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帰ってきた伊藤(これふじ)

最近noteの更新が止まっていて、申し訳なかったね。ここの運営を始めるときに決めた裏目標として、週に一度は何かしら更新する、というのがあったんだけれど、恐らく初めて反故にしました。どうにか生きてはいるらしいので、代わりと言ってはなんだけど、日記調で少し長めの言い訳をしようと思います。

忙しくてそんなの読んでられないよ、というきみのために一言で言うと、ええと、

肺に穴があきました。

朝起きたら、左肩と首が痛かった。さては寝違えたか、と思いながら身支度をし、朝ごはんのトーストを半分ほどかじったところで気がついた。

左半身がじわじわ痛い。

ただの寝違えではなさそうだ。インフルエンザにかかると体の節々が痛くなると聞くし、その類だろうか。自覚した途端に何故か食欲が消え失せてしまって、トーストを4分の1ほど残してしまった。なんだかおかしい。多少息が荒い気がする。念の為熱を測ってみる。37.5℃だった。嘘だァ、体がなんか痛いだけだぞ。新年度早々インフルエンザなんて、世界一面白くない冗談だぞ。嘘だァ。もう一度図り直す。37.3℃。一瞬で0.2℃下がった。思わずガッツポーズを取りかけたが、いやいや、熱があることには変わりない。とはいえ、体の痛み以外に症状は無い。病院に行くべきか否か迷っているうちに、なんだか痛みが引いてきた気がする。腕が痛くなくなった。

…いや、首の付け根と鳩尾の左寄りのところに、痛みが集結しつつあるような気がする。首の付け根はさておき、鳩尾はマズくないか?医学に造詣はないが、鳩尾ということは諸々の臓器の集合地帯では?最悪心臓とか、そこらへんの痛みだったりするのではないか?痛みを自覚してから2〜3時間は生き永らえているから、恐らく心臓ではないと思う、いや思いたいけれども。万が一心臓だったら、もっと早く倒れたりとかしている気がするし…。

とにかく念の為家族に着いてきてもらって、病院に行った。日曜日もやっているショッピングモール併設型のクリニック、ありがたすぎる。何科にかかればいいのか全然分からなくて、体の内部の痛みだからという理由で内科を受診した。

歩くと痛みが増す気がする。いたい。歩けば歩くほど肺が下から順に潰されてゆく感覚がある。いたい。痛みは確実に増している…。

やっとの思いでクリニックの受付に辿り着いたが、発熱している人は全員抗原検査を受けねばならないらしい。

「鼻だけマスク外してくださいね〜、ハイジャアちょっと頑張りましょうね〜」

コロナめ!!!!!


あれは何回やられても慣れない。痛い。鼻の中に血の匂いが充満している上、生理的に出てきた涙でマスクが湿って気持ち悪い。コロナウイルスさえ流行らなければ、鼻の痛みは味わわずに済んだものを。

「コロナもインフルも陰性ですね」

まあそうだろう。両方罹ったことがあるけれど、あれらとはかなり違った症状が出ているのだから。

「う〜ん、7度5分くらいなら風邪じゃなくてもまあ出る体温だし、痛いの?鳩尾?どこかぶつけたりとかした?…そうか、もし痛みが続くようなら整形外科に行ったほうがいいかもねえ…」

問診票を読み、聴診器を当て終えた医者はこう告げた。心当たりは全くないけど、疲労骨折とかだったらいきなり折れたりするそうだし、そういうものなのか…。

「じゃあ一応、レントゲンだけ撮っときます?」
「お願いします」


「レントゲンの結果なんだけどね、キキョウですね!これは痛いわ、ちょっと上の方にできてるから聴診器じゃ分からなかったんだねえ」

「…はっ?」

「要するに肺に穴が空いてしまって、この…分かるかな、肺の上のところに空気がたまってる状態なのね?いわゆる自然気胸です、心当たりが無いなら原因は分かりません。これは、…内科じゃないかもなぁ…」

医者はレントゲン写真をボールペンで指しながら説明してくれた。あんまりわからなかった。「内科」じゃ「ないか」も、ダジャレだ…と、軽く現実逃避じみたことを考えながら続く説明と生活上の注意を受けた。中等症に片足を突っ込んだ軽症らしい。なるべく一定の呼吸を保ち、大きく息を吸ったり息を止めたりしないのが肝要だと言われた。鎖骨の少し上まで肺があることを、今日初めて知った。

しかし、大変なことになった。インフルエンザの方がまだマシな冗談だったとは知らなかった。新年度早々、肺に穴があくとは…。今年度から新しいお仕事が決まっていて、明日には顔合わせがあるというのに。いや、真に大変なことになるのは上司になる人か。これから「はじめまして、明日からあなたの部下になる伊藤と申します、突然ですが肺に穴があきまして…」という電話を受けることになるのだから。

明日また病院に来るように言われて痛み止めだけ処方され、帰って家族と上司に連絡を取り、そのまま眠ってしまった。横になるといくらか楽だ。夜中のうちに急に悪化したりして、朝が来なかったらどうしよう、という一抹の不安を抱えながら眠った。

翌朝わかった事がある。キツい。横になっている状態から起き上がるのがかなりキツい。目覚めた瞬間は痛みがなくて、治ったかと思って起き上がったのに。体を起こした途端に鳩尾が痛む。しばらく休んで、ヨロヨロ立ち上がって、少し歩いて、壁にもたれて休んで、を繰り返し、起きたばかりだというのに死にそうになりながらダイニングまで辿り着き、いや、キツい…。

病院に行って、またレントゲンを撮った。昨日と変わらなくて、悪化はしていないけれど回復もしていないそうだった。中等症に片足を突っ込んだ軽症、というのが今の僕の肺の状態らしい。大きな病院の呼吸器外科を紹介されてしまった。あるくといたい。

やはり朝がキツい。普段なら30分もあれば終わるはずの身支度に1時間以上費やしている。何故か心臓がバクバクしている。体を揺らすほど大きく脈打っていたものだから、最初は震度1か2くらいの地震かと思った。とはいえ、3日目ともなれば日曜日よりは徐々にマシになってきていて、しばらく座っていればあまり痛まなくなっている。

紹介された大きな病院に行き、またレントゲンを撮った。昨日までの病院の先生に、「もしかするとお腹にチューブを入れて空気を抜く処置をするかもしれない」という話を聞いていたので、戦々恐々としながら待合い室にいた。

結果から言えば、手術はしなかった。いくら中等症の半歩手前にいるとはいえ軽症にあたるので、基本手術にはならないらしい。自宅療養にして、軽い散歩程度ならもうしても良いともいわれ、予想外だったがかなり安心した。翌日さっそく近所のコンビニまで行ってお昼ご飯を買った。150メートルもないくらいのコンビニに歩いて行けただけのことなのに、達成感が凄まじかった。4〜5歳の頃、初めてのおつかいに成功したときでもこんなに嬉しいとは思わなかったんじゃないだろうか。

今では、横になったり座ったりしていれば全然痛くないし、普段の三分の二くらいの速度でなら特に問題なく歩けるようになった。どうにかお仕事も始められそうだから、もう心配はいらないんだけど、君たちもみぞおちの辺りが急に痛くなったり、またそうでなくても、何かしら体調が悪くなったら迷わず医療機関を受診してくださいね…。

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