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歌丸師匠100%

「言葉で笑わせてこそ芸ですよ」
という言葉を生前の歌丸師匠が仰っていた意味がようやくわかってきた。

「裸でお盆を持って何が芸ですか。言葉で笑わせてこそ芸ですよ。」
と何かのインタビューで歌丸師匠が仰っていたのを見たことがある。

当時は「頭の硬い人だなぁ」という印象を持ってしまった。
裸でお盆を持って笑わせたって良いじゃないか。それで笑顔になる人がいるし、実際に面白いし、どこでもウケる。

歌丸師匠の仰っていた意味がわかった今でも、裸でお盆を持つ芸が芸ではないとは思わない。
否定するつもりもないし、簡単に真似できないし、楽しいし見たらきっと笑う。

ただ最近YouTubeで落語を聞いてみると、なるほど確かに面白い。というか深い。
言葉だけで情景が浮かび、同じ声でも口調や声色で人物の違いが明確にわかる。
話の展開が次々と気になり、興味津々で聞き入ってしまう。

言葉だけでここまで広く深い世界を表現できるのかと思うと、あの時に歌丸師匠が裸でお盆を持つ芸を否定したくなった気持ちもわからなくもない。

接客業をする中で、その言葉や話し方の大事さと難しさがすごく身に沁みる。
専門用語は簡単な単語に言い換え、
わかりやすい文章として組み上げて、
伝わりやすい速度で、
相手の反応を見ながら話さなくてはならない。

しかもそれは相手によって変化させる必要もある。

テンプレートで決まった文章を同じように繰り返し話すのはとても楽だが、
どう言い換えたら伝わるかな?
これを先に説明してから次にこれを話そうかな?
相手の表情や反応はどうかな?
と考えながらやっていくのはとても難しい。
でも、楽しい。

伝わった時のピタッとした感触は一点の曇りもなく透き通った気持ちになる。
言葉にはとてもエネルギーがあるのだと改めて思う。

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