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小説的ななにか

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小説といいますか、自作のSSをまとめてみました。感想の他にもこんなの読んでみたいなどありましたら教えてください。
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記事一覧

一握の欠片

 何でも「好きです」って答えて
 何でも「やれます」って答えて
 結局集めたものは、残ったものは「NO」と言えば壊れて消えていくものと「YES」しか言えない僕だけだった。

 何でも「好きです」って、「やれます」って答えていた時、皆からの僕の評価は『良い人』だった。少なくとも僕はそう思っていた。皆そう言っていたから。そうやって誰からも好かれて頼られる自分は好きだった。
 だから『嫌い』を『好き』に

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貴方を想う ーSide・Dー

角田文人様から承った「天使と悪魔」というお題から書いております。

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ーSide・Dー

 地球には元々闇しかなかった。

 俺は世界が変わっていくのを一人で眺めていた。

 雨が止み大地が出来た頃、俺は始めて俺以外の存在を見た。

 彼は眩いものを身にまとい俺を西の端へと追いやった。

 己の天下だった世界に突如現れた者に俺は怒りを覚えるわ

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貴方を想う ーSide・Aー

角田文人様から承った「天使と悪魔」というお題から書いております。

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ー Side・A ー

 もうすぐあの時間がやってくる。
 
 彼の姿を見られる時間が。

 私は昼を司る者。

 彼は夜を司る者。

 私たちはけして交わることのない存在。

 それでも私は彼に会える、夜明けと夕暮を一日の糧にしていた。

 目覚めの後と眠りの前にしか出会

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天使と悪魔

角田文人様から承った「天使と悪魔」というお題から書いております。
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むかしむかし、ある屋敷に古い鏡がありました。

その鏡はそこに写った人の心を色で写す不思議な鏡でした。屋敷の主人は色々な人をその鏡の前に立たせました。

『欲望』

『感謝』

『嫉妬』

『好奇心』

『憎悪』

いろいろな人を見てきた鏡はある日、自分の持ち主である屋敷の主

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初恋の瞬間

なさざきむつろ様から承った「初恋の瞬間」というお題から書いております。
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「スキだ」

 と言われて、悪い人でもなさそうだし、顔も結構好みだったから、

「友達からでいいなら」

 と言って始まった不思議な関係。手をつないで帰るし、日曜は2人ででかけたりもする。強いて言うなら、照れた表情で「スキだよ」と頭をポンポンとされるくらいで、それ以上は

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月に行きたかった猫

プランニングにゃろ様から承った「月に行きたかった猫」というお題から書いております。

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 私は猫である。

 名前はまだない。……というと、偉大な猫に怒られそうなので、名前は……「タマ」にしよう。即興で考えたにしては分かりやすい名だ、うん。

 ところで、「月」というものを知っているだろうか?
 夜の空にぷかりと浮いている黄色いあれだ。

 なぜ

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冬から春へ

冬から春へ

2月の終わりから紅梅が、福寿草が、クロッカスが、徐々に春の訪れを告げ始め、その度に雨や雪が降った。

「寒の戻りだ」と皆は困っていたようだったけれど、私にはご褒美の様に感じられた。
雪も雨もどこか優しくて、そして少しだけ温かかったから。

梅の散る先を眺めると桜が少し咲いていた。
暖かくなったなと思っていたらまた雨が降った。
「桜が満開じゃなくてよかった」
と誰かが言ったけれど、私は桜

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二度と叶わぬ願い

  きっと、この書は歴史という大きな波にかき消される泡沫のようなものになるだろう。だが、いや、だからこそ、ここに記そう。自分が見てきたものを。
 私の仕える主は後に『伊達政宗』と呼ばれるようになる少年だ。
 彼は、後の世ではとても人気者になるらしいが、私が話すのはそんな輝かしい話ではない。

 政宗様は自分を産んだ母君と仲が良くなかった。もっと正確に言えば、母親君が自分の腹を痛めて生んだ子を愛せな

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雪姫の舞い

 外に出ると、雪が舞っていた。
 空は青空で、太陽の光が雪を光の粒のように輝かせていて、急がなくてはいけないのも忘れて、私はその光景を何度も瞬きをしながら、眺めていた。
 それこそ、写真を撮るように、シャッターを切るように、目に焼き付けたかったのだ。
 暫くして我に返った私は歩き出す。けして足跡を残さない雪と一緒に。

「そういえば……初雪をゲットできたら願い事が叶うと行ったのは誰なんだろう」

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逸る気持ち

 生ぬるいコーヒーを胃に流し込み私は溜息をついた。

 もう何杯目だろう。

 数えるのも嫌になるが片手では収まりきらないほどの数であることだけは事実だ。

 おかわりのコーヒーを持ってくる店員の笑顔に怒気が感じられる。

 そりゃそうだ。

 もう何時間もコーヒー(おかわり自由)だけで粘られては良い顔をしろという方が無理な話だろう。

 でもそれは私のせいではない。私はただ人を待っているだけなの

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不意打ち

「今日暇?」

 寝起きにかかってきた電話は彼からの物だった。

「暇だけどどうしたの?」

「良かった……」

 その言葉のすぐ後にチャイムが鳴って彼の言葉をかき消した。

「ごめん、誰か来たみたい。また後でかけ直すね」

 電話を切って、慌てて扉を開けると其処にいたのは、スーツ姿の彼その人だった。

「どうしたの!?」

「久しぶりに会いたくなってさ、迷惑だった?」

「ううん。でも仕事は?」

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ある災難な日

 何でこんなことになってるんだろう。

 5分前まではいつも通りダラダラとファション雑誌を眺めて今年の流行の服とかチェックしながら店番をしてたのに…

「…ご用件は何でしょうか?」

「金を出せ」

 そりゃそうだ。

 店員にナイフ突きつけて言うことと言ったらそれしかない。

 まあ、正当性もあるし一人で出来た度胸に+5点。

「なんでこの店なんでしょうか?」

「通りかかったからだ」

 どう

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リュックの持ち主

「私、入らない」
 お化け屋敷の前で、私は立ち止まり、首を横に振った。

 友人たち3・4人で来た遊園地。子供が楽しそうに走って行ったのをなんとなく追いかけて見つけたお化け屋敷。

 友人たちは首をかしげながら、

「何で?行こうよ。あんた怖いの駄目だっけ?」

 等と言って嫌がる私を半ば強引に私を巻き込んで友人たちはお化け屋敷へと入った。

 子供だましの仕掛けが怖い訳じゃなかったけど、私は最後

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疑問に思うこと

 今年の7月7日は雨だった。

 いや、正確に言うなら「今年も」だろう

 去年も、その前の年も雨だった。

 つまり彼女は3年連続で彼氏に会う機会を潰されたことになる。

「確かに我慢できない時間じゃない、時間じゃないよ。でも・・・でもね」

 機織り場の昼休み。

 こと座の星姫こと織姫は幼なじみである、かんむり座の星姫、りゅう座の星姫と食事を取りながら愚痴をこぼしていた。

「今年は頑張って

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