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相貌失認の夫と妻が改装されたチャペルに泊まったら

相貌失認ってご存知ですか?
脳の障害の一つで、顔を見てもその表情がわからず、誰の顔かわからない、だから個人の識別ができないという症状のことです。
なので家族や恋人の写真を他の全く知らない人の写真の中に混ぜてみせられても区別がつかないんですよ。声とか匂いとかで区別できるケースもあるみたいですが、顔だけになるとわからない。表情だけで相手の感情がわからない。なかなかしんどい症状です。職業によって仕事上でも苦労しますよね。

この物語、アリス・フィーニー作「彼は彼女の顔が見えない」の主人公の一人である脚本家のアダムはこの症状です。アダムは何本もヒット映画の脚本を担当する脚本家なのですが、妻のアメリアとの夫婦仲はうまくいっていません。二人でカップルカウンセリングを受けたりしています。この週末はアメリアが懸賞で当てた週末の旅行に出かけています。それは田舎の改装されたチャペルに泊まるというもので、吹雪いてきちゃうんですね。チャペルはおしゃれで居心地のいい素敵な宿泊施設になっているんですが、ホテルではなくて家を借りるって感じですね。夫婦と連れてきた老犬のボブ以外誰もいない。最初はぎこちなくもなんとなくうまく言っているんですが、どうやら誰かが鍵を持っていてこのチャペルに入ってきている。そして犬が誘拐され、車のタイヤは切り裂かれ、アダムとアメリアは帰れなくなります。

この物語、1章がアメリア視点(現在)2章がアダム視点(現在)3章が結婚記念日に1年ごとにアダムに当てられた、アダムに見せることなく書き溜められていた手紙(結婚1年目から1年ごとに書かれる)、4章がアメリア視点(現在・アダムの続き)、5章がアダム視点…という風に続いていきます。

結構面白かったですね。仕掛けに気がついた時はあっと驚いたので。
ただ大好きな物語かというとそうではないかなぁ。作者の倫理観が私と合わなかったというか。でも意外性あって面白いので割とおすすめです。

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