見出し画像

第51回日本職業リハビリテーション学会島根大会に参加して

こんにちは。サイトウです。

8/23、24に島根の松江テルサを会場に行われた、日本職業リハビリテーション学会(通称:職リハ学会)に参加しました。

北海道から島根。長旅でしたが、普段オンラインで交流している方々とお会いできたため、とても実りのある大会でした(観光もしました)。

大会の様子について、わたしの参加した部分が中心にはなりますが、少し振り返りたいと思います。

よろしければ最後までお読みください。

一日目


研修基礎講座(作業評価の基本:観察のポイントから支援への活用まで)

大会初日は、作業療法士である金川善衛先生の研修基礎講座に運営として参加しました。
金川先生はわたしがよく引用する『ゼロから始める就労支援ガイドブック』の編者であり、プレイヤーとしても、人材管理、施設運営を担う役割としてもご活躍されています。

金川先生の語り口は経営者のそれであり、とてもわかりやすいです。結論として何を言いたいのかが明確であるため(明確と容易は別物です)非常にわかりやすく、それでも深みのある講義でした。

わたしも新人育成に携わることがありますが、支援の「コツ」や「ポイント」を伝えるのはとても難しいと感じています。先生は作業評価のアセスメントの段階において、新人のうちは既存のシートに基づいて聞いていくことをおすすめされていました。これは賛否分かれるところかと思いますが、わたしは賛成です。

先生もおっしゃっていましたが、何を見るかが説明できなければそれに意味はありません。新人のうちは、人・作業・環境のダイナミックな相互作用に圧倒され、本来見なければいけないものを見落としてしまうことは十分あり得ます。そんなとき、まずはマニュアルに沿って見たり聞いたりすることは大切だと感じます。

わたしは精神保健福祉士なので、作業療法の視点から見る支援のポイントはとても新鮮で参考になりました。

演題発表

基調講演は大会長である林輝男先生のお話しでしたが、わたしは自分の発表があったため聞くことができませんでした(とても残念)。

わたしの発表は、IPSモデルに基づいた個別支援の事例をお伝えしました。個別事例のため詳細の記載は避けますが、聴者の方からは「泣きそうになりました、こんな支援者がいたらよかった」と感想をいただき、大変うれしかったです。

これは、わたし自身の評価ではないと思っています。どんな支援者であってもクライアントに思いを馳せ、興味を持ち、ともに伴走する支援をすれば、希望が生まれ、クライアントが自らの人生をより良くしていくことができるのだと思います。


夜の懇親会では、普段学術論文を読ませていただいている高名な先生方、松為塾でお世話になっている松為信雄先生、新しくお会いした素敵な支援者の皆さんと楽しい時間を過ごさせていただきました。


二日目


学会企画ワークショップ(米国における自己決定支援に基づく就労移行の実際)

2日目の朝は、サンフランシスコ州立大学の萩原真由美先生と高知大学の山口明乙香先生による話題提供を拝聴しました。
自己決定については、非常に難しいところがあると思います。それでも、米国と日本の共通点は、どんな障がいのある人でも自己決定をすることができるという基本視点に基づいているということでした。
萩原先生による自己決定と意志決定の違いの説明はわかりやすく、目から鱗でした。意志決定は自己決定のスキルの1つであるというコンセンサスは、日本でももっと広まってほしいと感じました。出版される書籍や、自己決定尺度の開発が楽しみです。

大会企画シンポジウム①(効果的な就労支援の実装・普及の取り組みと未来戦略)

国立精研の山口創生さん、東京大学の近藤武夫先生、東邦大学の内野敬先生がそれぞれご自身の行われている実践について報告され、厚生労働省福岡労働局長の小野寺徳子さんが指定発言者としておられました。お三方の実践(IPS、超短時間雇用、若者支援とIPS)はどれも根拠に基づいたものですが、国内での広がりは限定的です。どれも非常に魅力的でエビデンスに基づいており、文句のつけようがないのですが、財政の関係や国の理解が追い付いていないように感じます。今後、これらの取り組みが国の施策にどう組み込まれていくか、支援のスタンダードになるよう、わたし自身も頑張らねばと思いました。

大会企画ワークショップ④(IPSってどうやってやるんですか?)

西川病院の原敬さんが企画したもので、わたしも登壇させていただきました。会場は満員御礼。
事例提供をもとに、登壇者で話をし、質問を受け付けました。質問から見えてきたのは、IPSの難しさはどうしても利益や組織の理解の話になってしまうことで、なんだかもどかしい思いがあります。わたしは運良く組織自体がIPSを推進している団体で活動していますが、支援者一人がいくら頑張っても組織の理解がなければ効果的な支援はできないと感じます。

ただ、まずIPSを意識して一人のクライアントに向き合ってほしいとも思います。原則全部やらなければIPSではない、エビデンスが認められないという意見もあるかもしれませんが、わたしとしては現場レベルでまず就職の可否をジャッジせず、就職したいと本人が言えばあの手この手で叶えるためのお手伝いをすること。それをやってみてほしいと思っています。

もしかしたら、組織の中ではとやかく言われるかもしれません。そのためにJIPSA(日本IPSアソシエーション)のメンバーがいます。ワークショップで見た通り皆さんとても気さくで良い人です(笑)心が折れそうになったら、相談していただければと思います。


まとめ

今回の学会は、林輝男先生が大会長を務められたこともあり、IPS職の非常に強いものであったと感じます。
IPSと本人中心支援、自己決定支援は共通点が多いです。障害者権利条約のスローガンである「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」は、日本においていまだに達成されているとは言い難い状況です。まずは職業リハビリテーションの中から、本人中心が当たり前になる支援が展開されることを願っています。

最後に脱線ですが、島根は自然豊かでとてものどかなよい街でした。人との距離感もちょうどよく、街を歩くのがとても楽しかったです。札幌にはない多くの貴重な経験をさせていただきました。

大会実行委員長の青山貴彦さんをはじめ、運営に携わられた方々、本当にどうもありがとうございました。

#日本職業リハビリテーション学会





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?