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読了のおっさん22 もやしもん(石川雅之/イブニング→月刊モーニングtwo)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

もやしもん
(石川雅之/イブニング→月刊モーニングtwo)
2004年~2014年 全13巻

① タイプやテーマなど
 菌、ウンチク系、農大、学園もの、研究、酒造、発酵、世界めぐり、友情、ちょっと恋愛、ギャグ

② 簡単な内容
 肉眼で菌を見ることができる特殊能力を持った「沢木宗右衛門町直保」は、祖父のツテで農業大学への入学が決まる。受け入れ先研究室の「樹(いつき)教授」や、同時に入学した幼馴染の「結城」、その他同研究室の先輩たちと、菌に纏わる様々な物語が展開する。
 大概は1年上の金にがめつい先輩2名のせいでトラブルに巻き込まれる展開か、研究室の活動として発酵食品の製造などを真剣に取り組むといったもの。また、
それに伴う遠征(地方や海外)のパートもある。


③ 読みどころ
 全編に渡ってギャグテイストであり、笑いながら読める。一方でおっさんの友人が「これはウンチク系の元祖かもね」とも言っていたのだが、確かに結構深い知識や教養が身に着く内容でもあり、誤った情報や思い込みに流されやすい世情に対してのアンチテーゼをふんだんに織り込むなど、知的な漫画でもある。
 有機野菜、農薬、添加物、サプリメントなど、巷にあふれる食に纏わる事象について、どれが正解かを読者自身が考える内容になっている。
 また、経済、倫理、伝統の継承、働き方など、現代社会の持つ様々な問題に対しても大小触れられており、主人公らの世界旅行などを一緒に体験することで、
やはり読者自身が内容を噛みしめて考察できる内容
になっている。

 以上のような真面目な要素も多いのだが、同時にエンタメとしても良い。

 学園ものというくくりはやはり話の広がりが大きく、内容もソフトで、活気ある若者の姿が描かれるため、幅広い読者に好感が得られる舞台であると思う。
 主人公の周りが美女揃い、地方や海外に行く先々で、結局研究室のメンバーと合流、そっくりさんが何人もいる。。。といった、ご都合展開も多いのだが、そこはギャグであることの前提で、むしろお約束感というか、面白さや安心感となっていい塩梅である。

 舞台となる農大が架空とは言え非常に濃い学校で、密造酒、広くて古い学生寮、警察の介入すら許さない催し、闇のオークション、第二次大戦期の地下施設、果ては半世紀前の学生運動に酷似した装いの団体の存在など、キャラクターやギミックが登場するたびに大笑いして見てしまう。

 また、色恋沙汰も描かれており、中々発展しない関係や、明らかに好意を寄せているが誤魔化すといったシーンにもニヤニヤが止まらない。


④ 雑多な感想
 本作は15年ぐらい前、2000年代後半に一つのブームになっていたように思う。当時おっさんは自分の人生で手一杯だったため、あまり印象が無いのだが、アニメ化に続いて、ドラマ化、絵本や関連グッズなどが大量に出回っていたようだ。
 子供向けのスピンオフや、ラジオ、携帯ゲーム機にも登場し、当時正面から出会っていればと悔やむところではある(結局最近になって読めたから良いが)。

 見えないものが見える能力を持ったキャラクターは、色々な物語で登場し、大概はその能力によって苦しんだり、酷なトラブルに巻き込まれる展開だが、本作はそうしたモヤモヤした展開は概ね無いように思う。むしろ能力が大きく関係する展開は少なく、どちらかというと能力を通じて、読者が菌に親しみを持てるような配慮であるかのように感じられる。

 実際のところ、主人公が見えているとされる「菌をデフォルメ化したキャラクター」が、様々なグッズやスピンオフへと発展している。結果として本作は、日本人が菌について親しみを持って知る機会を生んだのではないだろうか。

 菌について真面目な話、最近は行き過ぎた衛生観念による生きづらさや、かえって不健康になる事例がだんだんと周知されているようにも思う。
 とても良いことだとおっさんは思うが、近年のこの流れは、本作による認識が出発点となった人も、案外多いのではないだろうか。

 また、未だに無くなることはないのだが、本作はエセ科学の化けの皮剥がしにも役立っただろう。そして、消費者が自分自身で考え、受け身ではなく自身で選択し、例えばまともな生産者に対しては敬意を払うべきであるといったことを、意識するきっかけにもなったように思う。

 作中の「樹教授」の話は、漫画とは思えない程ものすご~く長い(逆にそれをギャグとしても描いている)のだが、その長い台詞は全くでたらめではなく、実はきちんとした知識や見解に基づいている。

 単にギャグパートと思って流し読みするのではなく、そこもしっかり読み込むことをお勧めしたい。

 普段漫画はレンタルか漫画喫茶で楽しむおっさんも、1巻読んだ後、珍しく自分で買ってしまったシリーズでもある。それぐらい内容は濃く、15年経った今でも、手元に置いて時々調べたり、誰かに勧めたいと思った漫画でもある。

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