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楽器が弾けたら。

楽器が弾けたらいい。

アコーディオンやバイオリンの音色が好きだけど、そんな選り好みはしないから、楽器ならなんだっていい。そう思ってもう何遍も、借り物のギターを引っ張り出すんだけど、これがなかなか続かない。1週間やって半年休んでの繰り返しで、いつになっても興味が沸点に届かない。だったら別にやらなきゃいいんだけど、「楽器が弾けたら」って強烈なあこがれに支配されることが、度々ある。

ブエノスアイレスで、もうたくさんの素敵な演奏を聴いた。街の真ん中で、マーケットの角で、地下鉄の中で奏でられる音が、私たちを引き留める。携帯電話の文字が、頭に入ってこない。この曲をむかしどこかで聞いたな。慌ただしく過ぎ去ろうとする一日が、後ろ髪をぐっとひかれて歩調を緩める。

デモ行進も、音楽が人を呼ぶ。太鼓の音がこだまして、みなそれに乗せて歌うように踊るように、通りを行く。怒りが湧くとギターを弾くと、ある友人が言っていた。ギターを弾けない私の怒りは、行き場を求めてさまようことが確かにある。音楽の力って底知れない。

旅から帰ったらまた、ギターでもやろう。問題はモチベーションのチューニングだ。



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