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違和感は「らしさ」を考える大きなチャンス。「夏の寄付キャンペーン」から見えたSottoらしさとは

<この記事について>
認定NPO法人京都自死自殺相談センターSottoで行った「夏の寄付キャンペーン」。開始直後から内部のメンバーから「キャンペーンに違和感がある」という意見をいただきました。それについてチームで考えたり、他のメンバーと一緒に団体らしい寄付を考える対話会を開き、改めて「Sottoらしさ」について考えたという記事を書いています。

こんにちは。エンコミュニティラボの山中です。
2023年4月からファンドレイザーとして、認定NPO法人京都自死自殺相談センターSottoさんが活動資金を集めるためのお手伝いをしています。

Sottoについてはこちら

Sottoでは、電話とメールで死にたい気持ちを抱えた人の相談を聞いたり、「おでんの会」や「ごろごろシネマ」など、リアルの居場所のイベントを開催したり、自死で大切な人を無くした方のお話し会などを開催しています。

そんなSotto、この夏に「寄付キャンペーン」を開催しました。

Sottoに限らず、NPOが夏と冬のボーナス時期に合わせて寄付のお願いをすることはよくあります。

これまでSottoでは、冬に「歳末のお願い」として会員の方に寄付のお願いをしてきましたが、夏にお願いをするのは初めて。

ファンドレイジング担当のたれちゃんと一緒に、寄付キャンペーンのコンセプトや、同時に公開するYouTube番組の作成、お願いページのテキスト・バナー、関係者への周知、会員の方へのお願い文章などを準備してスタートです。

開始して直後、思わぬことが起こりました。

内部のメンバーの方から「寄付キャンペーンに違和感がある」という意見がたくさん出てきたことです。

1 違和感の正体

 「なんだかキャンペーンってSottoらしくないよね。」

最初に届いた違和感はこちらのご意見でした。
Sottoでは、死にたいほどのつらい気持ちを抱えた方と向き合っておられるので、みなさんとても言葉に敏感だし、言葉を丁寧に扱っておられます。
指摘を受けて考えてみると、確かに、キャンペーンって、どこかワクワクする響きがあるし、浮き足立っている感じがする・・・。

campaign〘名〙 (campaign) 何らかの主張、あるいは宣伝のために、組織的、継続的に広く社会や大衆に訴える活動。広告・啓蒙・普及活動などにみられる。

コトバンクより

死にたいほどの気持ちを抱えた方の相談を受けるNPOとして、「キャンペーン」という言葉はそぐわないな、と指摘を受けて気づきました。
これは私がよくNPOの寄付のキャンペーンをみて、「そういうものだ」と思っていたから。言葉の使い方に対する配慮が足りなかったと反省しました。
さっそく、たれちゃんとも話し合い、「夏の寄付のお願い」に変更しました。

次にこんなご指摘も

「世間の盛り上がりを利用するのはどうなの?死にたい気持ちを抱えた方はいつも居られるよね。」

こちらも、グッときたご指摘でした。

私たちは夏の寄付のお願いをするにあたり、「なぜこの時期にやるのか」を伝えるために、「新学期が始まるタイミングで、学生さんの自死が増える」という事実に重ねる発信を行いました。

9月と3月は国が行う自殺防止キャンペーンの時期でもあります。
また、Sotto内部でも、夏休みが始まってすぐの時期から、新学期が来るのが怖いという学生さんの相談が増えるというメール相談員の方のご意見もありました。

世間的にもキャンペーンをしているし、メディアの注目も集まっている。ニュースでの露出やネットの検索も増えるし、そこに被せて寄付のお願いをすることって、マーケティング的に何ら間違いじゃないというか、むしろ王道だと思います。私はその発想でいました。

でも、ご指摘を受けて改めて考えてみると、Sottoのビジョン・ミッション・バリューから考えたら、外しているんじゃないかと思いました。それは次の理由からです。

自死は、「ある」もので「良い」「悪い」という価値観は問題にしない

これはSottoのビジョンでもあり、私が「Sottoの本質」と思う部分でもあります。

Sottoミッション
自死·自殺にまつわる苦悩を抱えた方の心の居場所づくり

Sottoが作りたい社会
1. 価値の多様性がある社会
2. 誰しもがひとりぼっちにならない社会
3. 自死の苦悩を受け取ることのできる社会
4. 慈しみに満ちた優しい社会

Sottoが目指すこと
1. 自死は、「ある」もので「良い」「悪い」という価値観は問題にしない
2. 自死の苦悩を抱えたときに安心して居られる居場所をつくる
3. 自死の苦悩は自分事になり得ることを共有する

「自殺」や「自死」という言葉って、とても強くて、どこか犯罪を想起させたり、社会的・倫理的に許されないもの、というイメージがありますよね。

でも、「死」があること。それが救いになる時もある。

私はこちらの豆塚さんの本を読んで、驚きと共にそれを知りました。

筆者の豆塚さんは、人生があまりにもつらく、高二の時に自宅のベランダから飛び降り自殺を図ったのですが、一命を取り留めます。
自死を決め、手すりの上に立ち、飛び降りるまでの間、その時に豆塚さんの心にあったのは「やっと死ねる。この日のためにうまれてきた」という喜びだったと言います。

死が救いになることもある。

しかし、社会的には「自殺」「自死」は「良くないこと」とされています。
確かに、国が発信するメッセージとしては、国民に対し、死なないで生きて欲しいというものは正しいのかもしれません。

しかし、そのメッセージは「死にたい」と思う人を苦しめます。「死にたい自分はダメなんだ」という思いを生むこともあるでしょう。

Sottoはそんな中、
自死は、「ある」もので「良い」「悪い」という価値観は問題にしない。
と言います。
これってすごく強い言葉だなぁと思いませんか?

