●渡辺京二著『無名の人生』<文春新書>(14)
【過去記事です】
http://www.honzuki.jp/book/239044/review/156809/
渡辺京二さんの本は初めて読んだ。飄々としたお顔と熊本在住である親しみから興味は抱いていた。もちろん、近代史を中心とした諸作のアカデミックかつ読み物的側面も気になってはいた。
本書は「人生論」の範疇に入るのだが、自然体で、決して教訓的ではない。
正しい自己愛とは自分を甘やかす事ではない。間違った福祉やケアが管理化に繋がっているなど、何となく多くの人が現代社会の問題として気付きつつ違和感に止まっている事柄を簡明に説明されている。
最も重要なのは生きる姿勢だろう。「世界」には二種類ある。実際に存在する地理的社会と、自分が生きていく上での自分中心の世界だ。自分中心とはいえ、名を売ろうとか出世しようという考えを無くし、真摯に努力する。たとえ苦しい境遇でも努力する。そして、人間いずれ死ぬのだから、死の瞬間まで生き切る。
さまざまな「人生論」で語られてきた事かも知れないが渡辺さんの立ち位置から述べられると腑に落ちる。
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