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岡本太郎展を観て 芸術について思索する

この連休中の一日を使って、次男と岡本太郎展を観にいってきました。 

個人的にはいきたいなと思っていたのですが、ひとりではなかなか歩が進まず、ちょっと忘れかけていた ところでした。
そんななか、次男が先週の末に、岡本太郎展を観にいきたい、といい出しました。

きっかけ

きっかけは、学校の担任の先生が、岡本太郎展にいって感銘を受けたらしく、ホームルームで話をしていたらしいです。
それを聞いていて、じゃあ観にいこうか、と思った、と次男はいっていました。
小理屈野郎もいきたかったので、これは渡りに船状態 (笑)。じゃあ二人でいこう、ということになりました。
いく日をすり合わせ、サイトを観て準備をすることとしました。

用意

今回は久しぶりの美術館いでしたので、ちゃんと準備をしていく ことにしました。

事前予約チケット

展覧会のサイトを観ていると、どうやら事前予約チケットを買っているとスムーズに入れる、ということらしかったので、次男と時間をすり合わせた上で、チケットを購入しました。
中学生以下は無料 、ということで小理屈野郎の分だけのチケットを購入しました。

特集サイトのチェック

さらに、特集サイトのチェック を行いました。
岡本太郎氏の作品は基本的には現代芸術の範疇に入るので、個人的には鑑賞には「補助線」が欲しい ところです。
まずは、特集サイトをチェックして、岡本氏の生涯の概観や、作品の変化の様子 などを大まかに捉えておきました。

音声ガイドについて

今回は、音声ガイドでのツアーが可能 、ということでした。
現地で借りる方法と、前もってスマホにソフトをダウンロードし、コンテンツを購入しておいて、実際に展覧会を観る時に、どこで、何番のトラックを聴けば良いか、という指示が出ているようなのでそれに合わせて聴いていけば良い、というシステムです。
今回は、ナビゲーター(ナレーター)は阿部サダヲ氏 で、なかなか気合いが入っているな、と思いました。
音声ガイドは後で思わぬ力を発揮してくれる こととなりました。

行き帰りが結構大変

まずは自宅の最寄り駅から梅田へいきました。
美術館のアクセスに関わるホームページでは、大阪駅から、地下鉄で御堂筋線であれば淀屋橋、谷町線であればは天満橋までいき、京阪中之島線に乗り換え。中之島線の渡辺橋、という駅で降りて少し歩くとつくようです。
別の行き方としては、中之島にあるホテルまでシャトルバスを使わせてもらって、そこから少々歩く、という方法がありました。
さらに、市バスを使って(この頃は大阪シティーバスと言うらしいです)、いく方法(3つ先の田簑橋というバス停までいく)がありました。バス停から美術館までは非常に近いようでしたので、最後の方法をとることにしました。
梅田までは非常に順調にいました。バス停でバスを30分以上待ちましたが、バスは来ません 。さらに、バス停には今度来るバスはどこまで来ている、という表示もありません。チケットの予約時間が近づいてきたので、結局タクシーでいく ことにしました。
待ちぼうけを食らって大変でした。
無事、会場には予約時間内につくことが出来ました。
帰りは、どうしようかと思って建物のそばに出ると空車のタクシーがすーっときたのでそれに乗って梅田まで帰りました。
新しい美術館ですが、ちょっとアクセスが悪かった です。

展覧会を観ていく

鑑賞のあらましのあらましを抑える

さて、美術館に入って、まずしたことは、展覧会の展示品目のリストを手元に持つこと でした。
そしてその後は、パネルの説明などをしっかりと読みながら絵を鑑賞していく ことにしました。
まずは展覧会の趣旨を書いたパネルがありましたので、それを熟読することにしました。

そのなかで特に重要と思われたキーワードは「対極主義 」というものでした。
それは、

「世の中に存在する対立や矛盾を、調和させるのではなくむしろ協調し、その不協和音のなかから新たな創造を生み出す、という考え方」

とのことでした。

また、そのパネルでは

「本当の調和とは、お互いに譲り合うものではなく、意見を公平にぶつけ合うこと、また対決とは、ぶつけ合った上でお互いの意見を活かしていくこと」

と岡本氏は考えていた、とありました。

物事の神髄を完全に捉えている と納得しました。確かに対立や矛盾を調和させることは出来ない と個人的には考えていて、それらは物事の表裏、という関係の場合が非常に多い と観ています。その表裏を協調して表現するのが岡本氏の芸術に対するスタンスであるのではないか と考えました。

また、以下の言葉には非常に惹かれました。

今日の芸術はうまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
心地よくあってはいけない

この言葉は対極主義を非常にうまく表している言葉 だと理解しました。
少しだけ岡本太郎の世界を理解できたつもりになり、展覧会を観ていくことにしました。

音声ガイドは補助線になり得る

絵のタイトルや所蔵場所を書いているメタデータの紙の下にいくつかのものには解説がついているものがあります。そういうものをうまく使いながら作品を観ていきました。

岡本太郎氏は、両親と一緒に18歳の時に渡欧したようです。その後は単身でパリに残り芸術家を目指し始めたようです。
そこでの芸術活動に対するスタンスが、岡本太郎氏のその後の芸術活動のスタンスの基礎となったようです。
ヨーロッパにいる頃から抽象的な絵画を描き出したようです。
戦争中に日本に帰国したようですが、その後従軍し、終戦後はなんと終戦4ヶ月後から本格的な活動を行っていたようです。

