枝野代表辞任に思うこと

 立憲民主党の枝野幸男代表が辞任を表明しました。

 今回の総選挙で政権交代を目指しながら、選挙前の議席を割り込み、政権交代も達成できなかった以上、敗北であり、やむを得ないと思います。

 2017年10月の結党以来、4年間という長きにわたって党を率い、今回の総選挙では久しぶりに政権交代を問う選挙となるまで野党をまとめたことは、大変な実績です。

 まずはお疲れさまでしたと申し上げたいと思います。

 後任を決める代表選挙が行われますが、党員を含めた形で行われる見通しであり、活発な議論を期待します。

1.功績は野党の立て直し

 振り返ると、4年前、野党は希望の党騒動の真っただ中でした。

 総選挙の前から野党第一党の民進党はガタガタしていました。都議選では公認候補が次々と都民ファーストへと流れ、始めから勝負になりませんでした。蓮舫代表が辞任し、細野さんや長島さんなども離党していき、新たに代表となった前原さんも党勢の衰退に歯止めをかけることができません。

 そこで、藁にもすがる思いで小池さんについていき、民進党はあっという間に消滅しました(実際は消滅していないが)。選択肢がないと思った有権者は多かったと思います。私もその一人でした。

 2017年10月2日、枝野さんは一人で立憲民主党を立ち上げました。これでようやく選択肢ができた、と思いました。新宿駅での立憲大作戦、大変な熱気でした。総選挙では希望の党を上回る55議席を獲得し、野党第一党となりました。民主党、民進党と続く野党の流れを守ったことは、枝野さんの最大の功績です。

2.野党第一党党首としての苦闘

 立憲は2017年総選挙で野党第一党となりました。しかし、思えば、これが早すぎたのかもしれません。

 結党当初は「永田町の中の数合わせにはくみしない」として、希望の党や参院に残っている民進党との連携を拒否していました。せっかく作った党ということもあったのでしょう、独自路線で何年かかけて組織を整え、将来政権交代を狙える党にしていくというビジョンだったと思います。

 しかしながら、枝野さんもおっしゃっていたように、野党第一党、そしてその党首は他の野党それとは違う役割が求められます。

 国会運営では自民党のカウンターパートとして交渉の最前線に立たなければなりません。政府与党と厳しく対峙する一方、維新、共産など他の野党とも調整を行うという、難しく複雑な役回りを務めなければなりませんでした。参議院では民進・国民が野党第一会派であったため、野党間の足並みの乱れも目立ちました。当初国対委員長となった辻元清美さんは大変そうでした。

 衆議院で野党第一党とは言え、55議席では巨大与党に対抗するには余りに無力でした。立憲と国民の間の野党の主導権争いも激しくなり、このままではますます与党一強を許してしまう状況でした。

 こうしたことから、2019年の参院選を経て、枝野さんは旧国民や社民などとの共同会派結成、党の合流へと舵を切っていったのだと思います。

 たびたび頓挫する危機に遭いながらも、最終的には、2020年9月に旧国民民主党との合流にこぎ着けて、新しい立憲民主党となりました。

 しかし、旧民主党系全てを結集することはできませんでした。玉木代表率いる国民はじめ野党の中に深い分断を残したことも事実です。

 野党共闘も共産党と組むことができたのは評価できますが、維新や国民との間では亀裂を深めました。他党との連携の是非にエネルギーが割かれ、この1年間立憲民主党の組織や政策を十分に磨くことができなかったことが、今回の結果になったと思います。

3.新代表は綱領に立ち返り、組織や政策を鍛えるべき

 今回の枝野さんの辞任は、「枝野一強」「枝野個人商店」と言われていた立憲にとって、大きな転機です。

 私はまず、昨年制定した綱領の精神に立ち返るべきだと思います。

立憲民主党は、立憲主義と熟議を重んずる民主政治を守り育て、人間の命とくらしを守る、国民が主役の政党です。

私たちは、
「自由」と「多様性」を尊重し、支え合い、
人間が基軸となる「共生社会」を創り、
「国際協調」をめざし、「未来への責任」を果たすこと、
を基本理念とします。

私たちは、この基本理念のもと、一人ひとりの日常のくらしと働く現場、地域の声とつながり、明日への備えを重視し、国民の期待に応えうる政権党となり、この基本理念を具現化する強い決意を持って立憲民主党を結党します。

 この綱領は昨年の合流時に制定されたもので、旧立憲と旧国民の綱領を参考につくられたものです。

 この綱領には、1998年の民主党以来、民主党・民進党・旧立憲・旧国民という民主党の流れを汲む政党が追求してきた理念のエッセンスが詰まっています。

 11月19日から始まる代表選挙での論戦に期待しています。

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