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完成品への憧れ

鏡にいる私は美しい紅化粧で飾られている

幼い頃の私は好奇心旺盛だった。アリ一匹にしても、足を一本ちぎったり、虫眼鏡で光を集めたり、思い切り踏み潰したりした。人体に興味を持つのは至って自然だった。きっかけは思いつきで親指の爪を剥がしたことからだろう。次第にエスカレートし、両手で一桁しか数えられなくなるまでなった。私にとって、欠けた部分がある生き物は皆平等に輝いて見えた。実験と称して死刑囚で作ったアートは大作だった。名付けるとすれば二人一脚だろう。しかし名付ける前に奴らは舌を噛んで死んでいった。作品は完成しなかった。もしも神がいるのなら、壊れない精神を持った人間を望む。誰一人として私に同じ意見の者はいなかった。私の創作意欲のみ高まり続けた。私は思い立ち鏡の前に立つ。ナイフを手に取る。首元から出る血潮に興奮を覚える。連動するように血潮が応える。自身が作品となる過程を見届けた。

私はまた完成した作品を見ることが叶わなかった

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