見出し画像

リスボンダービーでBenfiquistaになりました(後編)

このnoteは後編です。前編から読んでいただいた方がより楽しんでいただけると思うので、こちらからお読みください!



さて、後編を先に見つけるというなんとも不思議な目に遭った皆さんへのご挨拶を終えたところで、本題に移りたいと思う。

前半までのベンフィカはチャンスを作るも、ゴールが決め切れないという展開。加えて前半終了間際にゴールを決められるという最悪の状況。0-1というスコアで後半に突入する。

ゴールが遠い後半…

後半6分。ここでスポルティングのDF, Gonçalo Inácioが2枚目のイエローカードをもらい、退場となる。ポルトガル代表にも選ばれ、直近の代表戦でもスターティングメンバーに選ばれていたスポルティングの守備の要とも言える選手が退場になったのだ。ベンフィカにはこれ以上ない追い風のように思える。ただ、実際はそうではなかった。10人になったスポルティングにベンフィカはむしろ押されていたように見えた。後半の45分間、チャンスらしいチャンスも作れず、ベンフィカのサポーターがため息と共に家路に就き始めていたその頃、起死回生の一発が生まれる。

後半49分、追加時間も残り少ない中でのコーナーキックだった。ベンフィカはゴールキーパーも攻撃に参加し、どうにか虎の子の一点をもぎ取ろうとしていた。しかし前半よりもさらに低調な後半45分間を見せられた我々観客からすると、全くもってゴールの兆しが見えない、絶望的な状況だった。チームのエースAngel Di Maríaの左足から蹴り出されたボールはキッカーに近い側のニアサイドに居たMoratoの頭へ、そしてMoratoが後ろに逸らしたボールは、敵にマークされずフリーで待機していたJoão Nevesの目の前に転がった。冷静にトラップしてボールを収め、身体を倒しながら振り抜いたボレーシュートは見事にスポルティングの選手の間を抜け、ゴールに吸い込まれていった。

その瞬間、Estádio da Luzに大歓声が響き渡った。歓声を表すときに「地鳴りのような」という比喩がよく用いられるが、同点ゴールの瞬間、本当にスタジアムは揺れていたように感じられた。このまま負けるだろうと誰もが思うような展開で、値千金のゴールが生まれたのである。ただベンフィカの反撃はこれだけでは終わらなかった。

後半51分、6分の追加時間も終わろうかという時間だった。同点ゴールの歓喜に促されたのか、勢いに乗ったのか、ベンフィカの選手がもう一点を狙いに、勝利を狙いに攻め上がったのだ。右サイドに展開されたボールはワンタッチで途中出場のFW, Tengstedtの足元へ伸びていき、彼はもはや触るだけでいいというような素晴らしいパスだった。見事にゴールに蹴り込んだのだが、そこで副審の旗があがった。オフサイドの判定、つまり反則によるそのゴールの取り消しを意味する旗が上がってしまったのだ。

10年前ならばこの判定もそのまま認められていただろう。しかし、昨今のサッカー界ではこのような微妙な判定の場合、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)という最新鋭の機械を用いたシステムが導入されている。VARによる判定は人間では見落としてしまうような些細な差も明確にしてくれるという素晴らしい利点がある反面、その判定が下されるまでに少し時間を要するという難点もある。これによって試合の雰囲気や選手の集中力が損なわれるという批判も少なからず聞かれるのだが、個人的にはこのそわそわした時間が意外と好きだ。この試合の場合、試合終了間際の逆転がかかった場面であるため、殺気すら感じるほどの緊迫感があった。

そんな張り詰めた時間を要した判定の結果、副審の判定が取り消され、見事に逆転ゴールが認められた。スタジアムは先ほどの同点ゴールの興奮も冷めやらぬまま、逆転というさらなる興奮の大波の中へ引き摺り込まれていく。見渡す限りの歓喜、歓喜、歓喜。1階席で見守っていたサポーターたちの一部が我先にとピッチに傾れ込んでいくのが見えた。ある者は友人と抱き合って喜び、ある者はこれでもかというほどタオルを振り回し叫び踊っていた。歓喜の表し方は十人十色だったが、彼らに喜びをもたらしたのはただ一つ、自らの愛するチームが宿敵に対して収めた劇的な逆転勝利だった。

試合終了直後の一枚、動画でお見せできないのが何とも残念…

大興奮の試合を終えて

試合が終わってスタジアムの外に出ても、赤いユニフォームを身に纏った人々が歌いながら勝利を喜んでいる様子がそこかしこで見られた。”Glorioso SLB”(SLB=SLベンフィカに栄光あれ), “Eu amo o Benfica”(私はベンフィカを愛している), 彼らが歌っていたのは自分の拙いポルトガル語力でも覚えられるそんな簡単なチャントだったが、そこには単純ではない深い愛が込められているような気がした。

生で最初に観た試合がそんな興奮に満ちた熱い試合であったために、ベンフィカのファンにならない選択肢はなかった。今では出来る限りその試合を見守ろうとするほどだ。ブラックフライデーのセールでは節約生活中にも関わらず、当然のようにグッズを買い込んでしまった。そのグッズを身に付けて、またスタジアムへ観戦に行きたいと思っている。次回はどんな試合を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。



後半途中で負傷交代した守田選手、幸い大事には至らなかったようだ

ついでのようになってしまって本当に申し訳ない限りなのだが、この試合にはスポルティング・リスボン所属で日本代表の守田英正選手もスターティングメンバーで出場されていた。ポルトガルの名門クラブで主力として活躍する日本人選手がいるというのは何とも誇らしいのだが、今の自分からすると応援しているチームのライバルの選手。日本代表戦以外は100%の気持ちで応援できないのが残念なところだ。


試合の雰囲気やゴールシーンが少しでも気になった方向けに、ハイライト動画のURLを置いておきます。
URL: https://www.youtube.com/watch?v=P5aVJEm9Yr0


参考
SLベンフィカ公式サイト(https://www.slbenfica.pt/)
スポルティング・リスボン公式サイト(https://www.sporting.pt)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?