見出し画像

それでも、やっぱり・・・


大切な人が日々変わりゆく姿を隣でみているのがつらい。

大切な人がこの世からいなくなってしまうこと。
手を伸ばした時に触れることのできない寂しさ。

もう二度とあの笑顔がみられなくなったら?
もうその両手の中に抱きしめてもらうことはできないの?

そんなことを思い描きながら、この世に残されてどうやって生きていったらいいのと、考えずにはいられない。

大切な人と向き合うということがどれほど難しいことか...。

面と向き合う覚悟があるか。
思いを受け止める度量があるか。
その時間はまだ残されているのか。

最期の時をどうありたいか?
大切なことのはずなのに、いざという時まで触れることができずに時は迫ってくる。

そりゃあ、考えておいた方がいい。
それに越したことはないなんてわかっている。

ただ、もしそんな話をしていた時に、「こんなに苦しいなら死んだ方がマシだ...」「もう眠らせてほしい」なんて言葉が飛び出した日にはどう言葉を返したらいいのかわからない。

「そんなことを言わないでよ...」「おいていかないで...」

そうやって、相手の心を無下にしてしまいそうで怖い。
だからそんな話題が出ないように、無意識にみえないように蓋をしてしまう。

そうやって自分の心を守ることは、悪なのでしょうか?
そうでもしないと、崩れてしまいそうになるのはおかしなことでしょうか?

それとも、この闇から救い出される手立てはあるの...?

人は皆、何のために生きているのだろう。何を目的としているのだろうか。
苦しみながら、希望の光が閉ざされた中で命を繋ぐのはどうして?

それでも、やっぱり一分一秒でも長く生きて隣にいてほしい...。


 死に方って大事なんだな、って僕は思うんですよ。それが遺された方々、すごい遠い関係性の方ですら大きな影響を与えてしまう。
 いかに苦しまないで死ぬかってことが、残された人の人生に大きく反映されてしまうので、僕はなるべく楽しんで生きているように見せている。それが自分の遺す家族の生きやすさにつながるから。だから、患者はなるべく苦しまないほうがいいし、医療者や家族は患者が苦しまないような後押しをしたほうがいいと思うのですよね。ほんと、わざわざ患者を苦しめるような構図になっているのが、誰のための医療なんだろう、誰が得をするんだろうと思いますもん…... (p.101)


そんな恐怖に押しつぶされそうになっていた中学3年生の秋。
もうすぐ11年の月日が流れようとしている...。

あの時、お母さんは苦しかったのだろうか、辛かったのだろうか、何を感じていたのだろうかと、どう思いを寄せてもわからない。

どんな状態なのかも説明もされずに、自分が知らない人になってしまうような思いがして、ただただ直視することができなかった。

もっと...もっと...、対話をする時間が必要だった。目を背けずに向き合っていれば...。

本当に目の前からいなくなっちゃうなんて。

これまでにどんなに楽しい思い出があったとしても、最期の時が辛く苦しいものになってしまうと、その後にふと思い出される情景はなんて胸が締め付けられるんだろうか...。


私は今、あの時の最適解を探すために生きている。
答えはまだ見えてこない。だから、歩みを進める。


思春期真っ盛り、根深い闇を笑顔の裏に潜めながら命を繋いだ少女は今、看護師として日々生死に向き合っている。


「もっとできることがあったんじゃないかな、って思っていたのかもしれない」
「今日先生の話を聞けて少しわかったから......。どうして彼が、私の前からいなくならなくちゃいけなかったのか......」 (p.240)


亡くなるきっかけとなってしまったことが、どうしても自分のせいのような気がして悔やんでも悔やみきれずに、生きていていいのか分からなくなる時があった。

でも、看護師としてたくさんの方に関わらせていただく中で、自分の気持ちに折り合いを付けられるようになった。

きっと、きっと母はこの家族に恵まれて幸せだったと感じてくれていたと、そう思いたい。


吉田ユカさんやYくん夫婦にお子さんがいらっしゃったら、安楽死に対する見方は変わっていたのかもしれないし、変わらないかもしれない。

その人、その人の人生によって違うものであり、決して間違えなんてない。
どんな最期の迎え方が正解なんてものは、おそらくない。

模範解答のようなものが用意されていたらどんなに楽なんだろう。

その人、その家族にとっての、最適解に近づけるようなお手伝いができたらいいな。目を瞑った時に優しい笑顔で溢れていることをただ願うばかり。




..............................................................................................................................

どうしてもこの課題はきちんと向き合い切りたいなと思い、読書感想文というよりは思いの吐き出しとなってしまいましたが書き連ねてみました。
#もう眠感想 を通じてたくさんの人の思いに触れることができました。
素敵な企画をありがとうございました。


画像1


#もう眠感想 #だからもう眠らせてほしい #読書感想文





この記事が参加している募集

読書感想文