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読了のおっさん23 あかね噺(原作:末永裕樹、作画:馬上鷹将/週刊少年ジャンプ)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

あかね噺(原作:末永裕樹、作画:馬上鷹将/週刊少年ジャンプ)
2022年~ 既刊10巻(2024年3月現在)

① タイプやテーマなど
 落語、少年漫画、気遣い、師弟関係、文化芸能、友情、修練、敵討ち、家族、女流落語家、玄人

② 簡単な内容
 二つ目の落語家を父親にもつ主人公「桜咲 朱音」は、父親が真打昇段試験で不合格かつ破門となったことを切欠に、父親の無念を晴らすべく、本気で噺家を志すようになる。高校を卒業し、阿良川一門に入門後、落語家「阿良川あかね」となり、兄弟子からの課題の攻略や、師匠達との稽古、同期入門者のライバル達との切磋琢磨を繰り返しながら、落語会を駆け上がっていく。

③ 読みどころ
 落語そのものについて、主要なくだりがほぼ全文含めて出てくる。会場の雰囲気を含めたキャラクターの演じる姿、噺の世界に埋没することで浮かぶ情景などがしっかりと漫画で描かれていて、惹きつけられるものがある。
 日常のシーン、アルバイトのシーン、あかねが自身や父親の過去を振り返るシーンなども全て、後の芸の肥やしになっているため、ピンポイントで読みどころが存在すると言うよりも、全編に渡って目が離せない展開が続く。
 落語界の様相について、一般的に視聴者側としては窺い知ることは難しいのだが、本作ではそうした業界探訪的な部分も少々入っていて、ストーリーや落語を楽しむ上でのエッセンスにもなっている。

④ 雑多な感想
 主人公のあかねもそうだが、女流落語家が何人も出てくる。昭和の時代までは、落語は男の世界であったとされ、本作以前の物語作品でも、女流落語家の描写は結構少なかったように思う。
 喜ばしいことなのか、良し悪しについては、素人なのでなんとも言えないところではあるが、時代に即した内容である点や、少なくとも本作における女流落語家は読んでいてい面白いと感じた。
 内容の濃さも含めて、新しい時代の新しい漫画の一つとして、今後も残っていく作品のように思う。

 ジャンプコミックスとしての「友情・勝利・努力」を踏襲している点も清々しい。とかくバトルやスポーツものに偏りがちな概念ではあるものの、若い人が工夫や研鑽を重ねたり、先達の指導を受けて成長していく姿は、やはり読者の心を捉えるものがあると思う。情操教育にも良いだろう。

 キャラクターの多彩さもまた好ましい。ある意味正統派の落語家だけでなく、サラリーマン上がり、役者上がり、学者タイプ、天才タイプ、奇才タイプなど(おっさんが適当に分けたが)、それぞれの「仁」を活かした落語の技術や展開が見れて面白い。
 また、そうした落語家達を多方面で審査する描写もあった。客ウケがとびきり良い、通好み、技量が凄まじい、個性を完全に活かせている、華がある。どれも芸人にはとても重要であると思うが、完全な丸には中々ならないのが人間でもあり、対比や勝負展開を楽しめる。
 登場キャラクター達は、そうした個性を時には活かし、時には顧みて修練し、個性と個性がぶつかり合って、毎度ストーリーが盛り上がる。
 大会や審査会だけでなく、3人会、4人会など、複数人の落語家が関わり、代わる代わる演目を行う場がある。本作でもそうした多人数のキャラクターが動く場面で、「順番」「ネタ被り防止」「出番がなくても裏方として何が必要か」といった細部が毎度語られ、展開の多用さや、読者が先を予想する楽しみがある。

⑤ その他
 主人公あかねの父親が、重要な位置付けにある。父親越えと言えば息子の定番だが、娘がそれをするのが本作か? かくも親を越えると言うのは、少年誌としては熱く、見守りたくなる展開である。
 今のところ、アニメ化の話は聞かないのだが、概ね声で聞く芸能(こう言うこと言うと怒られるかな)を、漫画で表現するだけでも凄いと思う。まだまだ10巻で連載中だが、テンポ良く読めるので、今後が楽しみである。

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