2023年6月29日

エチオピア3日目。


この日は悔しい思いをした1日だった。


まずは昼ごろに市街のSafaricomという携帯のキャリアのショップに行った。事前で得ていた情報によると、エチオピアの携帯の回線はethiotelecomというところが1社独占状態ときいていたが、他のキャリアもあって驚いた。ほんとうにSIMカードの設定がうまくいくか不安だったが、ショップの店員さんに初期設定をしてもらい、無事にネットが繋がるようになった。


SIMカードの契約が完了したことと、ここ2日間綱渡りの生活を送っていたので、この日は予定を入れず、のんびりすごすことにした。自分へのご褒美として、ハンバーガーの店で一番ボリュームのあるハンバーガーを頼んだ。半年ぐらいはハンバーガーを食べなくてもいいぐらい、ボリュームのあるものだった。このあとにこの日が生涯忘れられない悔しい想いをした日になるとはこのときは想像もしていなかった。


ジブチでもエチオピアでも、市街を散策していると「China!」、「Hello!」、「Japanese?コンニチワ!」と現地の人がたくさん声をかけてくれる。もちろん私は日本人なので「Japanese!Japanese!」とChineseではないことを伝えるくだりを何回もした笑 たとえからかわれているだけだとしても、中国人に間違われていても私自身は現地の人が私に興味を持ってくれていて嬉しかったし、「Japanese!」と言いながらもどこか現地の人と繋がれている感じがして楽しい気持ちだった。


この日、アディスアベバ市街を散策していると50歳ぐらいの男性が「君は日本人!?それとも中国人!?いまなにをしているの!?」と笑顔でフレンドリーな様子で話しかけてきてくれた。よくあることだったので、「日本人だよ!今は街をぶらついているんだ!」と伝えた。するとその男性は「おー!日本人か!JICA知ってるよ!日本に知り合いがいてね!アリガトウ、コンニチハ!」と日本について知っていると私に伝えてくれた。親近感が湧き、とても嬉しく感じながら20分ほどその男性と歩きながらエチオピアのことについてや日本のことについてお互い笑顔になりながら話した。


少しするとその男性が、「今日は女子大学の卒業式が近くにあってね!このあたりの人みんな集まってフェスティバル状態になるんだ!ほんとうに楽しいからよかったらきてみなよ!」と誘いをもらった。私自身も今日は予定を入れずのんびりしているし、まあいいか、と思い「それは楽しそうだね!行ってみたい!」と伝えその男性の誘いに乗ることにした。


500mほど歩いたところにある、カラオケボックスのパーティールームぐらいの広さの家のようなところに案内された。23,4歳ぐらいのエチオピアの伝統衣装のような服を着た女性たちが6,7名いて、案内してきた男性に席を案内され、ドリンクを頼んだ。この時間を楽しもうと思いながら女性たちと「何学部なの?」「趣味は何?」などいろんな会話をし、楽しんでいた。


そんなときにふと女性たちが「ドリンク頼んでもいい?今日は卒業式の日だったし、もしよかったらお祝いに奢ってくれない?」と私に頼んだ。断りにくい雰囲気に感じたので出費はかなり痛いがしょうがないか、と思いしぶしぶ「Yes.」と答えた。


ドリンク代が何円ぐらいになるか気にしながらも、エチオピアの人たちと踊ったりしながら楽しんでいた。私自身、資金が底をついてきていたので「お会計はいくらぐらいか教えてくれない?」と尋ねた。すると女性がレシートを持ってきてくれたが、金額に驚いた。提示された金額は190ドル。日本円で約27000円。「は?いや高すぎ高すぎ」と思わず声に出た。「途中で頼んでいたこの2本のワインのボトルが高いの」とレシートを持ってきた女性が言う。


この瞬間に「これ、ぼったくられてるのか?」と嫌な予感がした。はじめに案内してきた男性に「190ドルは高すぎるからちょっと払ってくれない?ほんとうに持ち合わせが少ないんだ。」と伝えると男性は「え、なんで?いくらなの?」と私にきいた。「190ドルだよ。」と伝えるとどこか渋そうな表情をしていた。「いや、あんたもドリンク頼んで楽しんでてんから払えよ」と伝えたい気持ちはグッと抑えた。


