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弦の太さでかわること

こんにちは。
KID GUITAR OWNER’S SALON SHIBUYAの寺田です。

今回はギター系のおはなしです。
ひとつよろしくお付き合いくださいませ。

早速ですが、皆さま、弦の太さって気にしたことありますでしょうか。

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ギター玄人の方はきっと「自分はいつもこれだよ~!」にたどり着いているかと思いますが、そもそも弦の太さって大事なの?なにか変わるの?え、弦の太さに種類なんてあるんだ。という方もたくさんいらっしゃるかと思います。

今回は、弦の太さの違いが楽器に与える影響をざっくりとお伝えいたします。

◆ ◇ ◆

弦の太さ=ゲージと呼びます

一般的に、弦の太さのことを「ゲージ」と呼びます。

よく耳にするのは「ライトゲージ」とか「エクストラライトゲージ」とかでしょうか。「ヘビーゲージ」などは、長渕剛氏の曲名で使われていたりもしますね。

メーカー各社様々なゲージの弦を発売しており、同じ呼び名のゲージでも太さが微妙に違ったり…なんてことも多々あるので、個人的にゲージは実際の数字で覚えることをお勧めします。

ゲージの見方について

ギター弦パッケージ-100

弦のパッケージや商品説明でよく見かけるこの数字。
一体なんのことやら…と思われるかもしれませんが、これこそが弦の太さを表しています。

ベース弦パッケージ-100

多くの場合は、1弦と6弦(ベースは4弦)の太さを抜き取り表記します。
なので、写真1枚目は「10-46」、写真2枚目のベース弦は「50-105」となります。

読み方は「イチゼロヨンロク」や「ゴーゼロイチマルゴ」などのような数字読みや、「ジュウからヨンジュウロク」「ゴジュウのヒャクゴ」などです。(もっと玄人っぽい呼び方があれば教えてください!)

◆ ◇ ◆

ゲージによってかわること ~演奏面~

さて、そんな弦の太さですが、気になる演奏面にはどんな影響をもたらすのでしょうか。大きく変わるポイントをいくつか見てみましょう。

・押さえやすさ

特に大きく変わるのが、押弦(おうげん)のしやすさです。
一般的に、細いゲージの方が押さえやすいとされており、チョーキングなども細い弦の方が楽な場合が多いです。(これは弦の張力の関係です。)
最近ギターをはじめたばかり、まだギターに慣れていない…なんて方は、細い弦からスタートしてみるのも良いかもしれません。

・音色

音の太さやハリ、といった面で、弦のゲージは音色にも影響を与えます。
パンチ感や存在感に物足りなさを感じた際は、一度太めのゲージをお試しください。それだけでガラッとイメージが変わることも。
押さえやすさとトレードオフな面もありますが、個人的な感覚では太いゲージの方がガッツが出て音の輪郭が明確になる印象です。

・音量

特にアコースティックギターやクラシックギターに於いてですが、弦のゲージは音量に直結する場合が多々あります。
やや太め(もしくは硬め)のゲージの方が、生音での音量感は大きくなります。


さてさて、ざっくり演奏面の変化をお話ししてきましたが、ここからは少し踏み込んで、楽器の状態に目を向けてみましょう。
意外と変わるとこ多いんだよ~、というリペアマンの目線です。

◆ ◇ ◆

ゲージによってかわること ~楽器の状態~


・ネックの状態

ネック-100

弦の太さが変わると、ネックの状態も変わってきます。
なぜかというと、弦の太さによって張力が変わってくるからです。

張力は、弦長・チューニング・弦の質量で決まってきます。
つまり、同じギターで同じチューニングであれば、弦の太さ(=質量)が変わると張力も変わってくる、ということです。

例えば、同じエレキギターの場合、09-42と10-46で張力の差はおよそ8kg
それだけ弦がネックを引っ張る力が変わるので、ネックの反り具合も変わってくるのです。

ネックの反り具合はトラスロッドで調整できることがほとんどなので、弦のゲージを変える際などはギターの調整も併せて行ってあげてください。


・サドルの位置

サドル位置-100

いわゆるオクターブ調整です。弦の太さにより、サドルの適正な位置が変わってきます。

ギターは弦長に合わせて各音階のフレットが打たれていますが、フレットと弦の間に距離があるため、押弦の際に弦が引っ張られることで、本来の音程よりも少し高くなってしまう、という現象が起きます。

