90. 山水画のような「結願の寺」大窪寺の風景
写真:大窪寺山門(撮影筆者)
京都の街での超ミニ巡礼のあと、四国88か所の「お遍路」を試みようと徳島に行った。
第一札所の霊山寺(りょうぜんじ)の駐車場に自動車を止める。と、案内所に白衣姿の女性のマネキンが立っていた。
その面妖な俗っぽさに「はて?」と思いつつ寺の正面に回る。
古色ゆかしい仁王門をくぐる。と、緑の木立に囲まれた錦鯉の泳ぐ池の左手に多宝塔がある。
その右手の大師堂前で、先達が率いるバスで回る白衣の集団が「般若心経」を唱えていた。それを終えると、住所氏名と年月日を記したお札を収め、本堂でも同じことをする。
ここから本来は第2、第3の札所に向かって歩く。が、今回は下見ゆえ自動車で第2札所の極楽寺をめざす。
三方を山に囲まれた境内には弘法大師お手植え、樹齢1200年の杉の巨木があった。
続く第3札所の金泉寺の仁王門と観音堂は鮮やかな朱色だ。
その一角に弘法大師が掘り当てたという「黄金の井戸」がある。どこか俗っぽい印象に少し心身が萎えた。
で、向きを変えて香川県にある第88番の大窪寺(おおくぼじ)をめざす。
2時間余のドライブの後に着くと、陽が西に傾いていた。が、深山に抱かれた濃緑の屋根の仁王門の姿が美しい。その先の本堂は山水画に描かれたような岩山を背後に控えていた。
人気のない境内の散歩が快い。金泉寺の朱と金に萎えた心身に爽やかさが蘇る。
そんな結願の場所だからこそ、同行二人、弘法大師と遍路道を歩いた人の疲れが癒されるのだろう。
そして遍路以前の生活の汚濁が浄化される実感が得られるのだろう。
見ると西の空が滅法きれいな夕陽に染まっていた。
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