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俺の音楽1 「Let it be」とある悲しい理由で歌詞を覚えた中学生

中学3年の時、1970年かな、ビートルズの最後のシングル盤としてLet it beが発売された。

ビートルズが解散とか、多少の情報をラジオで知っていたが、特にビートルズが好きでもなく、部活一筋ですごしていた俺。そんな中学生活だが、自分の通う学校にも暴力支配があった。そこには一応番長もどきのYくんがいた。本物の番長のような品位はないのであくまでも「もどき」がつく。

Yくん、何故だかこのLet it beがいたく気に入り、子分にピアノの弾ける奴がいるので、中学校の廊下の片隅に置いてあったアップライトのピアノを使って、放課後、子分にLet it beを弾かせていた。
しかし、伴奏だけでは物足りないのか、クラスのNくんに、
「お前、明日までにLet it beを覚えてこい、歌えよな」とビートルズより南沙織が好きなNくんを脅す。
「てめぇ、ちゃんと覚えてこいよ、おい、これレコード」とレコードまで渡された。これでは逃げられない。
 
翌日の放課後、Nくんのリサイタルが開かれた。
Let it beを歌うNくん。
「声がちいせぇよ!」とか間違う度に「初めから歌え」とYくんに言われ、涙目で必死に歌うNくん。そして歌いきる。
「お前、上手いな」Yくんが褒めた。
Nくんはこれで解放されると思ってニッコリと笑う。だが・・。
「明日から毎日聴かせろよ」
また涙目になるNくんだった。
 
その翌日、噂を聞きつけた他の生徒達も、放課後のNくんのリサイタルに集まるようになり、一緒にギター弾いてハモるやつも現れた。そんな中に俺もいた。そして、自宅の風呂でお湯に浸かりながら、何気なくLet it beの鼻歌を歌っていた。
英語の歌詞も書けないし、意味も知らない、
でも良い歌だなぁ、覚えちまった。

大人になったNくん、接待カラオケなんかで上司に強要され、それでも得意げにLet it beを歌っていたのかもしれない。
 
Let it be---The Beatles(1970)

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