私の所持金ではあと90ドル分お金を下ろす必要があったので、「お金が足りないからATMに行ってくるよ。」とはじめに案内してきた男性に伝えるとなぜかその男性がついてきた。部屋をすぐ出たところで、私が男性に「とりあえず先に100ドル払っていい?それであんたはちょっとでもいいから払ってよ、ほんとうに所持金が少ないんだ」と会話をしていると、もう1人店の中から男性が出てきて私に言った。「なにをしてるんだ?俺はここのマネージャーだ。お金を払ってもらわないと困るんだけど。」と私に言った。


このときようやく気づいた。「あ、ぼったくられてるわこれ」と。いま振り返れば気づくのが遅すぎた。案内してきた男性の方をみると案の定私の手元(財布がある場所)しか見ていないし、女性たちも含めその場にいた人たち全員グルだ、と確信した。


思い返せばその日に泊まるホテル名も言ってしまっていたし、変に抵抗して自国でない地でトラブルになるのもかなりめんどくさい。そう思ったので「とりあえず100ドル渡すわ、それでええかもう」とキレ気味で伝え、案内してきた男性をにらみつけ「ちょっとはお前も払えよ」と表情で伝えると40ドルその男性も払っていた(おそらく渡しているだけ)。


「じゃあ帰るわ」と伝え、その場を走って離れた。「まじできっっっっっしょ!!」と思わず声に出ていたと同時に、「もう二度と、どんなにいい人だと感じても海外での誘いには絶対に乗らない」とそのとき自分のこころに誓った。また、被害が100ドル(約14000円)で済んで良かったと思った。脅されてパスポートやクレジットカードも渡していないし、なにより100ドルで身を持って騙されることを実感できた経験は大きいと思った。


いま振り返ると怪しかったなと思う点を列挙していく。


・案内人の男性はイヤホンを首にかけている(誘っているときの会話の内容がリアルタイムでアジトに届くようになっている)

・案内してきた男性とのはじめのほうの会話で「今日は宿はあるの?どこに泊まっているの?」と間接的に滞在先のホテル名を聞かれる(のちに踊ったりドリンクを飲んでいるときに「ホテルの部屋まで行ってマッサージしにいくよ」と男性から誘いがあったことから、複数人の女性たちとホテルまで押しかけて私の貴重品や所持品を奪うことを目的としている可能性がある。また、お会計でお金を払うときに「ホテル名言ってしまっているし部屋まで来られたら困るな」とターゲットに感じさせ、脅しの材料にすることを目的としている可能性もある)

・女子大学の卒業式があって、今日は卒業式に出席していた人たちを祝うフェスティバルがある(女子大学、卒業式、フェスティバルといった、いかにも男性を釣るような誘い文句の行事がなぜかこの時期にある)

・案内された部屋に行くとゲストのような人は自分と案内人の男性のみ(他にゲストがいない)

・一緒にしていたダンスは肩、胸、腰を小刻みに揺らし、膝の上下運動も多いダンス(私の体を動かさせることによって貴重品をどこに身につけているのか、どこにしまっているのか把握する目的、ターゲットの気分を高揚させ、冷静な判断力を失わせる目的)


など振り返って言語化して客観的にみると怪しさMAXの誘いだった。しかし私自身、アフリカで、ジブチで、エチオピアでいろんな人たちと交流し、意外と治安とかも問題ないやん、ちょっとぼったくってくるけど基本みんな親切やん、いい人めっちゃ多いやん、と無意識に楽観的になってしまっていた部分があった。


また、翌日と翌々日にも「女子大学の卒業式があってね」「フェスティバルがあってね」「エチオピア伝統のダンスを見れる集まりがあってね」など、今回とほぼ同様の誘いを2回別々の人から誘われた(誘ってきた人は2回とも40~50歳ぐらいの男性)。おそらくアディスアベバ市街で今回のようなアジア人をターゲットにした悪質な誘いが人知れず横行していると考えられる。


今回の経験を経て、改めてここは海外であるということ、親しく話しかけてくる人(特に日本語で)は全員私のことを騙しにきていると捉えておくこと(もちろんほんとうに親しくしたいだけで、日本語で話しかけてきてくれる人もたくさんいる)を肝に銘じることができた。また、世の中には平気で私のことを騙してもなんとも思わない人たちがいるということを実感できたいい一日だった。


みなさんも、エチオピアのアディスアベバに関わらず、少しでも「怪しいな」と思ったら誘いや提案を断るようにして、警戒心を張りながらも楽しむことを念頭においていただければ嬉しく思います。

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