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ディテール

パレットの上で色とりどりな光が黒く反射してくる。天気の悪い日は誰になんと言われようと、自室に籠りきりで作品を作り上げる。勝手に決めたルールだったが、私にはよく馴染んだ。梅雨、溜め込んできた作品を一斉に賞レースに出したら、ひとつふたつ当たった。そこからというもの、大変奇妙な絵描きがいるとして1日中カメラに追われた事もあった。しかしカメラに映ったのは、私の部屋のドアと作品を抱えた私だけだった。部屋にカメラが無いと自然とそうなる。
今日生み出したモノを眺める。何か足りない。画竜点睛を欠く訳でもなく何か足りない。
目を凝らす。何か足りない。
目を凝らす。何か足りない。
目を凝らす。何も見えない。
何も見えなかった。何が足りない。考えるほど見えなくなってゆく。やがて雲も見えなくなり藍色に染まる。

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