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「社員のテレワーク補助 通信費・電気料金の半額非課税」の話

在宅勤務手当への課税についての国税庁の指針 

2021年1月15日の日本経済新聞の1面に「通信費の半額非課税 政府が基準明示」という記事が掲載されました。

国税庁の発表前の記事でしたが、その後、正式に在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)として発表されました。内容は報道された通りのものでした。

企業の間では、今回の計算方法に基づいた実費相当額を手当として支給する動きが広がる可能性がある(読売新聞
通信費に関する税制上のルールが明確化されたことで、在宅勤務のさらなる普及につながることが期待されます(NHK

など、メディアは好意的な論調ですが、実際のところはどうなのでしょうか。

Twitterなどの反応を見てみると、以下のようなものがありました。

全面的に賛成な人たち

・日本の会社にテレワークを定着させる上でとてもよい施策だと思う
・素晴らしい動き
・前向きでよい施策だと思います
・通信費や電気料金が事業で使われているので、非課税で納得です
・テレワークを推進している企業の社員にはいいことですね
・多くのサラリーマンには嬉しい改正ですね
・不満を感じていた部分だったので、多くの人にとって朗報なのでは
・大きなコストになっている人は多いと思うので、これはかなりありがたい

非課税になるという考えには賛成な人たち

・取り組みとしては非常に良いが、計算式をみて大きな懸念点がる
・テレワーク関連費用の一律控除枠でも作った方がいいような気もする
・難解な税額計算をさせるよりは、一定の限度額を設定したほうが簡潔明瞭でよいと思う
・制度の思想はとても良いと思いますが、経理部門に負担がかかりすぎなのでは

会社から在宅勤務手当をもらっていない人たち

・在宅手当を会社から支給される気配がない
・テレワークでしかも補助をもらえるの会社が羨ましい
・働いている会社でテレワーク手当に類するものがない
・手当がもらえている人の話

事務処理が煩雑なのに金銭的なメリットが少ないと思っている人たち

・各家庭ごと契約も異なるし、転居などわかりやすいフラグもなく変更入るから適正な運用は無理なのでは
・電気料金は自宅床面積のうち、仕事に使う床面積を調べ、そこに日数をかけるのは、実際の運用に無理があるのでは
・事務手続きの人件費のほうが高そう
・煩雑な手続きのために、非課税分で得する費用より、これに対応する工数の費用の方が大きくなりませんか・・・
・家の共益費に通信費が含まれている場合はどうするのだろう
・計算する部署が残業をする未来しか見えない
・通信費の明細は翌月に出るけど、全社員にその明細を提出させて、そこからさかのぼって日数計算して半額にする、ということを毎月させるの?
・給与所得控除で対応すべきと思うが、所得税法の改正が必要なので、現行法で対応しようとするとこうなるのかな
・通信費は固定回線で負担は増えていないので、他のことを支援してもらいたい

賛否はあるわけなのですが、全面的に賛成な意見の人は、はたして合わせて課せられる問題の難しさを理解した上での意見なのでしょうか。

何のためにするんだっけ?

どこかに書いてあったわけではありませんが、意図はこうだったのかな、と仮説を考えてみました。

【目的】
 在宅勤務をする人を増やしたい
【手段】
 金銭的なメリットを出し、企業が在宅勤務を補助する制度をつくりやすくする
【期待する結果】
 在宅勤務に取り組む企業・在宅勤務をする人の数が増えていく

しかし、示された基準だと、在宅勤務を補助する制度をつくるために非課税になるような複雑な制度設計をするかどうかを考えなくてはいけません。運用まで考えると複雑すぎるし、その膨大な運用コストに対してメリットがどれくらいあるのかをシミュレーションするのも大変そうです。

むしろ、これから在宅勤務手当をつくっていこうと考えようと思っていた企業に対してはハードルを上げる結果になったのでは、と心配になります。非課税にするという考え方はいいと思いますが、得られるメリットが小さすぎると、通勤手当ぐらいざっくりした運用(領収書などのエビデンスがいらない)にならないと、そもそも、誰にとっても嬉しくないのでは。


ちなみに弊社でも、大企業水準並みではありますが(スタートアップ企業のほうが高い傾向にある)、在宅勤務手当は導入しました。2020年に調べた各社の在宅勤務手当の比較は下記に書いています。



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