天使と悪魔

角田文人様から承った「天使と悪魔」というお題から書いております。
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むかしむかし、ある屋敷に古い鏡がありました。

その鏡はそこに写った人の心を色で写す不思議な鏡でした。屋敷の主人は色々な人をその鏡の前に立たせました。

『欲望』

『感謝』

『嫉妬』

『好奇心』

『憎悪』

いろいろな人を見てきた鏡はある日、自分の持ち主である屋敷の主人に尋ねました。

「ご主人様、どうして、私の前に貴方は立たないのですか?」

そう、鏡は1度も自分の持ち主を、主人の『色』を見たことがありませんでした。しかし、主人の声はこう言いました。

「私など見ても面白くないよ。さぁ、後で花を持ってこさせよう。たまには綺麗な物をみたいだろう」

鏡は花など見たくありませんでした。鏡は主人を、主人の『色』を見たくて仕方がありませんでした。


ある夜、鏡の上から男と女の声がしました。

「これが、噂の鏡……ねぇ」

「本当にこの鏡なの?またガセじゃないでしょうね」

 鏡には何を言っているのかわかりません。

「まあ、試してみようじゃないか」

 男はそう言って、鏡に言いました。

「こんばんは、君は君のご主人様が何色か知りたくないかい?」

「見たいです!ご主人様の色だけわからないのです。でもそんなことをご主人様が許すでしょうか……?」

「大丈夫よ。あなたのご主人様が許さなくても神様が許すわ」

 そう答える鏡の前に2人は立ちました。

「色がない……」

 鏡は驚きました。2人にはいつも見えるはずの色がないのです。

「さて、ご主人様のところへ行こうか」

 男にふわっと持ち上げられ鏡はご主人様の寝室へ向かいました。


 ご主人様はベッドで眠っているようでした。男はご主人様の顔がよく見える位置に鏡を置きました。

「!?」

 鏡は何も言いませんでした。いえ、言えませんでした。ご主人様の色は虹色だったのです。色々な気持ちが混ざり合って汚い虹色になっていたのです。

 そんな鏡に女が声をかけます。

「これがあなたのご主人様の心。つまらないでしょう?で、相談なんだけど、私たちの主人に鞍替えする気はない?」

「え……」

 鏡が戸惑っていると、男性が説明してくれました。

 自分たちは天国と地獄の狭間にある冥界というところでそれぞれの世界への道案内をしている天使と悪魔であること。

 そして、鏡をその冥界に持ち帰り、やってくる者達の裁きを手伝って欲しいこと。

 鏡は考えました。考えて考えて、最後に自分のご主人様を見ました。そして、

「行きます」

と答えました。


その後、冥界では天使と悪魔の羽を片翼づつつけたアンティークの鏡が置かれ、人々の善行、悪行を裁いているとかいないとか。

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お題小説第3弾「天使と悪魔」です。

『天使と悪魔』というお題でしたが、メインは『鏡』という不思議なお話になりました。

お気に召さなかったらすみません。


さて、ここからは前回同様募集になります。

実験的に見切り発車で始めた企画ですが、お題募集しております。

単語・短文・絵・写真・音楽・動画等々お題はなんでも結構です。

単語や短文はそのままコメントに書いて頂き、その他はURLを貼っていただけば見に行きますので、もし、良かったらよろしくお願いします。

最後になりましたが、角田文人様お題提供ありがとうございました。

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