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【インタビュー】エリートヴァイオリニストがYouTubeに描く音楽と覚悟【オトとヒト】

こんにちは、ライターの青竹です。今回は音楽に携わる様々な人々にインタビューする新シリーズ、その名も【オトとヒト】。
初回はヴァイオリニスト兼クラシック音楽系YouTubeグループ「コロンスタジオ」代表である城所素雅氏にインタビュー。実はこの「音学note」も彼の一声により誕生しました。
ヴァイオリニストとして音高音大を優秀な成績で卒業し、国内外数々のコンクールでも入賞している彼は何故YouTube業界へ歩み出したのか、そしてその先に見据えるものとは。

城所素雅(キドコロソガ)
1995年タイ生まれ。神奈川県横浜市出身。桐朋学園大学附属女子高等学校(男女共学)、桐朋学園大学、桐朋学園大学大学院修士課程(第一期生)を優秀な成績で卒業、成績優秀者による学内コンサートや卒業演奏会に出演。大阪国際音楽コンクール、横浜国際音楽コンクール、日本クラシック音楽コンクール、かながわ音楽コンクール等で1位または最高位、全日本学生音楽コンクール東京大会2位、日本モーツァルト音楽コンクール第3位ほか数多くのコンクールに入賞。日本全国、数多くのコンサートに出演。大学院在学中にYouTubeチャンネル「コロンスタジオ」を設立。「コロンスタジオ」は現在チャンネル登録者数1万8千人を超え、急成長中。

—— 今日は宜しくお願いします。早速ですが、「コロンスタジオ」の事を少し教えてもらえますか。

城所:「コロンスタジオ」はクラシック音楽を軸に演奏動画を流すチャンネルです。でもあんまり方向性は細かく決めていなくて、メンバー各自やりたい事を自由にやっていってます。

——自由にって事は城所さんは全然動画制作に関わらないということでしょうか?

城所::何も口出さないっていうと語弊があるかもしれないですけど、何かをやれと指示する事は基本しないですね。まあでも動画編集とかは僕がやっているので、総合演出家的な立ち位置でしょうか?ワーグナー的な(笑)。なので「コロンチャンネル」ではなくて「コロンスタジオ」なんです。

——あくまで演奏家を抱える事務所みたいなイメージ。

城所:まさにそうですね、目指す所はUUUMさんのクラシック音楽版です。

——そもそもなんでYouTubeを始めようと思ったんですか?大学院在学中って勉強だけでも大変そうだけど...。

城所:たしかにきつかった(笑)。論文もありましたしね。うーん、チャンネル設立の話は話すと長くなるんですが、端的に言うとクラシック音楽をもっとテクノロジーと融合させたかったんです。でも自分にはアプリを作ったり、立派なサイトを作ったりするような技術力はない。じゃあ今、自分の持ってる強みってなんだろうと考えたときに、やっぱり「演奏」だと思ったんです。演奏を使って何かするにはYouTubeしかないなと。

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——なるほど。でもクラシックの演奏家にとって一種邪道とも思われがちなYouTubeという媒体に演奏を上げることに、抵抗はなかった?

城所:そりゃあありましたね(笑)。ていうかまだ大成功しているわけではないので、正直今もあります。でも逆にYouTubeを始めた事で、演奏家としても人に音楽を聴かせる覚悟ができた。

——クラシック音楽界はまだYouTubeに対してあまり良いイメージがない様に感じますが、そこについて何か考えはありますか。

城所:これは一番難しい質問ですね...。確かにクラシック音楽界は、まだ個人で動画をあげることに寛容ではないイメージがあります。それがクラシック音楽が古くからの伝統を重んじている為なのか、前例があまりないからなのか。でも「良いイメージがないって事は、僕が良いイメージをつけられる最初の人間になれるかもしれない」と思ったんです。そう思ったら怖さはなくなりました。あとは、少し鼻につく言い方になってしまうかもしれないんですが、自分が小さい頃から努力してきて、ヴァイオリンでそれなりに結果を出してきた自負があるからこそ一歩踏み出す勇気が出たところもあります。うーんやっぱり鼻につくな、良い感じに編集しておいてください(笑)。

——芸術家らしくて良いじゃないですか(笑)

城所:(笑)。まあ結局は、自分が音楽界を盛り上げることに少しでも関われたらなっていうシンプルな考えです。

——少し意地悪な質問になりますが、ヴァイオリンの演奏活動に影響はなかったんですか?あんなことしてるならうちでは使わない、とか。

城所:いやー僕も少し覚悟してたんですけど、全くなかったです。むしろ動画を撮ってることで繋がりが増えて、プラスに働いています。音大生って卒業すると突然社会に放り出されて孤立してしまう人が多い気がするんですが、この「コロンスタジオ」のお陰で今も多くの人と繋がれている気がします。

——急成長中のコロンスタジオ。昨年の暮れには登録者数1万人も超えました。始めて1年が経った今、心境の変化は。

城所:心境の変化は結構あります。初めに動画を上げはじめた頃は、YouTubeは自分たちの演奏の活動報告程度に考えていました。だけど一年経って見てくれる人も増えてきて、YouTubeを足がかりにもっと色々な事に挑戦したいという気持ちが湧いてきています。

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——色々な事、具体的に聞いても良いですか。

城所:やっぱり音楽とテクノロジーを使ってもっと様々な事をしたい。例えば1月末からはオンラインでレッスンを受けられるサービスを始めようと思っています。忙しい人や、なかなか外に楽器のレッスンを受けに行けない人がオンライン上で手軽にレッスンを受けられるようなサービスです。あとは、まだ企画段階なので詳しいことは言えないのですが、コンサート事業や企画も行っていきたい。とにかくクラシック音楽界の先端を走っていられるようにしたいですね。

——これから音楽界へ飛び込む若い演奏家にに向けては何かありますか。もちろん、城所さんもまだ充分若いですが(笑)。

城所:そうですね、自分自身まだ模索中ですが...。ただ世界へ目を向けるとベルリンフィルハーモニーが「デジタルコンサートホール」のサービスを始めるなど、クラシックもどんどんデジタルに対応し始めていると感じます。若い演奏家はもっと時代の流れに敏感になってほしい。その中に飛び込んで「自分が新たな流れを作り出すんだ」くらいの気概を持っている人が成功すると思います。

——最後に、好きな言葉や心に留めている言葉はありますか?

城所:好きな言葉は「猪突猛進」です。変化が好きなので明日には変わってるかもしれませんが(笑)。

取材・文・撮影:青竹

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