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契約書の電子化とBlock chain使用による未来。あとちょっとAIについて

昨今契約書もようやく電子化が進んできているように思います。この流れは覆らず、おそらく近い将来よほどの老舗などで職場の文化として紙契約を選ばなければ、多くの場合は電子契約が主流になってくるかなと思います。

そこで、電子契約に移行するということについて問題点がないかなどの私なりの考えをまとめるとともに、更にその先の未来としてBlock chainなどの技術が法務の世界にどう関わってくるかについて考察してみようと思います。

あとちょっとAIのお話も。

契約の電子化は多分法的にも問題にならない

電子契約については、主に改ざんに対する不安と押印がなくなることについての不安が移行時に問題になってくるかなと思います。

電子化に興味のない人は読み飛ばして下さい。

①改ざんについて
紙よりも電子データの方が改ざんが容易な場合があります。チャットのコメントなどはいつでも修正が可能なため、確かに問題があると思います。しかし、電子契約を締結するために提案されているサービス、具体的にはGMO AgreeやCloud Signなどは契約締結時にタイムスタンプが押され、通常の方法では文書の内容も変えられないためほぼ気にしなくても大丈夫かなと思います。(サービスは、使っていたり大まかに把握していたりはしますが、詳細は当該企業に問い合わせて見てください。)

すごい技術的に卓越していれば改ざんは可能ですが、それは紙も同じであり改ざんのハードルが高ければそれほど気にしなくても良いかと思います。(いわゆる取っていいリスクかなと思います。)

法的には証拠能力と証明力が問題になり得るかと思いますが、民事における裁判では証拠能力が認められない可能性はよほどの例外的な場合かと思います。

また、証明力に関しては程度問題のため電子契約サービスに関して紙の文書と比べて証明力が弱いということは一般論としてはないように思います。(証明力に差が出るとすると媒体の問題ではなく内容や作成の状況によるのではないでしょうか?)

②印鑑が押してないから問題ということには理論的にはならないと思われる
印鑑がないとなんとなく不安というのもわかる気がします。ただ、理論的には決裁者が意思表示をしていれば契約は成立しうるため、別に決裁者の意思表示の表明は印鑑を使わなくても良い理屈になります。そのため、特段印鑑でないことは問題にならないかなと思います。
契約の相手方が会社の場合は、決裁者の押印かという問題がある気もしますが、そこは相手の社内統制の問題であり、権利外観法理などで契約の成立については保護されると思います。

③データの保管、判例がないなど残された問題
さて、理論的には問題なさそうですが実際に電子化するとなると、データ保管の問題が生じるかもしれません。特に電子契約対応サービスを解約する場合には、契約データを長期保管できるよう自分側で保管しなおさないといけないため方法を考えておく必要があると思います。
もう一つ、契約電子化の不安材料はそれについての判例がないことではないでしょうか。これは時間による解決を待つしかありません。ただ、電子契約がすでに現実に使われ始めていながら判例がないということは現実に問題になりづらいからとも考えられ、許容範囲の不安かなと思います。

契約は証拠としてBlock chainの技術により保存される

契約書に限りませんが、電子データを改ざんを防止した上で保管する技術としてBlock chainの右に出るものは現在ないように思われます。
実はすでに、この方式を利用してデータを証拠として保存するサービスが提供されています。

まだベータ版ですが、Ethereumと呼ばれて仮想通貨(暗号通貨)として有名な技術により証拠を保存することができます。

Ethereumを利用するため、1保存あたりに0.005単位のEthereumが必要なため重要な書類以外で利用しすぎると費用がかさみますが、内容証明郵便などについても場合によっては代替できるかもしれません。

こちらの開発は、弁護士主導のベンチャー企業によって行われています。

まだ発展途上の技術なものの、契約書に限らず重要な情報の保存に適した技術であり今後の展開が気になります。また、公証人などに頼らず手軽に誰でも確実に証拠を獲得でき、個人が自分の権利を守るにも使えると思われます。

契約や紛争処理のAIでの処理は技術的には可能なものの実務上のハードルが高い

契約に関しては自然言語解析である程度読み取りが可能であり、契約処理のルールさえ決めておけば特に大企業においては大量の契約書を円滑に処理できると思います。特に過去の膨大な裁判例に基づき「正しい」判断をすることは技術的には可能と思われます。

ただ、実際には導入のハードルが極めて高いと思います。

具体的には、教師データの用意、ルール決め、自然言語解析への対応です。

上記の方法で契約を処理するには、「正しい」判断をするために教師となるデータをを用意したり、2進数に基づくルールを設定したり、自然言語解析ツールで解析可能な方式で文書を保管したりといった現実的な処理が必要かと思われます。しかも、完全に効率的にかつルールのアップデートを続けるためには上記の仕組みを維持し可能であれば契約に関わる当事者がみな同じツールを入れて判断の基礎データを増やす必要があるように思います。

というわけで、技術的には可能なAIでの契約書処理も理想像に近づくにはまだまだ課題が山積しています(そもそもまだまだ値段が高い)。

NDAなどあまり修正の余地がないものから順次導入をすすめるのが良いと思われます。

Legal tech領域は市場が狭いかも?

まだまだ発展途上のためなんとも言えませんが、通常各企業で法務部や総務部の持つ予算はそれほど多くないと思います。そのため、システム部門を巻き込んでの生産性向上という文脈を上手く使わないとAIなどの導入はなかなか難しいように思います。

個人的にはワクワクする

個人的には、問題はありつつも技術による法務のあり方の変化はワクワクします。また、技術の向上に伴い、それに利用する情報の価値が法務についても上がっていくのではないでしょうか。

企業法務をスマートコントラクト化される時代もいつか来るかもしれません。

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