『変な家』文庫版 読んだ「憶測」
楽しかったです。
以下、個人的な「憶測」です。ネタバレです。自分用回顧録。
4章の疑問
善江さんの打ち明け話(にあたるもの)を読んでいて、片淵家因習の面白さ反面
「なんかこの話気持ちが悪い。タイミングがよろしすぎはしないか。」
と感じる。
小説にするにあたって、推理ものあるあるだけど
・嘘ではないが「言わない」という選択
・後出し情報
というのがある。
冒頭に「みなさんもご一緒に考えてみてください」と書いてあるのも推理ものの鉄板な気がする。
善江さんの口述ターンでじわじわと抱く不快感。
片淵柚希がはじめにした「被害者の妻だといえば信じてくれる」という手法そっくりですよね。柚希さんは開示して雨穴さんの信頼を得てるようにみえるけど…それだけで柚希さんを信じるのもなあ。
そんな…被害者かもしれないだけでは。と思いながら話を読み進めてしまったからかもしれなかったんですが。
都合よくいま考えている人間から「手紙が届く」なんて事もなければ、
都合よく今まで険悪な仲だった母と話す機会を得られる、なんて事もないんだと思うんですよね。
あとがきで栗原さんが「あの手紙が果たして慶太さんが書いたものなのか?」という仮説を文庫版は追加されているのだけれど。
じゃあその手紙を書いたのは
善江さんなのか、柚希の姉であり慶太の妻にあたる綾乃なのか。
もし栗原さんの仮説通り寝室の小窓が「慶太を綾乃が監視するための窓」だったとすれば、手紙を書いたのは綾乃が書いた可能性が高い。
ただ一度、柚希は「姉から手紙を貰ったことがある」それに加えて文字の特徴まで話せた。なら母から手紙を見せられた時点で姉が書いたものなら判断できる。
判断できないとすれば疎遠の母、もしくは本当に慶太だった場合。
しかし、慶太が書いたとして手紙を読むとおかしいのは
「こんなに綾乃が打ち明けているのに手紙を送ることで、綾乃が大切にしている柚希が左手供養を知り危険に晒される」
ということは考慮されていない。
気がおかしくなっていた?それにしても甘い。あれだけの執着をみせる片淵家が背後にいて、誰かに途中で見られるかもしれない手紙をわざわざ送るか?
もし、配達トラブルで中身を開けたら子ども2人にも危険が及ぶ。慶太の想いがあるなら、そんなことはしないだろう。
書いたのは善江さんじゃないか?
寝室の小窓は「慶太と綾乃が左手供養をするか善江さんが監視するためのもの」で
慶太を自首させる。綾乃と二人の子どもを自身の家で「監視」する。
あの面会の後、柚希と善江さんはそろって綾乃に会いに行った。
でも、そこで和解しただろうか。
その場で柚希も監禁、監視してしまえばすべては表に出ることはなく蓋をすることができる。
善江さんはお姉さんと電話で話したって言ってるけど、柚希や雨穴さんが姉の声を聞いたわけではない。
もし、善江さんが聴取に協力をしていなかったら。
慶太の罪は軽くならない。終身、もしくは死刑であの因習は有耶無耶になる。
もし、善江さんが「片淵家を殺す」という呪いを継いでいるのだとしたら。
善江さんはあと、綾乃・柚希、そしてこども2人を殺さなければいけない。
「あなたの為に言わなかったけど、これからはうまくやろう」
そんな甘いひと言で、囲って仕舞えば善江さんは疑われはしない。
そんなひと言で因習から抜け出せるのなら、とうに終わっていた。片淵家と同じように善江さんも同じくらいの念で呪いを継いでいるのなら、こんなところで終わらせたりはしないでしょう。
作中語られてはいないが、善江は好き合って2人娘を産んだのではないんじゃないか?
片淵家の両方の因習の為だったなら、誰よりもこの因習から抜け出したかったのは善江なのでは。
どうせ愛がないのなら、どうせ終わらせるなら、自分の子どもの代で終わらせる。
「慶太」が終わらせたかったのを利用して、ぜんぶ終わらせたかったのは善江なのかもしれない。
呪いと言って、綾乃・柚希・浩人・桃弥に手を掛けて、あとは自分が消えてしまえば。
純粋に血を引かない慶太は手を掛けずとも、ぜんぶ終わるんじゃないか。
そんな、一読目の憶測。
何度か読めばまた変わってくるのかもしれないけれど。
一先ず読んですぐの思考記録。
追記2024/02/07
フィクションなので、本当の結末がどこなのかを定めないと永久に考えてしまう。
作者の雨穴さんが考えた「小説の結末」なのか、見せかけたかった結末なのか、あとがき読んでからの結末なのか。
遊び尽くせる推理小説。ありがたい。
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