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彼の存在意義

大学生になった。
彼氏ができた。

彼氏は、私と親友になりたくて付き合い始めたらしい。
意味が分からないまま、私は承諾する。
このころ、頭の中の彼(Eとする)はなりを潜めている。

私は昔から、共依存癖がある。
人を自分と平等にみなすと、依存するのだ。
正しくは、interestingと感じた人間を、自分の理想像に勝手に人に当てはめて、依存する。
interestingの基準は、正直分からない。
多分、自分と他人の境界線が曖昧すぎるけど、本当の私自身に興味をもった、かつ私自身が知らない本当に楽しい時間を過ごせた、これが重なると依存するんだと思われる。これが自覚できた以上、これからこの通りかは分からないが。

話を戻す。

彼氏は、恋愛感情がわからないようだった。
私は、その実験台にされているような気がした。
それでも私が別れを告げなかったのは、ある言葉を彼氏が発したからだった。


「生まれてきてくれてありがとう」


この言葉に私は依存しきっていた。
崇拝しきっていた。
信じ切っていた。
どんなに酷いこといわれたって、顔や体の事けなされたって、この言葉があったから、彼氏の事をあきらめなかった。

彼氏に何度も聞いた。私の事嫌いなの?と
そうすると、嫌いじゃない と返ってくる
むしろ、尊敬しているとまで返ってくる
親友になりたかった、と言われる

1度、Eの事を、彼氏に、所詮オナニーの道具でしょ、と道具扱いされたことがあった。私はその場で怒りを表明できないタイプなので、後から一人で、キレた。今も、思い出すたびに、キレている。

彼(E)は大切な人だ。目の前を生きるお前なんかより、ずっとずっと私に寄り添って生きて、私の事も全部わかってくれて、しちゃいけないことは注意もする、私は長女だが、兄のような存在だ。それを道具、しかも性処理用の道具扱いされて、正直、殺意がわいた。

大学の頃は、Eと話した覚えがあまりない。きっと、体育会の同期とずっと一緒にいる時間が長くて、それどころじゃなかったからだと思う。
あの頃は楽しかった。生身の人間とコミュニケーションするって一種のエンターテイメントだ。後に同期に言われたことだが、私は天真爛漫に振る舞っていて、そのコミュニティのアイドルだったよ、とまで言われた。確かに、ストレスなく振る舞えて、やることもストレスなく結果を出せて、周りに認められていた。私はその体育会スポーツにおいて、化け物と呼称されるほどの力を持っていた。だから楽しかったのだ。
性格のベールをかぶっていても、私自身を率直に認めてもらえていたから。


Eは、試合中にも話しかけてきた時がちょっとだけあったが、ほぼない。
その時私は私だけだから。そうしないと、自分と向き合えないから。そういうスポーツだから。
Eが話しかけてくるのは、試合がおわり、出番がおわり、待機して1人で遊んでいる時。「よう。今日は調子悪かったな」「朝からジャージ生乾きじゃねえの」「なんで泣いてんだ」「ここだと人がくるぜ」

試合会場に霰が降った時があった。私は子供だから、霰をすぐさま取りにいった。冷たくて、半透明で、手に馴染んで、近くにコーヒーの缶があったことは覚えている。写真を撮ったから。
Eは何も言わなかった。私は霰に夢中になっていた。Eも多分、霰に夢中になっていた。

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写真を失くしたので、絵。

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