戦後直後からの抽象画については、音声ガイドを参考にしながら鑑賞を進めていくとグイグイと引き込まれました。

岡本氏の芸術活動は絵画による表現だけではなく、陶芸をベースにするもの、照明、写真(写真も特に技術的にも画角の切り取り方も非常に惹かれるものがありました)、日常雑貨、近鉄バッファローズのマスコットマークなど、どんどん卑近なものにまでてを広げていきます。もちろん、その嚆矢となるのが太陽の塔、ということになるのでしょう。岡本氏の視点や興味の広さを見せつけられる 思いでした。

150点近くの作品を年代順に陳列し、その途中でちょこちょこと音声ガイドを聴きながら鑑賞しました。

音声ガイドは非常に役に立つ ものだと感心しました。今回は現代美術作品の鑑賞でしたので、来館前からなんの前知識もなく鑑賞していては、「ふーん」といっただけで終わるのは目に観てました。そういう意味で音声ガイドを使って鑑賞したのですが、鑑賞に対して「補助線」を引いてくれる感じ があって非常に愉しく鑑賞できました。
また、音声ガイドはあくまでも「補助線」 だと考えています。ですので、それ以外の解釈も出来ればさらに面白い展開になる と思いました。

特に個人的に感銘を受けたのは最初の方で展示されていた、「赤い兎 」という作品です。

館内で写真撮影は可能でしたので、写真をとってきました。

こちらには、解説がついていたのですが解説は以下のようなものでした。

はねる赤い兎というモチーフは、岡本太郎によれば、自分の胸から飛び出てきた「私の叫びであり生命の象徴であり、生命の幻影の造形」であり、また、心臓を表しているとも言われる。前年に発表した画文集には、にた構図のスケッチとともに「赤い兎/を/上げ/ま/しょう」という詩が掲載されている。父の死、対極主義の発表とめまぐるしい動きのなかで描かれた弧の作品は、芸術に生命を書る岡本の決意表明とも言え、読売新聞社主催の第一回アンデパンダン展で安部公房に高く評価された

絵メタデータの下についていたの解説です

とありました。
じゃあ、その横にある黄色いものとか、その下の「いったんもめん」みたいなひらひらしたものはなんだろう?と考え出すと、しばらくその絵の前から動けませんでした。
個人的には、赤いウサギの陰?反面?鏡像?等と考えてみましたが、そうすると下の「いったんもめん」はなんだろう、となってきます。
非常に興味深い時間を過ごすことが出来ました。

正解はない

個人的には、今まで芸術鑑賞に関する読書などもいったことがあるのですが、そこで大事なことは作品を観たり聴いたりした時の個人的な感想が重要であり、それには正解は存在し得ない (鑑賞した人の数だけの意見がある)ということでしたので、自分なりにいくつもの作品について感慨を持てた ことに非常に充実した気分になりました。
さらに音声ガイドの最後にもそのようなコメントがありました。

さすがに150点前後の作品をそれなりに真剣に観たので、2時間半以上の時間がかかりましたし、観終わった後は次男も私もヘロヘロ になっていましたが、お互いに良い時間を過ごすことが出来たね 、と大満足でした。

グッズ購入

今回は次男と私で出かけてきたので、長女、長男、家内に何かお土産を買って帰ろう と言うことになりました。
長男には岡本太郎氏のセリフ「本職?それは人生だ 」と背中にプリントされた黒いTシャツを、そして、長女にはクリアファイルとマスキングテープ、そして家内にはマグカップを。
次男はちゃっかりしていて、岡本太郎氏が、ベトナム戦争に反対した時に書いたセリフ「殺すな、 」をプリントしたTシャツ、そして次男と私で公式図録 を買いました。
結構混んでいましたが、さっと会計を終えることが出来ました。

感想戦

帰りの電車のなかでは、将棋の感想戦のように次男と今回の展覧会の感想戦 を行いました。
次男が感銘を受けたのは、私が上記で指摘した「赤い兎 」の絵と、「樹霊II 」というFRP製の立体作品だったとのこと。
「樹霊II」は公式図録に載っていましたので、写真を載せておきますね。

確かに内部はグラデーションになっているように見えますね

「赤い兎」については、やはり黄色い物体と「いったんもめん」が何を示しているか 、ということでかなり盛り上がりました。解説という「補助線」をのけながら感想を述べ合うも二人では結論が出ず 。けど、面白い話が出来たと大盛り上がりでした。
また、「樹霊II」については次男は非常に丹念に鑑賞していたらしく内部にも色彩が施されていて、そのグラデーションがきれいだった と話してくれました。私も鑑賞はしていたのですが、ほぼ最後に近く、かなりヘロヘロでそこまで観察していませんでした。
公式図録を観ながら次男の説明を受け、ふむふむ、と納得していました。

感想戦まで出来たので二人とも大満足 でした。

今度、どんな展覧会を観にいくか、というのが目下の二人の間での議題の一つになりました。

まとめ

次男と岡本太郎の展覧会に行ってきました。
事前のネット上のちょっとした学習と、現場での音声ガイドを利用することによって、作品群をより深く鑑賞することが出来ました。
また、ひとりではなく複数人(二人)でいったことで、鑑賞後の感想戦を行うことが出来ました。
現代芸術というとかなりとっつきにくい印象があると思いますが、ある程度の下調べと、現場での音声ガイドという「補助線」を利用することによって思った以上に楽しむことが出来ました。
今後も次男と一緒に各地の展覧会を訪問していきたいなと考えています。


いやあ、こんなに楽しめるとは思っていませんでした
次男もおなじことを言っていました。
事前の準備 、しょうも無さそうですが、いかに大事か、ということですね。そして現場の補助線たる音声ガイド 、これもあるところは必ず活用していこうと思いました。

また、二人でどこかの展覧会にいったらレポートしたいと思っています。

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