はじまりとおわりの間『海のはじまり』#1【メモ】

『silent』『いちばんすきな花』の生方美久さん脚本の月9『海のはじまり』。短編ドラマも含めて生方さんのファンになったので鑑賞。見どころが多すぎて全部記して置きたいので、気になったところをメモ

冒頭の親子のやり取りから、意味のありすぎるセリフの連発でグッと引き込まれました。海のはじまりはどこで、おわりはなんなのか。はじまりとおわりの間で、揺れ動いている沢山の海水や、本当におわりとも言えない水平線を映しながら、本作のテーマ性をガツンと投げかけている。

過多になりすぎず、不足もしないセリフ回しで、キャラクターたちがどんな人物なのか、どういう関係性なのかをテンポよく教えてくれる他、生活している部屋のディティールなど、セリフや演技外のところでも世界観を伝えくれた。

有村架純さん演じる弥生と、目黒蓮さん演じる主人公・夏のやり取りも印象的。海じゃないなら山、「うん」「ううん」の間のような返事をしないでほしい……などなど、二者択一とそうじゃないグラデーションのある事柄についてのセリフが多く、ここがキーワードになってくる??

学生の頃の夏はグラデーションそのもの。自分の意志や意見のない流される側(「はい」「いいえ」の問答)。一方で海の母親である水季(水の季節で夏?)は、自分で何でも決めてしまうきっぱりとした人間に見える。

しかし、水季は海を中絶していなかった。ふたりの状況的に効率の良い合理的な判断として強引に決めた中絶だったが、それを選ぶことはしなかった。結果的には、堕ろす・堕ろさないの二者択一になっており、後者を選んでいる。

ひとりで生み育てるのは難しく(祖母のセリフから相当つらい子育てだったことがわかる)、二者択一の答えとしては堕ろすことが適切かもしれないが、そこに合理性とか可・不可とかを超えた感情や倫理のグラデーションが存在している。選択はしたけれどこの選択は決して、単純な二者択一ではない。命や気持ち懸かっている。

避妊をしていたっぽいのに、妊娠したことや「男は妊娠・出産しなくても父親になれる」というセリフなどから、リアルなテーマとして人間の生の営みと、それを取り巻く近代の社会状況が伺える。(抽象的なテーマと、具体的なテーマがあるのはどの作品にも共通)

登場人物の名前やセリフが、何十にも係り過ぎていてやばい。「海のはじまり」は、冒頭の海ってどこからが海なんだろうね?=世界の全てのものの境界線についてみたいなことから、海という少女の人生のはじまりでもある。海は産みでもあるし、水季の「海大好き〜」「夏好き〜」もあるし、海のセリフである「母親のはじまり・おわり、父のはじまり・おわり」と、冒頭の海ってどこからが海なんだろうね?も関連している=境界線の話とも関連。

もう画面やセリフに意味が渋滞していて、とんでもなく濃密な1話だった。単純に親子ふたりの生活がどうなっていくか、弥生さんはどうなるか、この後徐々に明かされていくであろう水季の7年間などなど、ストーリーも見逃せない。

追記

生のことばかりフォーカスしていたけど、大島育宙さんの言うように、生命のはじまり・おわりも本命。反省

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