見出し画像

窓際のおっさん66 素人判断の横行 生兵法は大怪我の基(3/3)

 前回は、素人判断は、勉強不足なのにプライドは高いというチグハグな人物ばかりが決定権者に成ってしまっている点に問題があり、そこがなかなかクローズアップされない現状に問題があるのではと述べた。

 今回は、どうでもいい所ばかりできる人ほど立派になる仕組みに問題があるであろうことを、再びおっさんの経験談を述べつつ締めくくりたい。

<どうでもいい所にばかり手間をかける人ほど上のポジションになりやすい>


 本来すべきこととは別のところにばかりリソースを割いて、結果素人判断してしまう人物もいる。
 
 再びおっさんの経験を話す。とある清掃工場で働いていた時のこと。やはり役所だが、主任技術者として選任を受けていた上司がいた。
 彼は書類へのこだわりがとにかく細かかった。理にかなっているなら細かくてもおっさんも従うが、隣の係ともやり方の統一が成されておらず、日付や言い回しなど、なんどもやり直させられたものである。

 検査でもミスゼロを目指して書類をトコトン詰めるタイプで、その甲斐もあって検査員や上役の聞こえは良かったようだが、一方で、現場指示の方はというと、無茶なものが多かった。

 例えばおっさんは、現場作業員を指揮しつつ、突如焼却炉の清掃作業をするように命じられたことがあった。

 清掃は普段、きちんと道具と体制を整えた専門業者に依頼していたものである。危険有害作業であり、作業に際しては十分なトレーニングは当然として、数々の技能講習、特別教育、法的にも成すべき安全対策や計画・組織体制の構築が必要なものであり、それらを満たした職員や体制が整っていないことも、外注に頼らざるを得ない理由の一つだった。

にもかかわらず

「ノウハウの蓄積のためだから」
と、準備なしで強行しようとした

ため、指揮に当たったおっさんは現場から猛反発を受けてしまった。

 普段書類に煩い人間であれば、できない数々の事情を分かっていても良いものだが、彼は10年以上清掃工場にいる割には全くの勉強不足であり、普段から指摘するのは日付や言い回しといった、どうととでもなるところばかりであった。

 一方で、完璧な書類と同時に、一風変わったことをやって手柄を誇ろうとするところもあり、今回のこの姿はそれが悪く作用した、正に素人判断の典型であったと言える。

 この時、更に上の上司は、畑違いの1年目の素人だったので理解が追い付かず、係長に強く言われた後、おっさんに頭を下げに来たため、1回は無理に承知せざるを得なかったが、流石にもう1回は、おっさんが良く説明したため承知しなかった。 

 たまたま無事故で済んだとはいえ、本当は法的にももっと体制をしっかりしないといけない事である。


 素直にお金をやりくりして追加清掃をお願いすればよいだけだが、彼は本庁との、そうした根気のいる説得は行わず、自身の描いた清掃計画の不備の指摘を恐れ、あまつさえおっさんを盾に現場に言う事を聞かせるという楽な道を選んだ。

トコトン素人仕事・素人判断である。


 結局のところ、難しい詰めや、勇気のいる決断を経ない割に、出世欲や保身欲が強く、事務作業ばかり優秀な人が上に行くシステムになっているように思う。
 おっさんの事務処理の下手くそさも大概ではあるが、かといってこのような

 欲深なド素人を、書類だけ見て優秀と判断するのもまた、組織、いや、評価者である旧世代の素人判断が影響しているように思う。

<大怪我とは個人の事故の話だけでなく、会社組織の損害も大怪我と言える>


 仕事で、特に命がけの現場仕事などは、当然エンターテイメントとしての観劇ではないのだから、素人に判断させないで欲しいものである。 

 ところが近年は第1幕目にはまず素人が登場して、事故やトラブル、人物同士の衝突を起こすシナリオになっている。


 第2幕目になってようやく、後片付けでプロが仕事することが多いのだが、正直そんな展開は悲劇でしかない。

 事故を起こさない。安全で確実な仕事をする。これが勉強してきた人、研鑽を重ねてきた人の期待する仕事像であるはずだ。にもかかわらず、書類という感情労働や、権威を笠に着た、実質、我儘という感情論にばかり左右されて、ようやく本業がやれると思ったら、失態の跡片付け、書類上のつじつま合わせばかり。

 こうした現状では、ちゃんとした人程、組織を離れてしまう。ぽっかりとあいたその席は、会社組織にとってみれば大怪我ではなかろうか、

 かくも、実力ではどうにもならない不当な現実、目を覆いたくなるような理不尽な結末が素人判断によって発生している。

 今の決定権者の多くは、圧倒的に勉強不足(生兵法)の人間ばかりである。 

 下っ端にできることは、毅然とした態度と拒絶であるが、果たしてそれができる人が現状どれほどいるか。本投稿を見た人を通じて、少しでも世の中から大怪我が減ってくれれば幸いである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?