見出し画像

二月の敗者

2月12日。


わたしにとっては、数字を見るだけで苦い気持ちになる日。


1年前の今日、わたしは受験生だった。

第一志望の受験日だった。

1年間、いや2年間、

この大学、この学部に行くことだけを目標にしてきた。

やりたいことが中学生で決まったわたしにとって

進路選択は簡単だった。

やりたいことがないという悩みとは無縁だった。

ほかの選択肢を見ずにこの夢だけを追いかけていいのか

少し考えた日もあったけど、考えたところで変わらない。

そうやって、わたしの行きたい学部はあっさり決まった。

この学部以外全部同等の第二志望

そんなつもりで受けた1年前。


英語と国語は感触的には悪くなかった。

(後々、自己採点したらこの時点で落ちていたのだけど)

最後の世界史

人生で初めて「詰んだ」と思った。

大問1はいい。できた。

大問2から先が何も分からない。

苦手な分野はなくしたはずなのに、

ある程度戦える知識は持ち合わせてるはずなのに、

いつの、どこの国の話をしてるのかさえ分からなかった。

頭の中の膨大な世界史のテキストのページをいくらめくっても

この問題を解く手がかりは見つからない。

分かんない分かんないぜんぶ分かんない

手も足も出ないとはこのことだ

分かんないが積み重なるとパニックになる、

第一志望ならなおさら。

落ち着け落ち着け何か手がかりがあるはずだ

そう思えば思うほど焦ってくる。

焦ったらいけないことは分かっている。

時間もある。

それでも心臓の音は早まるばかり

もう涙が溢れる一歩手前。

全部3でもいいからマークすればいいのに、

それすらも出来なかった。



感情が論理に勝った瞬間。


マークシートは埋まってない。

落ちた。瞬間で分かった。

すぐそこまで溢れた涙を必死に堪え、

まわりの受験生の声も案内の警備員の声も何も聞こえない。

その後に続く試験のために塾に向かうはずだった足は、迷わず家に向いた。



家の前に母がいた。

買い物に出るところだった

母の姿を見た瞬間、

堪えていた涙が滝のように、ダムの放水のように溢れ出た。

もう意味もわかんないくらい涙が出て、

「今日だけはとことん落ち込もう」となぜか冷静で少し甘い自分がいた。

泣き止んでもちょっとした弾みですぐ涙が出る。

ここまで泣いたのはいつぶりだろう。


心を乱さないことを第一に生活していたから、

これだけ泣けている自分に少し安心したりもした。

ああ、わたしって人間だ


久しぶりにテレビを見ながらご飯を食べた。

次の日は、いつもの通り塾へ向かった。

論理が感情に勝った瞬間。

思えば、この切り替えの早さは受験で身につけた財産かもしれない。

終わったことは変わらない

今やれることをやるしかない

この日からわたしの第一志望は何度も変わった。

中学生から数年間、一度も変わらなかったのに。


次に来る試験すべてが第一志望。

そのあとはそれなりに安定して試験を受け続けた。

受かったって思ったら落ちるし、

落ちると思っても落ちる。

何も感じず考えず、ただひたすら試験を受けた。

第一志望は初めの方の受験だったから、

最後の試験が終わる前に結果も出た。

試験はまだあるけど見ないなんてことは出来ない。


『不合格』



まあそうだよな、

自分でも驚くくらい冷静に受け止める自分がいる。

この『不』の字さえなければ、とちょっと抗ったりもした。

でも、改めて突きつけられる不合格の文字に全く動揺しなかった。

もう少し動揺するかと思った。

その時のスクショはさすがになかった。

あんまり覚えてないけどショック受けてたのかな?

(トップの写真は別のところの)



結局、同じ大学の別の学部に受かった。

わたしここに行く!

即決だった。

数年変わらなかったことが、たった数日で変わった。

自分が望んでなくても、人生を左右する変化は起きる。

こうなったら運命だと思って飛び込むしかない。

偶然とか運命とか本当は嫌いだけど、

わたし、なんか前向きに捉えられてる!

受験ってこんなものね。


受験するべきなのかそうじゃないのか、

指定校や推薦でさっさと決めた方が賢い気はする。

でも、この感覚は一般受験をした人にしか分からない。

結果は大事。第一志望に受かるなら万々歳。

でも、それを通して経験した人間らしい感情の起伏と、

反対に客観的な視点、新しい自分の創造、発見(?)

なんだ、わたしって案外タフね、

別にどうってことない。

受験って人生の一大イベントみたいに言われるけど

別に大きなことじゃない。

そんなに気負わなくても人生はなるようになるし、

どんな道に進んでも強く生きればいいじゃないか

そんなことを思った1年前でした。

(※受験期はポエマーになります。)


しかし!

今のわたしは

2時寝11時起き当たり前、

課題より映画、バイトより遊び、

1年前作った世界史の年代暗記表を見て驚愕。

1つも当たらない。

こんな怠惰な生活してるよりは

たしかに受験って大きなことなのかもしれない。

1年前の自分に恥じぬように生きなければ!

そんなことを書いてる今は午前2時。

あれ?人間ってこんなもん

こんなやつに言われたくないかもしれないけど、

がんばれ、受験生!!

マークシートは全部埋めるんだよ!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?