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episode1 お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

物心ついたときには
既にこう思っていた。
"自分なんかがおしゃべりをしても
誰も面白くない"
と。

思い出せる1番昔の感情がそれなので
それ以前に一体何があって
そう思うに至ったのかは謎。

とにかく強くそう信じていた。

原因は本当にわからない。
だって
私の家族はとても私に優しかったから。
誰もそんなことを言うはずもない
そう思わせるようなことをするはずもない
優しい人たち。

そういうわけで
母親以外の誰かと話をすることが
全然出来なかった。
いつも話そうとすると
冒頭の考えが心に大きく蓋をして
私の喉を緊張させて
言葉を出なくしてしまう。

助かったのは
私のそういうところを
母は全く問題視しなかったことだ。
(少なくとも私の前では)
まるで普通の子だとして
接していた。

そんな私を変えることになる
最初の事件は
小学校1年生のときに起きた。

なんと
私の少ない友達である
仲良し3人組から
仲間外れにされたり
ことごとく嫌味を言われるようになったのだ。
ピンチである。

誰にも言えなかった。

でも母の勘は鋭かった。

私の様子が変だと思って
上手にそれを私から聞き出した。
そしてこう言った。

「今度そんなことがあったら、言い返してやりなさい!そんな意地悪して何が面白いの?バカじゃないの?!もう一緒にいるのやめる!って。それでもダメだったら、お母さんがちゃんとなんとかしてあげるから。」

"ちゃんとなんとかしてあげる"

この言葉が背中を押した。
私は私の家族を心底信じていた。
そして私は"おりこうさん"だったので
母の言う通りに
セリフもそのままに
計画を実行することができた。

こうして晴れて
意地悪な友達とサヨナラした。
イジワルさんはビックリしていた。
それもそのはず。
喋らない私が
口を開いたらこんなことを言うのだから。
そして
不思議とそのあと
空いた席を埋めるようにスッと
サワちゃんという新しいステキな友達が
できた。

さて
このことが私の基盤になっているのだから
基本的には
"何かあったら言い返してやろう"と
つい最近まで思っていた。
いつでも。何に対しても。

今でも母は同じことを言うかもしれない。
私の方は
いやいやそうじゃないんだ、と
意外にも
今さらやっとわかってきたっていうことに
自分自身で笑ってしまう。
今までよくそれでやってきたねって。

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