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窓際のおっさん67 シンプルで分かりやすいは大事だけど(1/4) シンプルに説明できないことの方が大事

 昨今、特にビジネスの場では、シンプルで分かりやすく伝えることを意識徹底させられる傾向がある。無論アカデミック(学校)の場であっても、概ねシンプルで分かりやすくが求められており、所謂「論理的思考能力」などと言った、流行り文句も含ませつつ、グダグダした説明を許さない雰囲気がある。

 この言は概ね正しいとおっさんも思う。想いに任せてグダグダ喋って何を言いたいか分からない。
 言いたいことはどうやらあるようだが、まとまりや順序が好ましくなく今一つ伝わってこない。
 構成は悪くないのだが、単語や図表がクドクドしていて、読み手が余計なエネルギーと時間を要してしまう。
 こう言ったものは明らかに好ましくないだろう。

 しかし昨今は、その流れを悪用し、例えば専門的な話について、自身の理解が追い付かないからと言って「まとめ不足」「伝え方が悪い」「論理的思考が足りない」と一喝し、相手のせいにして以後の対話を拒否してしまうような人が多々見られるようになったと思う。

 加えて殺し文句のように「もっとシンプルで分かりやすくしろ」などと言ったお説教なり苦言を付け加え、相手を下げることによって、自身の勉強不足や能力不足をごまかす、いわば免罪符として、シンプル論が利用されているように思う。

 今回は「シンプルで分かりやすいは大事だけど」と題して、伝える側だけでなく、受け手側の理解力や歩み寄りも大事であることを、おっさんの体験談と共に述べたい。

<単にくどいだけの文章は否定しても良いとは思う>


 いつもグダグダ長文ばっかり描いている奴が何を言うかと言われかねないが、あえておっさんの体験談を語るとする。

 今年は大学を出たばかりの新人が入ってきて指導に当たっているのだが、工事の設計書類のチェックをしている時に、どうにも文章がくどいなと感じている。
 例えば、文書には小見出しを挟むことが多いが。。。

1.へめろぺかぺか装置のぐるぐるまわるるるのる~軸の機能回復修繕について
 へめろぺかぺか装置のぐるぐるまわるるるのる~軸が、現在、ぱっぱらぱーのへっぽこぴー状態であり、めちゃうまうんちゃら駆動時に伴う、ふわっふわのもちもち仕上げに影響が大きいため、速やかな機能回復を要する。。。

 こんな具合に小見出しと同じ長々とした文言を、2度も3度も小節内で繰り返されると、読むのも書くのも大変である。そもそも装置名や軸の詳細仕様が長いので、この辺りも、読み手の事を考えて一工夫が必要(図表にして別添参照など)と思うところだ。

 仕事で誰かにものを伝える際の気遣いや、文章の書き方については、長年染みついた癖がどうしてもあるので、なかなかシンプル手法を一度に分かってもらうのは難しい。だが、ここは根気強く教えなければならないだろうとも思う。

 と、こうしたものであれば「シンプルで分かりやすく」という言葉を使っても構わないだろう。

<とはいえシンプルで分かりやすくできない事象は存在する>


 ところが、へめろぺかぺか装置の機能、ぐるぐるまわるるるのる~軸、ぱっぱらぱーの(以下省略)とはなんなのか、どう動かすのか、何のために必要で、どう製品に作用しているのか、書類はシンプルに書きましょうと新人に指導している傍ら、いざおっさんが教えようとすると、ついつい端折ってしまう自分がいることにも気が付く。

 面倒くさいなどといった好ましくない感情ももちろんあるわけだが、それ以前に「シンプルに分かりやすく伝えなければ」という思考回路がはじき出す、誤った行動パターンが、ほぼ無意識に働いているであろうことにも気が付く。

 まともにグダグダ説明したら伝わらないし拒絶されるのも分かるのだが、だったら時間をかけて何度も教えるしかない。それが王道であると分かっているのだが、どうも「分かりにくいよオッサン!」という拒絶を嫌って「シンプルに分かりやすく」という思想を言い訳に、結果、単に説明が雑になってしまうことが自分でも案外多いように思っている(逆効果なのだが)。

 正直言うと同装置をイチから全部教えようとすると、そのためだけに1日使っても足りない。操作に係る知識だけでも数時間はかかる。
 仕組みを含めたメンテナンスに係る部分では、ざっと説明するだけでもまた数時間を要するだろう。
 加えて、法律で決まっている交換やメンテナンスのタイミング、安全管理、果てはこの工場で、普段だれがどのように使って、どうやって管理されているのかといった部分まで考えると、おっさんが無能であることを差し引いたとしても、まことに時間がかかる。

 本当はそれでも全部教えなければならないのだが、故にその時は一旦「シンプルに分かりやすく」を捨てておかないと、
① 説明が下手だと思われるのが嫌という誤ったプライドにとらわれて誤魔化す
② 無理して短時間に詰め込もうとして、端折りつつ怒涛のように伝える
 こう言った誤りに行きつく可能性が案外高いなと、注意しなければならないだろうと考察した次第である。


次回に続く

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