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「天皇を元首に」という自民党の憲法草案は危うい

              図像:「天皇家の紋章」(Wikipediaより)

 一昨日、2月3日は祭日「天皇誕生日」でした。その天皇の地位を自民党の「日本国憲法改正草案」では大きく変えようとしています。
 そのことについて少し考えてみました。

 「憲法改正」で「自民党が『変えたい』4つのこと」のうち「国会や内閣の緊急事態への対応を強化」と「『自衛隊』の明記と『自衛の措置』の言及」が「いかに剣呑か」は、すでにnoteに記したところです。

 残り「2つ」は「参議院の合区解消」と「教育環境の充実」だと言います。が、これらは憲法とは無関係、法律の整備で対応できます。それを「憲法に明記する」というのは「あざとい一種の目くらまし」で、本当の目的はほかにあるのだと考えるほかありません。

 そこで自民党の「憲法改正草案」を読み直すと、彼らが「本気で変えたい」のは「天皇の扱い」と「国民の権利及び義務(=基本的人権をめぐる条文)」だということに改めて気づかされます。

 まず、現行憲法の「第一章 天皇」の条文はつぎのとおりです
 「第一条 天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」

 それに対して自民党の「憲法改正草案」における(天皇)は、
 「第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」となっています。

 ここでいう「元首」とは一般に、
 「① 行政府の長として対外的な代表権を持つ存在、② 行政府の長であるか否かを問わず、単に対外的な代表権を持つ存在」
 だとされます。

 そこで「大日本帝國憲法(明治憲法)」を参照すると、「天皇」は「第一條」で「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」と「万世一系」を強調し「統治権を明文化」した上で、つぎのように、その属性と権能の細部が記されています。

 「天皇は男系によって継承されること、神聖にして侵すべからざる存在であること、元首にして統治権を総覧すること、帝國議会の協賛を以て立法権を行使すること、法律の裁可・公布・執行を命じること、帝國議会を招集し衆議院の解散を命じること、緊急の場合には法律に代わる勅令を発すること、行政に従事する文武の官僚を任免すること、陸海軍を統帥すること、宣戦を布告し、条約を締結すること、戒厳令を宣告すること、爵位・勲章などの栄典を授与すること、大赦・特赦・減刑・復権を命じること、摂政を置くこと」

 実に驚くほど巨大な権能が天皇に托されていたことになります。

 これほどの大権の詳細な記述はないものの「改正憲法草案」で「天皇を元首とする」ことは第二次大戦後の「象徴天皇制とは別物」の「天皇制の誕生」であることは否定できないでしょう。

 そのうえで「国民の権利と義務(=基本的人権をめぐる条文)」を参照すると、「元首としての天皇」の誕生と裏腹の関係であるかのように、それを制約する規定が新たに設けられようとしています。

 そこで近い将来、「国民主権と基本的人権」に関しても、改めて考察結果をお知らせすることにします。

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