窓際のおっさん15 公務員志望者減_技官は定員割れ続出 (3/4)専門性の価値を理解しない組織と悲劇

 前回は、クレーマーや内部のハラスメントなど、対人における問題点を指摘してきた。今回はその続きと、専門職が冷遇される、またはうまく活用されない現実があることを、おっさんの経験を交えながら紹介していきたい。

<前回の続き、クレーマーやパワハラの加害者を擁護しがちな同僚の言葉>

「コンゾーくんさぁ、もっとしっかり忙しいのアピールしなよ。」
「昔はあんな人じゃなかったんだけどねえ。。。課長の苦労も分かってあげて。」
「主査は来年係長になる可能性の立場だから厳しくしているんだ。」
「何年も前かもしれないけど研修があったでしょ? 一回一回大事に学習してくれないとね。」
「本当に必要なら怒られても何度も何度も、根気強く残業申請するしかないよ。」
「クレーマーが不当開示請求をしていると認められるかどうかは、あくまで上が判断することだから。」
「市民に開示請求理由を聞くこと自体、コンプライアンス違反になるから止めた方がいいよ。」

 などなど。。。おっさんもやっつけられた後、こういう言葉をしばしばかけられるのだから、結構この仕事きついなと思うものである。
 かくも、パワハラ上司やクレーマーを立てる発言はしようと思えばできてしまう。役所にいるとこうした取り繕いや言い訳ばかりうまくなっていけない。

また、言い訳の他にも

 ① 突き放して無関係を装う
 ② 遠くでクレーマーやパワハラ上司とのやりとりに聴き耳だけ立てておいて、彼らが帰ったとたんに、被害者の粗を指摘したり要求を述べる。

 という態度もよく見られる。やられた方からすれば「裏切られた、見捨てられた、全部押し付けられた」という印象を受けるだろう。実際これらの積み重ねの果てに、全国の多くの市役所職員が休職に追い込まれ、時には自殺までしている。同様の事例がニュースになった事も何度かあるだろう。

 自分には対処できない、責任者に何とかして欲しいという気持ちは分からなくもないが、かといって自己保身からつい出る一言や態度を、もっと自制して踏みとどまって欲しいと思う。
 もし表に立ちたくないならば、裏でこっそり話の通じる人や人事課に、事態が好転するように一言入れておいてくれるだけだってよいのだ。

 仲間が梯子を外してくる行為は、案外クレーマーの怒号以上に当事者の心をえぐるものである。大変な仕事ではあるが、対応してくれた仲間、いじめられている仲間はしっかりケアし、問題は皆で一緒に背負って解決に向かって欲しいと願うものである。

<専門性が評価されない役所>


 役所では基本、専門職も事務員も給与水準は全く一緒のところが多い。民間は業務自体はそれなりに忙しくとも、公務員の1.2倍~1.5倍の給料をもらえる場所もある。それに無資格で判断力のない人の意見が、職位が上だから、長くやっているからという理由ばかりで通っては、何のために専門性を磨き、継続的に研鑽をしてきたのか、技術系職員は疑問を感じないわけにはいかないだろう。

 資格手当や専門職手当などもない自治体が多い。法定必置の主任技術者という立場にあれば、責任も伴うのでお手当は欲しい所であるが、職位にも査定されることは現在では稀と言って良い。
 だが電気主任技術者などはかなりの難関資格である。その所持者をタダで使っておいて、なにも報いないのは如何なものかと思う。それどころか、無資格の上役の言葉に対抗できずに無駄なリスクを取らされたり、反抗すると飛ばされてキャリアをぶつ切りにされてしまうような事態も珍しくない(おっさんもやられた)。

 ここまでくると専門職であることがむしろ不利なぐらいである。技術系の出身者ほど、役所を嫌って民間に行くのも無理はないだろう。

<専門性を発揮できる場所はそれなりにあるのに、技術系を活用しない(単に足りていない可能性もあるが)>


 そもそも役所の多くの職員は、専門職の専門能力をきちんと理解し、評価できていないのかもしれない。故に有効に活用もできていない。結果人が離れて数も少なくなっているように思う。
 
 
例えば、技術系に相談したら良い場仕事でも、事務屋だけでイメージで仕事をし、結果、建築や消防に関わる法律や技術水準を無視した、お粗末な設計で発注をしてしまったなどという部署もある。
 あまり名指しは良くないかもしれないが、水道、学校、区役所などの出先でよくそれが見られる、彼らが発注した小規模な改修箇所は、その後、設備課などの技術系専門部署で中規模以上の改修を請け負ってみると、これは酷い、無理やりだなと思うような箇所が見受けられる。おっさんの見た実例を挙げると。。。

① 自火報を設置すべきところに設置がされていない。
② 大型のコンピュータサーバの冷却が必要なのに、専用の冷房設備が入っていない。
③ 信号線と電源線が一緒になっており、それら何十本という線が狭いスリーブにパンパンに詰まっている。
④ データベースシステムに余分な機能を追加して容量を圧迫している上に、データの移送ルートを複雑にして、負荷が上がり、拡張性が下がってしまっている

 素人でもちょっと考えれば分かるような事もあるが、小規模でも技術系職員をきちんと配置して、判断力を発揮させていれば多くの失敗は事前に防げるはずだ。

 また、何処かの小学校でブロック塀を増設したが、鉄筋スカスカで、地震が起こった時に崩壊して、児童がその下敷きになったという痛ましい事件があったと思う。こうした例でも、技術系を大事にして一言相談を仰いでいれば、人の命を救う事だってできるのである。

次回に続く


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