オクターブチューニングの説明図

これを補正するため、サドルの位置を動かして弦長そのものを変えるのが、オクターブ調整です。

弦の太さによって補正の程度が変わってくるため、これもゲージに合わせた調整が必要な部分です。


・トレモロの状態

トレモロ1-100

こちらも弦の張力による影響が顕著な箇所です。
楽器の仕様によっては気にしなくてもよい部分ですが、写真のようにトレモロと呼ばれる機構をもつギターは特に注意が必要です。
中でも、フローティング(宙ぶらりん)状態でセッティングされているものは状態が大きく変わります。

トレモロ2-100

トレモロが搭載されているギターの多くは、下の写真のようにバネの力で弦の張力と均衡を保つようにセッティングされています。

トレモロスプリング-100

つまり、弦のゲージが変わると張力も変わるため、結果的にトレモロが傾いたりしてしまうということです。
(よくあるのは、弦を張り替えたらトレモロが浮き上がってきてしまった…!といったご相談ですが、気付かずに元と違う太さの弦を張ってしまうとそうなります。)


・ナット溝の幅

元々よりも太いゲージに変える際には、ナット溝の拡張が必要な場合もあります。

ナット-100

溝を拡げるだけ、なのですが、もし作業が必要となった場合はぜひプロに任せてください。
ドライバー等で出来る調整とは異なり「素材を削る」という作業になるので、やり過ぎると戻れません。

なにより、ナット溝の切り方で開放弦の響きがずいぶんと変わるので、正解やノウハウを知っている技術者にお任せしてほしいところです。

◆ ◇ ◆

まとめ

ゲージの違いによる影響を色々とご紹介してきましたが、「じゃあどのゲージが一番良いの?」となると、楽器との相性や演奏ジャンル、目的によって正解は様々だったりします。
正解がたくさんある世界なので、色々なゲージを試していただけば、ご自身に合ったものがきっと見つかるはずです。

ただ一つ確かなことは、ゲージを変える際は楽器の調整もしてあげた方が良いということ。

今回ご紹介した調整箇所は、楽器店やリペアショップなどでも基本的なメンテナンスメニューとして掲げられている場合が多々あります。
ご自身の楽器の状態が弦のゲージと合っているかわからない…という方は、ぜひ一度お近くの楽器店などにご相談いただければと思います。

もちろん、KID GUITAR OWNER’S SALON SHIBUYAでアンプの試奏がてら、ついでの点検も可能ですので、お気軽にご来場、ご相談ください。

◆ ◇ ◆

おまけ

よくある弦のゲージ【エレキギター】

・09-42
いわゆるライトゲージと呼ばれる太さです。その中でもやや細めのゲージ。
工場出荷時の標準ゲージとしているメーカーさんも多く、後述の10-46と併せてかなり一般的な太さです。

・10-46
こちらも一般にライトゲージと呼ばれる太さです。
レギュラーライトなどと呼ばれることもあり、それだけに「迷ったらこのゲージ」という方もいらっしゃったりします。

・09-46
上記二種類の中間のゲージです。1~3弦は09-42の細さ、4~6弦は10-46の太さになっているものがほとんどです。
高音弦側は押さえやすく、低音弦側は太さを残しつつ、といった良いとこどりのゲージです。


よくある弦のゲージ【アコースティックギター】

・12-53 / 11-52
アコギの中ではライトゲージと呼ばれることの多い太さです。
エレキと比較し、アコギは全体的に弦が太く、3弦が巻き弦となっているのが特徴です。弦の素材もエレキとは異なる場合がほとんどです。

・10-47 / 10-50
エクストラライトゲージと呼ばれる太さです。
ライトゲージよりも細く、エレキギターのライトゲージに近いため、アコギ初心者の方やエレキとの持ち替えが多い方などに好まれます。


よくある弦のゲージ【エレキベース】

・45-100 / 45-105
ベースは○○ゲージ、と呼ぶことは少ないのですが、各メーカーが出荷標準としていることの多い、特に一般的な太さです。

・50-105
上記のゲージよりも1,2弦がやや太いゲージです。より音の太さを求めるプレイヤーなどに好まれます。

◆ ◇ ◆

たかが弦、されど弦。なかなか奥深いですよ。
皆さまもぜひ、色々な太さの弦をお試しくださいね。

(おわり)


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