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転向。

少し前だが、息子が10年以上のバイオリン生活からチェロに転向した。夫の師匠に褒め薦めされ、いい気分で始めたチェロ修行。レッスンでも毎回たくさん褒めてくれるらしい。「その弾き方もいいけどいいけど、こうするとカッコよくなるぞ」とおっしゃる。賀来賢人似の師匠が言うととても説得力がある。

先週は息子が弾く練習曲の伴奏を夫がしたとか。カッコよく言えばチェロ二重奏である。レッスン3回目でチェロの二重奏ができるなんてすごいじゃない、というとまんざらでもない様子である(私も師匠を見習ってみた)。家でも練習する時に「お父さん、やるよ」と声をかけて弾いているのを見ると確実にやる気スイッチを押す師匠、恐るべしだなあと思う。


ある住宅展示場のモデルハウスでジュニアオーケストラが毎月小さな演奏会を行なっている。オーケストラの代表でもあるN先生が息子に今回はチェロで出よう、と言ってくださった。夫と私は内心、「先生、早すぎますぜ。まだ音階の段階ですぜ」と思ったのだが2、3日前の練習で意外と弾けることに驚いた。息子よ、あなどっていてごめんなさい、と夫婦で反省したのだった。

そして、今日はその演奏会で息子は夫と共にチェロを弾いた。多分いい出来だったのだろうと思う。私なんて息子のことが気になるし、隣のバイオリンの子の弓が頭に2度も刺さるというお笑いハプニングに見舞われるしで自分の演奏がガタガタになってしまった。親っていうのはガラスのハートではやっていけないもんである。

さて、明日は町のミュージアムで月に一度の生演奏をする日である。今回、息子は出られない子の代わりにバイオリンを弾く。そのため今日は演奏会の後に特訓を受けていたのだが、みんなで合奏し始めたら先生が何度か首を傾げた。息子の音が変なんだろうと思って涼しい顔をしていたらまさかの私である。「智佳さん、そこ音が違います」と言われてがっくり。多分2年ぐらいずっと間違えて弾いていた。今日の指摘で長年の癖が抜けるといいなと思うが、本番になると大抵よくない癖が出てしまうものである。

チェロ転向のおかげで息子の心配をするのはもう卒業だな、と悟ってしまった。彼は彼でそれなりに自分の責任を果たしていける上に誰かのことをカバーしてあげられるだけの力も持っている。これからは子どものことより己の心配をしなくちゃならんのだな。

息子のいい話だけを書こうとしていたのに、結局は自分の話で終わってしまった。とにかく明日は先生に首を傾げられることのないようにしたいものだ。

では、また。ごきげんよう。