死にたいくらいの孤独や苦しさを抱えている人だけでなく、大切な人を自死で失った方にも優しい言葉だなぁと思います。
この価値観をスタッフがしっかり共有していることで、「死にたい気持ちを抱えた人」に対して「自死の善悪」を通り越して、その人の気持ちをしっかりと受け止められるのではないかと思います。

なので、Sottoのミッションは「自殺者数を減らすこと」ではなく、「死にたい気持ちを抱えた人の話をしっかりと受け止める。その結果、そこに心の居場所が生まれる」ことなのです。

前段が長くなりましたが、そんなSottoの価値観があるのに、「自殺防止キャンペーン」と時期を重ねること、「自死=防止すべきこと」と思っていると誤解されかねないな、と、ファンドレイジング担当と話し合いました。

2 違和感対話をしてみた

今回の件を通じて、私がSottoでいいなぁと思ったのが、「違和感をしっかり担当に伝えてくれる」ことだなぁと思いました。

違和感を感じていても「別の部署だし」という理由でスルーすることもできると思います。
でも、Sottoが発信するメッセージで社会に対して誤解をうんだり、コーラーさん(相談してきてくれる人)を傷つけてしまったりするのを防ごうと、話してくださったことは実は結構すごいことだと思います。

夏の寄付はありがたいことにマンスリーサポーターに6名の方が新たに入っていただき、単発のご寄付も20万円ほどいただくことができました。
ご支援いただきました皆様、誠にありがとうございました。
感謝と共に、「よかったね」だけで終わるのではなく、これを機に「Sottoらしい寄付」を考える対話会を開催することにしました。

声をかけると、有志のメンバーが集まってくれました!

「何で寄付って夏にお願いするの?」
「ボーナス時期だからですかねー」
「じゃあ。『ボーナスですよね。寄付ください』って言った方がSottoらしいかも笑」

「マンスリーの会員さんが200名増えたら電話相談ボランティアに謝金を払えるようになるんです。」
「それって必ず必要なのかな?」
「でも、ボランティアさん夜中に出かけるんだし、タクシー代も必要だし、送り出すご家族にとってもいくらか謝金があると納得できるんじゃないですか?」
「うちもこないだ家庭でそんな話になりました笑」
「Sottoの相談員は専用のトレーニングをしっかり受けた人ばかりだし、しっかりプロとしての謝金は渡したいよね」

「電話相談やメール相談が始まった日を調べて、その日に寄付のお願いしたらどう?」
「いいですね!調べてみます!」

という、寄付に関する話題だけでなく、

「安心して打ち明けられる・居られる居場所ってどうやったらつくれるんですか?」

「気持ちを受け取るってのは方法論だし、安心して打ち明けられる・居られるというのがSottoの大切にしたいことだよね」

「電話をかけてきてくださった方の孤独感がなくなる、なんて無理だよね。孤独感がやわらぐ、って表現を創業から大切にしてきたよ」

という、Sottoが大切にしたいことも話題にあがりました。
また、

「夏に限らず人がしんどいのはいつもなんだし、いつも発信するのって大切やね」
「Sottoの哲学みたいなことを常に発信して、コーラーさんに安心してかけてきてもらえるようにしたいよね」
「じゃあ私書いてみます!」

などなど、テーマは「Sottoらしい寄付のあり方」だったのですが、Sottoが大切にしたいことはなにか、伝えたいことは何かという話題に花が咲きました。

代表の竹さんが創業した時から大切にしていることとして、「この場を続けること」というのがあるそうです。
「相談してきてくださっている、イベントに参加してくださっている人にとって、Sottoがなくなることは1番の裏切りではないか。作った以上、継続させることを大切にしている」と教えてくれました。
であれば、ますます、「Sottoを続けるためにご支援ください」というメッセージをしっかり伝えたいですね、という話になりました。

3 これから

今回、「夏の寄付キャンペーン」を契機にいただいたいろんな違和感から、Sottoらしい寄付のかたちが見えてきました。そして、Sottoらしさってなに?という根源的な対話もうまれ、私だけじゃなくSottoにファンドレイジングスタッフとして入ってきてくれた方にもそれを聞いていただけたことはとても大きいと思います。

ではこれで完璧かというと、そうではありません。
寄付のお願いだけじゃなく、それ以外の活動でも、何かに違和感を感じたりすることって出てくると思います。
その時に、立ち止まって、自分たちの感じた違和感を言葉にして対話して、そこからまた今のSottoらしさをみんなで言語化して確認する。それをし続けることがSottoにとってとても大切だし、それによってこそ、Sottoをしっかりと継続しつづけられるのだと思います。

今回の「夏の寄付キャンペーン」は私にとっても非常に得難い経験になりました。
まず、Sottoとして、夏の寄付のお願いを初めて実施できたこと、それによって貴重なご寄付をいただけたこと、そしてキャンペーンを違和感や対話を通じてスタッフや周りの方が考えるSottoの大切にしたいことやSottoらしさについて考えること、すべてがよかったと思います。

Sottoのことも、前より理解できた気がしますし、知るたびにすごい団体だなぁと思います。

Sottoでは、活動を継続するため、そしてこれからも安心できる心の居場所をつくるため、マンスリー会員という継続した寄付をお願いしています。
単発の寄付でももちろん大歓迎です。
この記事を通して関心を持っていただいた方はぜひSottoのHPをチェックしてみてください。そして、Sottoが作りたい社会に共感いただけたら、ぜひ仲間になってください!
認定NPO法人なので、ふるさと納税のように寄附金控除も受けていただけます。(確定申告が必要になります)

認定NPO法人 京都自死自殺相談センターSottoをどうぞよろしくお願いします。


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