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「黒武御神火御殿」 宮部みゆき著を読んで

 三島屋変調百物語六之続、ようやく図書館でひょっこり見つけて借りられた。そういえば、前作で、ずっと聞き役だったおちかが結婚んいよりその役をおりて、三島屋次男の富次郎が後を引き継ぐ事になったところだった。

 確か一緒に話を聞いて、絵を描いてその話を封印していたのだったか。読みなれた世界ながら、数年の隔たりがあったのだが、すぐにストーリーに引き込まれていくのがのが、このシリーズの面白さだ。

 全部で四話あり、最初からいきなりのパンチをくらう物語。その後も人間の弱さや恐ろしさ、はかなさを奇譚に盛り込んでいて、背筋が凍る思いをしつつも、読み始めたら一話を読みきらずにはいられない。夜に一人で読むので、怖さ倍増である。

 四話のうち、一番長いのがタイトルの物語で、くろたけごじんかごてん、と読む。

 そもそもが荒唐無稽な物語だが、ストーリーの中に、全くありもしないデタラメを話して途中でばれて、部屋を出された語り手が出てくる。この百物語自体が、作者の作った物語というのはじゅうじゅう承知ながらも、なるほどそういうものかと読み手も膝を打つ。

 第四話は、そういう意味でも作者の創作ながらも真に迫った恐ろしさがひたひたと忍び寄って来る感じで、圧巻だ。百物語を語るまでの序奏があって、その後の語り、そしてエピローグと、よく仕立てられた傑作。そして聞き手の富次郎が、本当の意味で、おちかから離れて独り立ち出来た物語でもある。

 読んでいないシリーズがまだ二巻はあるようなので、今後の富次郎の物語が楽しみだ。