窓際のおっさん71 回りだしたインボイス制度への考察(自論)(前編) 事務処理増大の裏で起こっていること
中途半端な時期だが、インボイス制度が適用されて9カ月が経った(執筆時7月頭現在)。当初から低所得者いじめだとか、事務処理負担の増大がどうとかで議論百出だった。終いにはそもそも実質的な増税であり、増税によって経済が回っていない。事務処理が増えて業務が非効率化し、やはり経済が回っていない。といった議論も挙がり、結局のところ増税による増収と、経済停滞による減収とが相殺されて(むしろ減収の方が大きんじゃないかという声もある)、無意味な政策だったよねと、自論を述べる識者も現れた。
おっさんも去年の10月から、なにやら事務処理が増えてグダグダしてきたなと
ストレスを感じるようになったり、伝票や請求書を持ってくる人にもやり直しをお願いする機会も増えた。
個人事業主や中小の経営者の知人から話を聞くと、個人事業主としては、仕事はなんとか同じ依頼を請け続けてはいる(インボイス対応しないことで契約を拒否されるという懸念はあまりなかった)が、手取り自体がなんとなく減ったという声は聞く。あるいは取引先に事務処理上色々と要求されたり、やり直しをさせられる機会が増えたという声が多いように思う。
まだスタートしたばかりなので、きちんと調査して統計・分析する必要があると思う。また、暮らし向きも含めて貧しくなったかどうかは、インボイス制度以外の影響も考慮に入れなければいけないと思うが、共通して言えることは「事務処理手間が増えたこと」だと思う。
今回は、回りだしたインボイス制度への考察(自論)と題して、主に事務処理上の話になると思うが、現状の良し悪しについて、おっさんの自論を述べたいと思う。
※ あくまで素人の意見です
<大企業サラリーマンからフリーランスまで、軒並み増えた作業量>
インボイス制度にかかるガイドラインの一つとして、適格請求書等保存方式の概要というまとめが、国税庁公式で作成されている。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf
これによると、インボイス制度の運用に当たって、事業者登録をすることは基本であるとしても、取引の担保となり得る、請求書等の作成方法について、ある程度のところまでルール化されていることが分かる。
しかし、まだまだ課題が多いように思う。
<取引年月日の解釈で結構もめる>
上記ガイドラインの5ページに、適格請求書の参考例が載っていて、わが社でも殆ど同様のフォームを採用しているのだが、2番目の必須項目として「取引年月日」の記載が求められることが分かっている。
例えば当方が物を販売し、客先の建屋への引渡しまで依頼されたとして、その日付をどうとらえるか、以下のような解釈があると思う。
・現場で実際に引き渡しを終えた日
・引き渡し後に客先が検収を行い、正当と認めたその日付
・客先検収を行った後に、検査結果通知を発行した日付
・当方が上記検査結果通知を受けて目的物引渡書を発行した日付
・物品の授受と検収に係る日付ではなく、そもそも契約を交わした日付
・それも口頭で交わした日付か、契約書を発行して交わした日付か
・メーカーに発注をかけた日付か
。。。これらを見て「そんなルールあんの?」「オイオイその日付はおかしいだろう?」と思う人も居るかもしれないが、案外、会社ごとにルールや習慣があって、会計の締めの規定(月締め、四半期締め、年度締め、随時)とも連動していて、普段の習慣や価値観からハテナ?と思うような日付を取引日として設定しているところもあると思う。
特に検収して引渡書を作成してなどという面倒くさいことを好む、大企業や自治体がからむと、これらの日付設定如何で、事務処理対応が、かなりグダついてくる。
良し悪しの話はともかく、各々の都合と考え方で変わるのだから、ある程度設定の幅があること自体は構わない筈なのだが。
問題は、双方でやり取りをした適格請求書を、より適格請求書らしくするために、無駄に統一感を出そうと張り切ったり、一方で、なるべく双方が納得し、かつ生の日付を入れて管理などをしようとする人が出てくることだ。
例に挙げた取引日の考え方の双方の違いによって、あーでもない、こーでもないと何度もすり合わせたり、修正する手間が出てきてしまうが厄介である。
次回に続く