てつごうしのそとにてんしのはねがみえた
鉄格子の外に天使の羽が見えた。
間違いない。アレは私の天使だ。
笑顔が可愛くて、照れる時は甘くて、涙を流す時には優しい、私の天使。
私はいつも、名前も思い出せない人達の事を考えては苦しんでいる。あの人達は青い芝生で楽しそうに輝いているのに私は私はと部屋の隅で頭を掻きむしっている。
だけど、鉄格子の外に天使の羽が見えた時、夢中になって手を伸ばす時、その時だけは苦しみを忘れられた。
天使はいつも素敵で、眩しくて、おとぎ話の世界を生きている。
だから好き。私のことを、あの子達は知らないから。私のことも知らずに、愛しい人と手を携えて生きるあの子達が大好き。
美しい世界で生きる天使達のことが好き。私は鉄格子の中からは出られないけど、あの子達の事を考えているときだけは幸せだった。
だから、私は天使が見えるように目は潰さないでいようと思う。手首を切らず、血を流さず、舌を噛み切らず。
もし、天使の羽が部屋に降ってきたら幸せなのにな。そしたら、死んでもいいのにな。
今日も真四角の部屋で夢を見ては、鉄格子の外で微笑む天使達に思いを馳せている。
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