディですねー。ご都合主義的展開もこれくらい軽い読み物だと気にならない。謎の恋愛についてもまぁこういう本だからと思えばさして気になりません。とにかくライトなので精神的に疲弊している時期に読んでも全く心に害を与えないので良いと思います。

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