読了のおっさん34 風の槍(矢野日菜子(作画)NUMBER8(原作)/裏サンデー・月刊Gファンタジー)
今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。
風の槍(矢野日菜子(作画)NUMBER8(原作)/裏サンデー・月刊Gファンタジー)
2022年~ 既刊5巻(2024年6月現在)
① タイプやテーマなど
本多忠勝、戦国時代、歴史もの、徳川家、槍、修行、仲間、武勲、民衆、鍛治、馬、忠義
② 簡単な内容
本多忠勝の物語。三河の国、松平家直参の家臣、本多家に生まれるところから本編が始まる。物心ついた頃に父親は戦死しており、父親の存在に実感が持てない幼年期。それでも母小夜は武士として忠勝を育て、叔父の本多忠真、武芸の師匠である長坂信政らの手助けもあって、本多家当主としての自覚を持ち、幾多の戦場を渡ってゆく。
生涯の主君となる松平元信(後に元康、そして徳川家康)に仕えつつ、鍛えた槍さばきを持って戦場で活躍したり、時に野性的な勘ともいえる危機察知能力の発揮、そして活路を開く知恵と勇気を見せる。稀代の武芸者、そして有能な忠心(或いは家康ら多くの武将たちの良き友)として、の生涯を描いている。
③ 読みどころ
絵がとてもきれいである。キャラクターもそうだが、甲冑や刀剣といった武具装具の描き込み、集落や戦場、天候や時間(昼夜)の様子もすんなりと目に入ってくる、綺麗な絵柄に思う。
ストーリーは今更語るまでもなく戦国武将ものであるが、本作の特徴としては、本多忠勝を主人公とした本格的な漫画作品は、恐らく初ではないかと思う。その一転においても、同武将のファン、もしくは家康陣営を好ましく思う戦国好きには、たまらないテーマであると思う。
時代考証もまた優れていると思われる。例えば、戦の前のゲン担ぎの儀式が、ほぼフルで漫画として描かれており、当時の武士の戦いへの想いが実感を持って伝わって来た(尤も、作品の味として、やや現代寄りの描写もあったのだが)。
また、一向宗の描き方が凄い。やはり乱世にあって、過去の人が宗教によってどのようにある意味支配され、同時に何を思って心の平穏を保っていたか、かなり生々しく伝わってくるシーンもある。今後もそうした、当時の人間そのものを描くであろうシーンが期待でき、個人的には一番の見どころであると考えている。
④ 雑多な感想
まだ5巻までしかないが、ここまで家族や主君との関係性、得意の武器で伝説的な逸話も多い蜻蛉切りの秘話など、ストーリーは十分濃密。最後まで滞りなく連載が続いて欲しいと思う。
学校で習う大きな歴史の流れでは、後に天下を取った武将(信長、秀吉、家康)の動向と、宗教や朝廷側勢力などの動向を習う事が多いため、こうしたそれ以外の一武将にスポットを当てた
物語作品はやはり面白い。他の武将や宗教家などを扱った作品もそうだが、歴史を別の角度から見ることができる。
本多忠勝は、いろいろ言われているが、別作品や歴史を紹介した記事などを見ると、とにかくめっぽう強い武芸者であったという印象が強い。また、忠義に厚く、
女性関係も比較的潔癖であった、家康の第一の家臣らしいというか、非常にまじめな印象もあった。
本作でもその印象を裏切ることなく、まっすぐで気持ちの良い、それでいて心身共に強い少年として描かれていた。武将の性格や容姿は、作家によって捉え方が異なるものだが、本多忠勝に関しては、そう大きな解釈のブレは無さそうである。即ち安心して読めるということである。
⑤ その他
原作のNUMBER8氏は、有名な音楽系漫画「BLUE GIANT」でも原作者だった。あちらはちょっと出来すぎかなという所もあったが、総じて痛快で、漫画というよりもテレビドラマに近い感じがしたのを覚えている。本作もそう考えるとテレビドラマのような印象を受ける。悪いという意味ではなく、大河ドラマのような、王道で安心できる展開、それでいて考証はしっかりしていて人間ドラマに厚いというところだろうか。
NUMBER8氏は本作の他にも、サンデー系の時代劇ものとして「ABURA」を手掛けており、こちらも期待できそうだなというところである。
他のメディアで作られることはあるだろうか? 絵が親しみやすくて良いので、アニメになってくれたらうれしいなと思っている。
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