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【週刊プラグインレビュー】denise / The Sweeper

今月はdeniseから発売されているダイナミックレゾナンスフィルター「The Sweeper」をレビューしていきます。

名前からは機能が想像できないのと思うので、今回はまず動画を見てからレビューを読んでいただくようお願いします。

くっそかっこよくてわかりやすいデモ動画はこちらを

詳細なウォークスルーはこちらを

オフィシャルサイトはこちらをご覧ください。


機能お分かりいただけたでしょうか。
ダイナミックレゾナンスフィルター「The Sweeper」は簡単に言えば、"音量"をもとに"フィルター"を操作するプラグインになります。

denise

今回取り上げるThe Sweeperを発売しているdenise社は「shape your sound」をキーワードに、積極的なトラックメイクに活用できるクリエイティブツールを多数開発しています。

今回は取り上げませんが、筆者はマルチバンドディストーションの「God Mode」や歪んだスラップバックディレイ専用機の「Slappy」などを愛用しています。

The Sweeperも含めてビデオを見ていただくとわかるのですが、
ただの単機能のエフェクトではなく、複合的な変化が時間経過と共に起こるエフェクトをデザインしていて、なおかつその出音はダンスミュージックのトラックメイクにフィットしているように聞こえると思います。
 これがdeniseの特徴だと思います。
(どれも面白いので興味を持ったらぜひ・・・。全部安いですし。)

概要

早速ですが、The Sweeperの機能をさらっていきます。

START and END
フィルターの開始ポイントと停止ポイントを設定する

INPUT
Sweeperに入力される信号を増減する

OUTPUT
Sweeperから出力される信号を増減する

RESONANCE
モジュレーテッド・フィルターのピークの高さを設定する

ATTACK
フィルターのアタックタイムを設定する

BIAS
ソースの音量をエフェクト処理の内部でのみ増減させる
≒ 出力される音量を変化させることなくフィルターの効き具合を増減する

RELEASE
フィルターのリリースタイムを設定する

SIDE CHAIN
フィルターをサイドチェイン信号に反応させるか否かを設定する

FILTER TYPE
HPFとLPFを切り替える

FILTER SLOPE
フィルターのスロープを変更する

FLIP
STARTとENDポイントを反転させ、モジュレーションの方向を逆転させる

以上のパラメーターやオンオフをコントロールすることで、
上記の2つの動画のサウンドは作られています。
なんか操作子は簡単な割に、カッコいい音作れてよさそうじゃないですか
???
興味、湧いてきますよね。

ATTACK / RELEASEはms表記ではないので、細かいことは気にせずガンガン直感的に使える設計になっているのもナイスです。


使い方

さて、このプラグイン特に特殊な機能や計測すべきパラメーターもないので、どんどん実践の紹介に移ります。

ディレイのスイープ

最も基本的なSweeperの使い方になります。
SideChainを使用せず、インサートしたトラックの音量を元にフィルターを開閉します。

今回はディレイの後段にSweeperが挿さっていて、パーカッションを叩いた瞬間は音量が大きいのでフィルターが大きく開きますが、残響部分は音が小さくなっていくので、そのレベルの減少とと共にフィルターも徐々に閉じていって、ディレイに対して「音量変化」と「帯域変化」という二つの効果が生まれていることがわかります。

ディレイの質自体は気に入っているのだが、残響のハイファイ感が気に入らない。実機のディレイを使っているが高域のノイズが気になるので、フィルターをかけたいが静的なEQだとこもって聞こえる。デジタルディレイにアナログディレイのような温かみを加えたい。などなど・・・。

いろんな場面で活用できるテクニックだと思います。
ディレイの前段にインサートするとディレイのかかり具合をよりダイナミックに変化させたり、無駄なローエンドをディレイに送らないようにすることもできます。

キックによるベースのスイープ

サイドチェインを使用した基本的な使い方の例になります。

ベーストラックにSweeperを挿し、SideChainにキックを入力しています。
普段はHPFが機能していないので、ベーストラックが豊かなローエンドを含んでフルレンジで鳴っていますが、キックが鳴るとHPFによってローエンドがカットされてキックとのマスキングが解消されます。

動画を見ていただくとわかりやすいですが、前半のSweeperがインアクティブの状態に比べて、後半のアクティブな状態の方がキックも抜けますし、余計なマスキングもないので、ピークを食わず、音圧的にも有利になっているように聞こえます。

コンプレッサーを使っても同じようなことが可能になりますが、
シングルバンドのコンプレッサーでは、ベースの全帯域がダッキングされてしまうので、キックを踏んだ瞬間ベースのアタックやベースラインまで見えなくなってしまいます。

ダイナミックEQでも同じようなことができますが、
SweeperであればResonanceをあげることにより、
ダッキング周辺の周波数を強調させて低域のうねりを演出することが可能ですし、Releaseをわざと遅めにコントロールすることで、楽曲全体を後ろノリに聞かせることも可能です。

Sweeper2段がけ

Mix With The Masters を見ていて衝撃を受けたのがこの使い方です。
Sweeperを2段がけして、ローエンドもハイエンドもコントロールするというIllangeloのテクニックです。

どちらもカット方向に使うのではなく、音量が大きくなるほどハイエンドは大きく、ローエンドは小さくなるという使い方が至高です。
こうすることにより動画内の音のようなロングリリースの素材のアタック部分はハイ上がりなのにも関わらず、その重心を時間経過と共に落としていくことができます。
これはすごい・・・。

Illangeloは他にも数学的・物理的な観点から素材の整理を行うことを得意としていて、それが独自のThe Weekendのサウンドにつながっていると思うのですが、特にこのテクニックには脱帽です。
こうやってハイエンドを空けていくことによって、その後入ってくるボーカルやリバーブの抜けもかなり良くなりますしね。

いくつか公開されているSweeperのテクニックを紹介したので、ここからは自分の思う「ミックスにおけるフィルター」の役割を整理しつつ、普段の作業でどうSweeperを活用しているのかを解説します。


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